皆様、こんにちは。税理士の菅原和望です。水先人という職業について調べていると「年収が高い」という情報を目にすることが多いと思います。ただ、水先人は会社員ではなく個人事業主ですので、受け取った金額がそのまま手元に残るわけではありません。今回は、収入から手取りまでの間に何が差し引かれるのかを、税理士の視点で順番に整理します。
水先人の収入は「水先料」であって給与ではない
水先人は水先業務の対価として、代理店等から水先料を受け取ります。これは給与ではなく事業の売上にあたります。したがって、給与所得者のように給与所得控除が使えるわけではなく、代わりに実際にかかった費用を必要経費として差し引く仕組みになります。水先人会に支払う会費や特別会費、水先艇に関する費用、個人事務所の運営費用、損害賠償責任保険料、研修費などが代表的な支出です。
つまり「年収」という言葉が指しているのが、経費を差し引く前の収入なのか、差し引いた後の所得なのかで、意味が大きく変わります。手取りを考えるうえでは、まずこの区別が出発点になります。
所得から差し引かれる5つの負担
1. 所得税
所得税は所得が多いほど税率が上がる超過累進税率で、課税所得が大きい場合は最高45%の税率が適用される部分が生じます。加えて復興特別所得税がかかります。
2. 住民税
住民税は所得に対しておおむね10%の税率で課され、前年の所得を基礎に翌年度に課税されます。所得が伸びた年の翌年に負担が重くなるのは、この仕組みによるものです。
3. 国民健康保険料
個人事業主は国民健康保険に加入します。保険料は前年の所得を基礎に市区町村ごとの算定方法で決まり、年間の上限額が設けられています。所得が高い方の場合、上限に達することも珍しくありません。
4. 国民年金保険料
国民年金は所得にかかわらず定額です。厚生年金と異なり事業主負担がないため、将来受け取れる年金額は会社員時代より少なくなる点に注意が必要です。
5. 個人事業税
事業の種類に応じて都道府県から課される税金です。課税対象となる場合は、都道府県から通知が届き、年2回に分けて納付します。
手取りを増やすために効く3つの打ち手
第一に、必要経費を漏れなく計上することです。業務に関連する支出を正しく把握できていないと、実態より高い所得で税金と保険料が計算されてしまいます。第二に、青色申告の活用です。期限内の電子申告と帳簿保存の要件を満たせば最大65万円の特別控除が受けられます。第三に、所得控除を使った制度の活用です。小規模企業共済やiDeCoは掛金が全額所得控除の対象となり、将来の資金を準備しながら当年の税負担を抑えられます。退職金制度がない働き方だからこそ、この二つは早い段階から検討する価値があります。
翌年の負担まで見据えて資金を残す
住民税、国民健康保険料、予定納税はいずれも前年の所得を基礎に決まります。収入が大きく伸びた翌年は、所得税だけでなくこれらの支出も同時に増えます。手取りを考えるときは、その年の税金だけでなく翌年の負担まで含めて資金を残しておくことが重要です。詳しくは納税資金の管理術と水先人の所得税・住民税はどれくらいをご覧ください。
まとめ
水先人の手取りは、収入の額そのものよりも、経費の把握と控除の使い方、そして翌年の負担を見据えた資金管理で差が出ます。これから水先人を目指す方も、すでに開業されている方も、早い段階で仕組みを理解しておくことが安心につながります。ご相談は東京湾の水先人のための税務顧問・確定申告サポートから承っています。
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