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一人親方の消費税申告、簡易課税と原則課税どちらが得か

皆様、こんにちは。税理士の菅原和望です。

インボイス制度をきっかけに課税事業者となった建設業の一人親方から、「簡易課税と原則課税、どちらを選べばいいのか」というご相談が増えています。今回は、一人親方の消費税申告における課税方式の選び方について解説します。課税方式の選択は一度決めると簡単に変更できないことが多く、事業の状況に合わなくなってから見直そうとしても手続きが間に合わないケースもあるため、早い段階からの検討が大切です。特にインボイス登録をきっかけに初めて消費税申告を行う一人親方にとっては、聞き慣れない専門用語も多く、判断に迷う場面が少なくありません。まずは原則課税と簡易課税それぞれの基本的な仕組みを理解したうえで、自分の事業に当てはめて考えることが判断の第一歩になります。特に開業から日が浅い一人親方ほど、消費税申告そのものに不慣れなことが多いため、基本的な考え方を早めに押さえておくと安心です。

原則課税と簡易課税の違いと基本的な仕組み

原則課税は、実際に受け取った消費税から実際に支払った消費税を差し引いて納税額を計算する方法で、経費に係る消費税を一件ずつ集計する必要があります。一方、簡易課税は、売上に係る消費税額に、事業の種類ごとに定められた「みなし仕入率」を掛けて納税額を計算する、事務負担の軽い方法です。簡易課税を選択できるのは、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者に限られます。原則課税は実際の取引に基づいて計算するため経費が多い年ほど有利になりやすい一方、帳簿の作成や消費税の区分管理に手間がかかる点がデメリットです。特に課税・非課税・不課税といった取引区分を一件ずつ正しく判定する必要があるため、日々の記帳の正確性がそのまま申告の精度に直結します。取引区分の判断に迷った際は、その都度メモを残しておくと、確定申告時にまとめて確認する手間を減らすことができます。

建設業(一人親方)のみなし仕入率と事業区分の考え方

建設業は、原則として簡易課税制度における第三種事業(みなし仕入率70%)に区分されますが、元請けから材料の支給を受けずに、自らの負担で工事を行う場合など、内容によっては区分が異なることもあります。実際の取引実態を踏まえて事業区分を判断する必要があります。たとえば材料をすべて自己負担で調達する工事と、元請けから材料が支給される工事とでは、実質的な利益率が異なるため、みなし仕入率との相性も変わってきます。複数の業務内容を兼業している場合は、それぞれの売上について適切な事業区分を判定し、区分ごとに納税額を計算する必要がある点にも注意が必要です。区分を誤ったまま申告すると、後日の税務調査で追徴課税につながることもあるため、迷った場合は必ず事前に確認することが大切です。特に元請けから材料が支給される工事と自己負担で材料を調達する工事が混在している場合は、工事ごとに区分を記録しておくと後から確認しやすくなります。一人親方の全員が第三種事業というわけではありませんので、必ず事前に税理士へ相談してくださいね。

どちらを選ぶべきかの考え方

  • 実際の経費(外注費・材料費等)が売上の70%より少ない場合は、簡易課税の方が有利になりやすい(経費率が低い工事を多く手がける一人親方ほど、簡易課税による納税額が実際の消費税負担より少なくなる傾向があります。ただし翌年以降に経費率が上がる見込みがある場合は、単年の数字だけで判断しないよう注意が必要です。過去数年分の経費率を振り返り、平均的な水準で判断することでより実態に合った選択がしやすくなります)
  • 大きな設備投資(車両・重機の購入等)を予定している場合は、原則課税の方が還付を受けられる可能性がある(簡易課税では実際に支払った消費税額に関わらずみなし仕入率で計算するため、大きな買い物をした年でも還付は受けられません。数百万円規模の設備投資を予定している年は、原則課税を選んだ場合の還付額を事前に試算しておくと判断しやすくなります)
  • 簡易課税は事務負担が軽く、消費税申告に不慣れな方にも扱いやすい(仕入や経費ごとに消費税を細かく区分する必要がないため、日々の記帳の手間も原則課税に比べて少なくなります)
  • 簡易課税を選択する場合は、事前に「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出が必要(原則として適用を受けたい課税期間の初日の前日までに提出する必要があるため、タイミングを逃さないよう注意が必要です。提出が期限に間に合わないと、翌々課税期間まで適用が持ち越されてしまうこともあるため、早めの準備が肝心です。届出書の提出は税務署の窓口のほか、郵送やe-Taxでも行えるため、現場作業で忙しい方は電子申請の活用も検討するとよいでしょう)

よくあるご質問

Q. 簡易課税を選んだら、ずっとそのままですか?

A. 簡易課税を選択すると、原則として2年間は継続適用が必要です。変更する場合は、事前に届出が必要になります。2年間の継続適用の間に大きな設備投資の予定が入ると、その年は簡易課税のメリットを活かせない可能性があるため、事前に将来の設備投資計画も踏まえたうえで判断しておくことが望ましいです。事前に将来の計画も含めて検討することが望ましいです。届出のタイミングを誤ると翌期からの適用になってしまうこともあるため、余裕を持ったスケジュールで手続きを進めましょう。

Q. インボイス登録した年から簡易課税を選べますか?

A. 一定の要件を満たせば、登録日の属する課税期間から簡易課税を適用できる経過措置が設けられています。詳細は個別の状況によって異なるためご確認ください。この経過措置を利用できるかどうかで初年度の消費税負担が大きく変わることもあるため、インボイス登録の準備と並行して確認しておくとよいでしょう。経過措置の適用を逃すと、初年度から通常の届出スケジュールに従う必要が生じる点にも注意が必要です。インボイス登録と簡易課税の届出を同時に検討することで、初年度から有利な課税方式を選びやすくなります。手続きの期限も通常の届出とは異なる場合があるため、登録申請の段階で税理士に確認しておくと安心です。

Q. 2割特例と簡易課税はどちらがお得ですか?

A. 2割特例は売上に係る消費税の2割を納税額とする制度で、みなし仕入率80%の簡易課税に相当するため、建設業(みなし仕入率70%)より有利になるケースが多いです。ただし適用できる期間に制限があります。2割特例の適用期間が終了した後は、あらためて簡易課税と原則課税のどちらが有利かを見直す必要があるため、早めに次の対応方針を検討しておくことをお勧めします。

まとめ 税理士からのアドバイス

課税方式の選択は、一度届出をすると簡単には変更できないため、事前のシミュレーションが欠かせません。特に売上や経費の変動が大きい一人親方は、数年分の実績をもとにシミュレーションを行い、無理のない課税方式を選ぶことが重要です。判断に迷う場合は、直近の確定申告データをもとに複数のパターンで納税額を試算し、数字で比較したうえで決めることをおすすめします。感覚的な判断に頼らず、実際の数字で比較することが、後悔のない課税方式の選択につながります。一度選択した後も、事業内容や取引先の変化に応じて数年ごとに見直す機会を設けておくと安心です。インボイス制度との関係については「一人親方とインボイス制度、元請けとの取引の注意点」、日頃の帳簿づけを見直したい方は「一人親方の帳簿の付け方、請求書・領収書管理のコツ」もあわせてご覧ください。

また、確定申告全体の流れを確認したい方は「建設業の一人親方の確定申告、白色申告と青色申告どちらが得か?」もあわせてご参考にしてください。

横浜市青葉区・都筑区・緑区で建設業の一人親方の顧問契約のご相談は、ぜひ菅原和望税理士事務所へご相談ください。

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この記事を書いた税理士

税理士 菅原和望

菅原 和望(すがはら かずみ)税理士/菅原和望税理士事務所 代表

  • 東京地方税理士会 緑支部所属/税理士登録番号 第154708号(2024年11月登録)
  • 登録内容は日本税理士会連合会の税理士情報検索サイト(登録番号 154708 で検索)および東京地方税理士会でご確認いただけます。
  • 会計・税務の実務経験9年
  • 株式会社カプロス 代表(2015年12月設立/ダイヤモンドコア工法によるコンクリートの穿孔・切断・解体工事/施工エリア:関東・東北)
  • 不動産賃貸業(賃貸物件の経営)

1993年生まれ。横浜市青葉区市ケ尾の菅原和望税理士事務所代表。自ら建設業の施工会社を経営し、不動産賃貸業も営む事業者としての立場もふまえ、クラウド会計(マネーフォワード クラウド)を活用した記帳・決算・確定申告までを一貫してサポートしています。

簡易課税制度の詳細については、国税庁の公式サイトでも確認できますので、あわせてご参照ください。

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