皆様、こんにちは。税理士の菅原和望です。
個人事業者である水先人には、一般企業のような退職金制度がありません。今回は、水先人のセカンドライフを見据えた退職金の考え方と老後資金づくりについて解説します。退職金という一括受け取りの仕組みがない分、現役時代からどのように資産を積み立てていくかが、老後の生活の安定に直結します。現役時代のうちにどれだけ準備を進められるかが、将来のゆとりにも大きく影響します。
水先人には一般企業のような退職金制度がない
日本水先人会連合会の案内によると、水先人は個人事業者であるため、水先人を廃業(水先人会を退会)する際に、一般企業のような退職金制度はありません。長年水先業務に従事してきた方であっても、勤続年数に応じた退職金が自動的に支払われるしくみはなく、公的年金と各種の私的年金の活用、そして個人的な資産形成の工夫によって、老後の生活設計を行う必要があります。なお、健康で意欲があれば72才程度まで業務を続けられるとされており、比較的長く働ける点は老後資金準備の面でも有利に働きます。長く現役として働ける一方で、体力面や視力・聴力などの健康状態が業務継続の前提となるため(水先人は定期的な身体検査により適性が確認されます)、健康管理そのものが実質的な老後資金対策の一部ともいえます。無理なく長く働き続けられる体制を整えておくことも、結果的に老後資金の確保につながります。
公的年金は国民年金がベースになる
水先人は個人事業者であるため、公的年金は厚生年金ではなく国民年金(第1号被保険者)に加入することになります。会社員と比べて将来受け取れる年金額が少なくなりやすい点は、老後資金計画を立てるうえで意識しておきたいポイントであり、国民年金基金や付加年金など、公的年金に上乗せできる制度の活用を検討する価値があります。国民年金の満額(年額)はおよそ81万円程度であり、これだけで現役時代と同水準の生活を維持するのは難しいため、上乗せの制度を組み合わせることが現実的な対策となります。国民年金基金は加入後の脱退が原則できない点や、iDeCoは60歳まで原則資金を引き出せない点など、それぞれ制度上の制約もあるため、事前に仕組みを理解しておくことが大切です。制度ごとの特徴を理解したうえで、無理のない範囲で加入を検討することが望まれます。
私的な老後資金づくりの選択肢
- 小規模企業共済(廃業時にまとまった共済金を受け取れ、掛金は全額所得控除)
- iDeCo(個人型確定拠出年金、運用益が非課税で掛金も所得控除)
- 民間の生命保険・個人年金保険。保険料の一部が生命保険料控除の対象となる場合があります。
- NISA等を活用した資産運用(2024年からの新NISAでは、年間投資枠や非課税保有期間が拡充されています)
これらの制度は掛金や保険料の一部・全部が所得控除の対象となるものも多く、現役時代の節税と老後資金準備を同時に進められる点がメリットです。それぞれ受け取り方や税金の扱いが異なるため、ご自身の収入やリタイア時期に合わせて組み合わせを検討するとよいでしょう。例えば、小規模企業共済は廃業時に受け取る共済金の性質が強く、iDeCoは60歳以降に受け取る年金・一時金としての性質が強いため、受け取りたい時期や目的に応じて使い分けるとよいでしょう。複数の制度を併用する場合は、それぞれの上限額や税制上の扱いを踏まえて計画することが大切です。
廃業時に必要な税務手続き
水先人会を退会し水先業務から引退する際には、税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を廃業の事実があった日から1か月以内に提出する必要があります。あわせて、それまで使用していた事業用資産の処分方法や、最終年分の確定申告の内容についても確認しておくと安心です。廃業年は所得が例年と異なるケースも多いため、廃業前年までの所得水準や必要経費の見込みを踏まえて、早めに税理士へ相談しておくと、最終年分の確定申告もスムーズに進められます。廃業を検討し始めた段階で早めに相談することで、資産の整理や税務上の対応についても余裕を持って準備できます。
よくあるご質問
Q. 水先人には退職金がありませんが、老後資金はどう準備すればよいですか?
A. 国民年金基金や小規模企業共済、iDeCoなど、個人事業者向けの制度を活用して計画的に老後資金を積み立てることが大切です。早い時期から複数の制度を組み合わせておくことで、無理のない範囲で老後資金を積み立てていくことができます。収入に応じて掛金額を調整できる制度も多いため、無理のない範囲で継続することが長続きのポイントです。
Q. 国民年金だけで老後の生活は足りますか?
A. 国民年金のみでは十分でない場合が多く、付加年金や国民年金基金などで上乗せを検討する方が多くいらっしゃいます。特に付加年金は少額の追加負担で年金額を増やせる仕組みのため、加入条件を満たす場合はあわせて検討する価値があります。加入できる制度は現在の働き方や収入状況によって異なるため、一度専門家に確認しておくと安心です。
Q. 小規模企業共済のメリットは何ですか?
A. 掛金の全額が所得控除の対象になるほか、廃業時や退職金代わりの受け取りができる点がメリットです。共済金は退職所得や一時所得として扱われるため、通常の所得より税負担が軽くなる場合が多い点も魅力です。受け取り方法(一括・分割)によって税金の扱いが変わるため、事前にシミュレーションしておくと安心です。
まとめ 顧問税理士からのアドバイス
退職金がないからこそ、公的年金への上乗せや私的な資産形成を、現役時代から計画的に進めておくことが安心につながります。特に廃業のタイミングが近づいてから慌てて準備を始めるのではなく、収入が安定している時期から少しずつ積み立てを進めることをおすすめします。早期に取り組み始めることで、無理のない金額で長期的に積み立てを継続できます。
老後資金づくりのご相談は、現役の早い時期からでも歓迎しております。
老後資金づくりについては、小規模企業共済・iDeCoで節税しながら準備する方法や、水先人の所得税・住民税と節税対策、水先人の相続対策についても解説していますので、あわせてご覧ください。水先人以外の個人事業主の方向けに、退職金代わりとなる制度全般についても解説しておりますので、あわせてご参照ください。ご自身の状況に合った制度の組み合わせについても、個別にご提案させていただきます。
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