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美容室・サロンは法人化すべき?個人事業主との違いを税理士が比較

皆様、こんにちは。税理士の菅原和望です。

「サロンの売上が伸びてきたので、法人化を検討している」という方にむけて、今回は、美容室・サロンの法人化について解説します。法人化は税負担だけでなく、社会保険や事務手続きの負担にも影響するため、メリット・デメリットの両面から慎重に検討することが大切です。周りの経営者が法人化したからといって、自店舗にとっても同じタイミングが最適とは限らない点にも注意が必要です。

美容室・サロンの法人化とは

個人事業主と法人の違い

個人事業主のサロンは事業主自身が納税義務者となるのに対し、法人化すると法人という別人格が事業主体となり、税制・社会保険の取扱いが変わります。経営者は法人から役員報酬を受け取る形になり、個人の所得税とは別に法人税の申告も必要になります。役員報酬の金額は原則として事業年度の途中で変更できないため、事前に無理のない金額を設定しておくことが重要です。売上の見込みが不透明な設立初年度は、やや控えめな金額から始めるという考え方もあります。

法人化のタイミングの目安

課税所得が一定水準を超えてくると、所得税より法人税の実効税率の方が有利になりやすく、法人化の目安の一つとされています。一般的には課税所得が概ね800万円前後を継続的に超えてくると節税メリットが出やすいといわれていますが、家族への給与の払い方や社会保険料の負担によっても有利になる水準は変わります。単年度の数値だけで判断せず、複数年分の見込みをもとにシミュレーションすることが望ましいです。一時的に利益が増えた年だけで判断すると、翌年以降の税負担を見誤ることもあるため注意しましょう。数年先までの事業計画を踏まえた中長期的な視点での判断が求められます。

法人化のメリット

税負担を抑えやすい

所得が増えるほど税率が上がる所得税(最高45%の累進課税)に対し、法人税は中小法人であれば概ね15%〜23.2%程度と比較的税率が一定であるため、所得水準によっては法人化により税負担を抑えられます。また、役員報酬を法人の経費にできるうえ、個人側では給与所得控除も適用されます。役員報酬と法人の利益の配分を工夫することで、法人・個人トータルでの税負担を調整できる場合もあります。配分の見直しは毎期行えるため、業績の変化に応じて柔軟に対応することができます。

複数店舗展開がしやすくなる

法人化することで、店舗ごとの損益管理や、将来的な多店舗展開・スタッフの雇用がしやすくなる場合があります。正社員採用を進める際にも、社会保険完備の法人であることが求職者からの印象向上につながることがあります。複数店舗を統括する本部機能を法人として整備することで、経営管理も一元化しやすくなります。将来的な多店舗展開を見据えている場合は、早めに法人としての体制を整えておくと移行がスムーズです。

社会的信用が高まる

取引先の卸業者や金融機関との取引において、法人の方が信用を得やすいケースがあります。新規物件の賃貸借契約や、フランチャイズ加盟を検討する際にも、法人という形態が有利に働くことがあります。金融機関からの融資審査においても、法人としての決算実績があることで信用力が高まりやすい傾向があります。決算を重ねるごとに信用力が積み上がるため、早めの法人化がプラスに働く場合もあります。

法人化のデメリット・注意点

設立・維持コストがかかる

法人設立費用(登記費用など数十万円程度)や、赤字でも毎年発生する法人住民税の均等割(自治体により年7万円程度から)など、個人事業主にはないコストが発生します。会計処理・申告の手続きも複雑になり、税理士への依頼料など外部コストが増えることが多い点も踏まえておく必要があります。法人化後は決算書の作成や税務申告の専門性も高まるため、顧問税理士のサポートを受けながら進めるのが安心です。個人事業時代とは経理の流れも変わるため、法人化前に一度実務の流れを確認しておくと安心です。

社会保険加入が義務になる

法人化すると、代表者を含めて社会保険への加入が原則義務となり、保険料負担が増える場合があります。社会保険料は会社と個人で半分ずつ負担する仕組みのため、従業員が多いサロンほど会社側の負担額も大きくなる点に注意が必要です。社会保険料の増加分も含めた収支シミュレーションを行い、法人化後の資金繰りに無理がないか確認しておきましょう。社会保険料の負担増を見越して、法人化のタイミングを繁忙期後に設定するという考え方もあります。

まとめ

美容室・サロンの法人化は、所得水準や店舗展開の計画、社会保険料の負担増などを踏まえて総合的に判断する必要があります。一度法人化すると個人事業に戻すのは現実的に難しいため、複数年分の事業計画をもとにシミュレーションを行ったうえで検討しましょう。判断に迷う場合は、現状の数値をもとにした具体的な試算を税理士に依頼することをおすすめします。試算結果をもとに、法人化する場合としない場合の両方のシナリオを比較検討するとよいでしょう。

確定申告全体の流れは「美容室・サロンの確定申告ガイド|個人事業主の税務手続きを税理士が解説」、複数店舗展開の資金計画は「美容室・サロンの複数店舗展開、損益管理と資金計画を税理士が解説」もあわせてご覧ください。

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よくある質問

Q. 法人化するとスタッフの雇用はしやすくなりますか?

A. 社会保険完備であることが採用面でプラスに働く場合があります。求人媒体によっては社会保険加入の有無が検索条件になっていることもあり、正社員やブランクのあるスタイリストの応募を集めやすくなる傾向があります。人材確保が課題となっている店舗ほど、法人化による採用面のメリットを実感しやすいといえます。採用力の向上は長期的な人材定着にもつながるため、経営基盤の強化にも役立ちます。

Q. 法人化の際、屋号(サロン名)はそのまま使えますか?

A. 屋号を会社名に含めるなど、多くの場合そのまま使用することができます。ただし、既に同一の商号を使用している会社が近隣にある場合など、登記上の制約を受けることもあるため、事前に確認しておくと安心です。法務局で事前に類似商号の有無を確認しておくと、手続きがスムーズに進みます。長年親しまれてきたサロン名を大切にしたい場合は、早めに商号調査を行っておくと安心です。

Q. 個人事業と法人、どちらで開業すべきか迷っています

A. 開業当初は個人事業主として始め、軌道に乗ってから法人化を検討するケースが多く見られます。開業時から複数店舗展開や大規模な資金調達を予定している場合は、最初から法人として開業する選択肢もあります。開業計画の規模に応じて、どちらの形態が適しているか税理士に相談することをおすすめします。開業資金の調達方法によっても、適した事業形態が変わることがあります。

Q. 法人化のシミュレーションは依頼できますか?

A. 可能です。現状の所得や事業計画をもとに、法人化した場合の税負担や社会保険料の変化等をシミュレーションいたします。複数のパターンを比較しながら、最適なタイミングをご提案いたします。数値をもとにした具体的な資料を用いることで、経営者ご自身にも納得感を持って判断していただけます。判断材料を丁寧に揃えることが、後悔のない意思決定につながります。

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この記事を書いた税理士

税理士 菅原和望

菅原 和望(すがはら かずみ)税理士/菅原和望税理士事務所 代表

  • 東京地方税理士会 緑支部所属/税理士登録番号 第154708号(2024年11月登録)
  • 登録内容は日本税理士会連合会の税理士情報検索サイト(登録番号 154708 で検索)および東京地方税理士会でご確認いただけます。
  • 会計・税務の実務経験9年
  • 株式会社カプロス 代表(2015年12月設立/ダイヤモンドコア工法によるコンクリートの穿孔・切断・解体工事/施工エリア:関東・東北)
  • 不動産賃貸業(賃貸物件の経営)

1993年生まれ。横浜市青葉区市ケ尾の菅原和望税理士事務所代表。自ら建設業の施工会社を経営し、不動産賃貸業も営む事業者としての立場もふまえ、クラウド会計(マネーフォワード クラウド)を活用した記帳・決算・確定申告までを一貫してサポートしています。

法人設立の手続きについては国税庁の情報もご確認ください:国税庁公式サイト

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