皆様、こんにちは。税理士の菅原和望です。
前回は「事業所得」についてお話ししました。
税理士が解説!「事業所得」~副業収入は事業所得?経費はどこまで認められる?~
税理士の視点から、今回は「大家さん」なら必ず知っておきたい「不動産所得」の基本と、実務上の重要ポイントを詳しくまとめました。
アパート経営や駐車場の貸付けなど、不動産から収入を得ている方は多いですが、実は「所得税法」において不動産所得は非常に細かくルールが定められています。正しい知識を身につけて、賢く経営していきましょう。

1 不動産所得の「範囲」を知っていますか?
所得税法上、不動産所得とは以下のものの「貸付け」による所得を指します。
- 不動産そのもの(土地や建物など)
- 不動産の上に存する権利(借地権や地上権の設定など)
- 船舶や航空機の貸付け
「えっ、船や飛行機も?」と思われるかもしれませんが、これらは税法上、不動産所得の区分に含まれます。
ただし、これらが「事業所得」や「譲渡所得」に該当する場合は除かれます。
2 不動産所得はどう計算する?
計算式は、他の所得と同じく非常にシンプルです。
総収入金額 - 必要経費 = 不動産所得の金額
① 総収入金額とは?
家賃収入だけでなく、以下のようなものも含まれます。
- 家賃、共益費、礼金、更新料:返還不要なものはすべて収入です。
- 経済的利益:例えば、借主が負担すべき修理費を大家さんが負担してもらった場合などの利益も含まれます。
- 保険金など:火災などで家賃が入らなくなった際の補償金も、収入に代わるものとしてカウントされます。
② 必要経費として認められるもの
不動産所得を得るために直接必要だった費用です。
- 固定資産税、都市計画税、登録免許税
- 修繕費、損害保険料(火災保険など)
- 減価償却費:建物の取得費を耐用年数に応じて分割して経費にします。
- 借入金の利子:物件購入のためのローンの利子(元本は経費になりません)。
- 管理費、仲介手数料、広告宣伝費
No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)|国税庁
3 税理士が「青色申告」を推す理由
不動産所得は、その事業規模により取扱いが異なる部分があります。
その事業規模の判定は「5棟10室基準」と呼ばれ、貸し付けている不動産が5棟10室に満たない場合には、不動産所得の計算の一部について制限が生じます。
No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分|国税庁
不動産の貸付けが「事業として行われている場合」と「それ以外の場合」の所得金額の計算上の相違点のうち主なものは次のとおりです。
(1) 賃貸用固定資産の取壊し、除却などの資産損失については、不動産の貸付けが事業として行われている場合は、その全額を必要経費に算入しますが、それ以外の場合は、その年分の資産損失を差し引く前の不動産所得の金額を限度として必要経費に算入されます。
(2) 賃貸料等の回収不能による貸倒損失については、不動産貸付けが事業として行われている場合は、回収不能となった年分の必要経費に算入しますが、それ以外の場合は、収入に計上した年分までさかのぼって、その回収不能に対応する所得がなかったものとして、所得金額の計算をやり直します。
(3) 青色申告の事業専従者給与または白色申告の事業専従者控除については、不動産貸付けが事業として行われている場合は適用がありますが、それ以外の場合には適用がありません。
(4) 青色申告特別控除については、不動産貸付けが事業として行われている場合、正規の簿記の原則による記帳を行うなどの一定の要件を満たすことにより最高55万円の控除を受けることができます。
この55万円の青色申告特別控除を受けることができる人が電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告を行っている場合は、65万円の青色申告特別控除が受けられます。
なお、それ以外の場合の控除額は最高10万円となります。
事業規模による主な違いを図にまとめると次のようになります。
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事業的規模(5棟10室以上など) |
業務的規模(事業的規模未満) |
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青色申告特別控除 |
最大65万円(または55万円) |
最大10万円 |
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青色事業専従者給与 |
全額必要経費に算入可能(事前の届出が必要) |
認められない |
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白色申告の専従者控除 |
適用可能(配偶者86万、親族50万など) |
認められない |
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資産損失(取壊し等) |
全額必要経費になり、赤字分は他の所得と相殺可能 |
その年の所得を限度として経費算入(他の所得と相殺不可) |
|
貸倒引当金 |
計上が認められる |
認められない |
つまり、不動産所得がある方は一定の規模(5棟10室など)があれば小規模の不動産所得者に比べて青色申告の特典がさらに強力になりますので、青色申告をおすすめします。
4 【要注意!】不動産所得特有の「落とし穴」
不動産所得で赤字(損失)が出た場合、他の所得(給与所得など)と合算(損益通算)できますが、「土地の取得に要した負債の利子」については注意が必要です。
「土地の負債利子」の損益通算制限
不動産所得で赤字が出た際、その赤字の中に「土地を取得するためのローンの利子」が含まれている場合、その利子相当分は「なかったもの」とみなされ、他の所得(給与など)から引くことができません。
つまり、建物部分の利子は損益通算できますが、土地部分の利子で出た赤字は、節税には使えないのです。
国外中古建物の損失制限
最近の法改正により、国外にある中古建物の減価償却費によって生じた不動産所得の赤字も、一定の計算により損益通算ができない仕組みになっています。海外不動産投資を検討されている方は、特に注意してください。
まとめ 健全な大家さんライフのために
不動産所得は、一度軌道に乗れば安定した収益源となりますが、「何が経費になり、何が節税の制限を受けるのか」を把握しておくことが、最終的な手残りを増やす鍵となります。特に、ローンの組み方や、建物・土地の按分、あるいは青色申告の承認申請のタイミングなど、専門的な判断が求められる場面が多くあります。
横浜市青葉区・都筑区・緑区の個人事業主の確定申告・顧問契約はぜひ菅原和望税理士事務所へ!
当事務所では、顧問先様の賃貸経営が素晴らしいものになるよう、全力でサポートいたします!
※不動産をはじめとする事業用資産を売却した場合の税務上の取り扱いについては、譲渡所得もあわせてご確認ください。

よくある質問
Q. 不動産所得はどのように計算しますか?
A. 家賃などの総収入金額から、必要経費(減価償却費や管理費、ローン利息など)を差し引いて計算します。
Q. ローンの金利で赤字になった場合の注意点は?
A. 土地取得に係る借入金の利子相当額は、他の所得と損益通算できない場合があるため注意が必要です。
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