皆様、こんにちは。税理士の菅原和望です。
建設業で一人親方として独立すると、初めて自分自身で確定申告を行うことになる方も多いのではないでしょうか。今回は、一人親方の確定申告における白色申告と青色申告の違いと、どちらを選ぶべきかについて解説します。特に建設業では、元請けから発行される支払調書と実際の売上金額に食い違いが生じやすく、正しい申告方法を理解しておくことが工事案件ごとの資金管理にも直結します。また、確定申告の内容は金融機関からの融資審査や社会的信用にも影響するため、早い段階で自分に合った申告方法を選んでおくことが将来の事業拡大にもつながります。
建設業・一人親方の税務を全体から確認したい方へ
開業手続き・確定申告・経費・消費税(インボイス)・外注費と給与の判定・社会保険・建設業許可と法人化までを1ページにまとめた建設業・一人親方の税務 完全ガイドも公開しています。この記事はそのうちの1テーマを詳しく解説したものです。
白色申告と青色申告の基本的な違い
白色申告は事前の届出が不要で、比較的簡易な帳簿(単式簿記)で申告できる方法です。簿記の知識があまりない方でも取り組みやすい一方、税務上の優遇はほとんどありません。一方、青色申告は事前に「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要がありますが、複式簿記による記帳と期限内のe-Taxによる申告などを行うことで、最大65万円(令和9年分からは最大75万円)の青色申告特別控除をはじめとした税制上の優遇を受けられます。なお、白色申告は記帳の負担が軽い分控除額が小さく、年間の所得が増えるほど青色申告との税負担の差が大きくなる傾向があります。一人親方は元請けからの支払いが工事の完成・検収時期にまとまって発生することが多く、所得水準が年によって変動しやすいため、控除額の違いが手取り収入に与える影響も年ごとに変わってくる点に留意しておくとよいでしょう。なお、白色申告から青色申告への切り替えはいつでも可能ですが、青色申告を始めたい年の3月15日までに承認申請書を提出しなければその年からの適用は受けられないため、余裕を持ったスケジュールで準備することをおすすめします。
一人親方に青色申告がおすすめな理由
- 最大65万円(令和9年分からは最大75万円)の青色申告特別控除により所得税・住民税・国民健康保険料の負担が軽減できる(複式簿記で記帳していても、e-Taxで申告しない場合の控除額は、令和8年分までは原則として55万円、令和9年分からは10万円になる点にも注意が必要です)。所得税は所得金額に応じて税率が段階的に上がる仕組みのため、所得水準が高い一人親方ほど65万円控除による節税効果は大きくなります
- 赤字が出た場合、翌年以降3年間にわたって赤字を繰り越せる(純損失の繰越控除)。工事の閑散期や大型案件の失注が続いた年でも、翌年以降の所得と相殺して税負担を平準化できます
- 家族に支払う給与を青色事業専従者給与として必要経費にできる(期限までに届出書を提出し、労働の実態に見合った金額を支払うことが条件です)。配偶者に経理事務や現場のサポート業務を担ってもらっている場合、この制度を活用することで世帯全体の税負担を軽減できるケースがあります
- 40万円未満の減価償却資産を一括で経費にできる(少額減価償却資産の特例)。電動工具や小型の建設機械を購入した年に全額を経費計上できるため、資金繰りと税負担の両面でメリットがあります(ただし年間合計300万円までが上限です)
建設業の一人親方は、年によって工事の受注状況にばらつきが出やすく、赤字の繰越ができる点は資金繰りの面でも大きなメリットになります。元請けからの受注が特定の時期に集中しやすい業種特性を踏まえると、複数年にわたる所得の平準化効果は無視できません。また、特定の元請けに売上が偏っていると、その元請けの受注状況の影響を直接受けやすくなるため、複数の元請けや取引先と関係を築いておくことも収入の安定化につながります。特に独立初年度は工具・車両・作業用機材などの初期投資がかさみやすく、赤字になるケースも珍しくないため、繰越控除の有無が数年単位での税負担に大きく影響します。
青色申告に必要な準備と実務上のポイント
青色申告の65万円控除を受けるには、複式簿記による記帳と、貸借対照表・損益計算書の添付、期限内のe-Taxによる申告(令和8年分までは、e-Taxに代えて、優良な電子帳簿の保存でも可)が必要です。クラウド会計ソフトを使えば、銀行口座やクレジットカードの取引を自動で取り込み、日々の入出金を記録するだけで複式簿記の帳簿を作成できるため、経理の負担を抑えながら青色申告のメリットを受けることができます。また、令和9年分からは、65万円の控除にe-Taxでの申告が必須になり、優良な電子帳簿の保存などの要件もあわせて満たすと控除額が75万円になる点も押さえておきましょう。工事現場での作業が中心で日中は経理作業の時間を取りにくい一人親方も多いため、スマートフォンで領収書を撮影して記帳できるクラウド会計ソフトを活用すると、隙間時間で無理なく記帳を続けやすくなります。記帳作業に不安がある場合は、開業当初から顧問税理士に記帳代行や会計ソフトの導入支援を依頼し、正しい仕訳のルールを早い段階で身につけておくと、後々の申告作業がスムーズになります。
よくあるご質問
Q. 開業したばかりですが、今年から青色申告はできますか?
A. 青色申告をしようとする年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合は開業日から2か月以内)に「青色申告承認申請書」を提出すれば、その年から青色申告が可能です。提出期限を過ぎてしまった場合は、その年は白色申告となります。翌年分から青色申告に切り替えるには、翌年の3月15日までに申請書を提出する必要があります。申請書は税務署の窓口への持参のほか、郵送やe-Taxによる提出も可能ですので、現場作業で忙しい方はe-Taxでの提出を検討するとよいでしょう。
Q. 白色申告でも帳簿は必要ですか?
A. 白色申告であっても、記帳と帳簿書類の保存は法律上義務付けられています。青色申告ほど詳細ではありませんが、収入・経費を記録した帳簿の作成は必須です。記帳を怠ると、税務調査の際に経費を否認されるリスクが高まるため、日々の記録を習慣化することが大切です。また、白色申告の場合も、収入や経費を記載した帳簿は7年間、請求書や領収書などの書類は5年間(消費税の課税事業者が仕入税額控除のために保存する請求書等や、インボイス発行事業者として交付したインボイスの写しは7年間)保存する義務があるため、紙の書類は年ごとにファイリングし、データはクラウド上にバックアップしておくと安心です。
Q. 一人親方でも65万円控除を受けられますか?
A. 事業所得として申告している一人親方であれば、複式簿記による記帳など要件を満たすことで65万円の青色申告特別控除を受けることができます。一方、複式簿記の要件を満たせない場合でも、10万円の青色申告特別控除であれば比較的簡易な帳簿で適用を受けられます(令和9年分からは、前々年の事業の収入が1,000万円を超える方は、簡易な帳簿では原則として控除を受けられなくなります)。どちらの控除を目指すかによって必要な帳簿の精度が変わってくるため、迷った際は顧問税理士に現状の記帳レベルを確認してもらうとよいでしょう。
日々の記帳の実務ポイントについては「一人親方の帳簿の付け方、請求書・領収書管理のコツ」もあわせてご覧ください。
まとめ 税理士からのアドバイス
建設業の一人親方にとって、青色申告への切り替えは節税効果が大きく、早めに取り組む価値があります。特に確定申告の直前になって慌てて帳簿を整理しようとすると、控除の適用漏れや経費の見落としが発生しやすいため、日頃からの記帳習慣が重要です。まずはご自身の記帳状況を確認し、無理のない範囲で複式簿記への移行を検討してみてください。工事案件ごとの入出金が複雑になりやすい一人親方だからこそ、早い段階で記帳体制を整えておくことが、将来の税負担軽減と資金繰りの安定の両方につながります。青色申告への切り替えは一度で終わるものではなく、事業規模の拡大や家族構成の変化に応じて記帳方法や控除の活用方法を見直していくことが、長期的な税負担の軽減につながります。
横浜市青葉区・都筑区・緑区で建設業の一人親方の顧問契約のご相談は、ぜひ菅原和望税理士事務所へご相談ください。初回のご相談では現在の記帳状況や申告方法についてもヒアリングし、最適な進め方をご提案いたします。
また、ご家族に給与を支払っている方は「一人親方が家族に給与を払う場合、専従者控除の活用法」もあわせてご参考にしてください。
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青色申告の手続きや必要書類の詳細については、国税庁の公式サイトでも確認できますので、あわせてご参照ください。申請書の提出先や記載方法に不明点がある場合は、税理士に相談することでスムーズに手続きを進められます。
免責事項
本記事は、掲載時点の法令等に基づく一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する税務上の判断や助言を行うものではありません。制度は改正されることがありますので、実際の手続きの際は最新の情報をご確認ください。記事の内容に関するご質問や、記事の内容についてのスポットでのご相談はお受けしておりません。顧問契約をご検討の方には、初回無料の面談を行っています。本記事の内容を利用したことにより生じた損害について、当事務所は一切の責任を負いません。
