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美容室・サロンの消費税申告|簡易課税と原則課税どちらが得かを解説

皆様、こんにちは。税理士の菅原和望です。

「サロンの消費税申告、簡易課税と原則課税のどちらが得か知りたい」という方に向けて、今回は、美容室・サロンの消費税申告について解説します。どちらを選ぶかによって毎年の納税額や事務作業の負担が大きく変わるため、自店舗の売上構成を踏まえて検討することが大切です。開業当初は取引数が少なく判断がしやすいため、開業前の段階から方針を決めておくとよいでしょう。開業後に事業内容が変化した場合は、その都度どちらが有利か見直す姿勢も大切です。

簡易課税と原則課税とは

原則課税の仕組み

原則課税は、売上にかかる消費税額から、実際の仕入・経費にかかる消費税額を差し引いて納税額を計算する方法です。取引ごとにインボイスを保存し、正確に仕入税額を集計する必要があるため、事務負担はやや大きくなります。一方で、実際の仕入・経費の金額をそのまま反映できるため、設備投資や仕入が多い年ほど有利になりやすい方法でもあります。会計ソフトを活用すれば、原則課税に必要な集計作業もある程度自動化できます。インボイスの保存もクラウド上で一元管理できるサービスを選べば、書類の紛失リスクも減らせます。

簡易課税の仕組み

簡易課税は、売上にかかる消費税額に業種ごとのみなし仕入率を掛けて仕入税額控除額を計算する方法で、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が選択できます。美容業は第五種事業(みなし仕入率50%)に区分されるのが一般的です。たとえば年間売上に係る消費税額が150万円の場合、簡易課税では仕入税額を75万円(みなし仕入率50%)とみなして計算するため、納税額は75万円になります。ただし、シャンプーなどの物販売上が多い場合は第二種事業(みなし仕入率80%)に区分されることもあるため、事業内容に応じた区分の確認が必要です。複数の事業区分にまたがる場合は、売上を区分して記帳しておかないと、有利な区分が適用されないことがあるため注意しましょう。区分経理の方法に迷う場合は、早めに税理士へ相談し、記帳ルールを決めておくと安心です。

簡易課税を選ぶメリット

事務負担が少ない

実際の仕入・経費を細かく集計する必要がなく、売上の記録があれば納税額を計算できるため、インボイスの保存や取引先ごとの確認作業を大幅に減らすことができます。経理業務に多くの時間を割けない個人経営のサロンにとっては、事務負担の軽さが大きな魅力になります。スタッフを雇わず一人で運営しているサロンほど、この事務負担の軽減効果を実感しやすい傾向があります。空いた時間を接客や技術向上に充てられる点も、簡易課税を選ぶ隠れたメリットといえます。

材料費の割合が低い場合に有利

美容室は人件費の割合が高く材料費の割合が比較的低いため、簡易課税のみなし仕入率(50%)の方が実際の仕入率より高くなりやすく、結果的に納税額を抑えられるケースがあります。ただし店舗ごとに費用構成は異なるため、実際の仕入率をもとに試算したうえで判断することが望ましいです。過去数年分の決算データがあれば、実際の仕入率を算出して比較することも可能です。決算書が手元にない場合でも、確定申告書の控えから概算で試算することができます。

簡易課税の注意点

2年間は変更できない

簡易課税選択届出書を提出すると、原則として2年間は継続適用され、その間に原則課税へ変更することはできません。その間に大きな設備投資が発生しても、簡易課税から原則課税に変更できない点に注意が必要です。届出のタイミングを誤ると、有利な方法を選べないまま2年間を過ごすことになるため、設備投資の計画がある場合は事前に税理士へ相談しておきましょう。届出の取り下げにも一定の手続きが必要となるため、提出前によく検討することが重要です。迷った際は仮の数値でシミュレーションを行い、複数のシナリオを比較したうえで結論を出すとよいでしょう。

内装工事など高額投資がある年は不利になることも

店舗の改装等で高額な設備投資を行った年は、その分の消費税を控除できる原則課税の方が有利になる場合があるため、投資予定がある年は特に注意が必要です。事前のシミュレーションを行い、翌年以降の計画も踏まえて選択することが重要です。複数年分の売上・経費データをもとに比較することで、単年度だけでなく中長期的な税負担の見通しを立てやすくなります。将来の店舗拡大や大規模改装の予定がある場合は、その時期も加味してシミュレーションしておくと安心です。

まとめ

美容室・サロンの消費税申告は、人件費と材料費の割合、設備投資の予定を踏まえて簡易課税と原則課税を比較検討することが大切です。一度選択すると2年間は変更できないため、翌年以降の事業計画も踏まえて毎年の状況にあわせて見直すことをおすすめします。判断に迷う場合は、数値をもとにした具体的なシミュレーションを税理士に依頼すると安心です。毎年の決算のタイミングであわせて見直しを行う習慣をつけておくと、有利な選択を継続しやすくなります。

インボイス制度への対応は「美容室・サロンとインボイス制度|仕入税額控除と対応のポイントを解説」、内装費用の減価償却は「美容室・サロンの内装・改装費用、減価償却と修繕費の判断を税理士が解説」もあわせてご覧ください。

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よくある質問

Q. 美容業のみなし仕入率はどのくらいですか?

A. 一般的にサービス業として第五種事業(みなし仕入率50%)に区分されますが、物販の割合等により異なる場合があります。物販売上が主に第二種事業(みなし仕入率80%)に該当する場合、施術売上と物販売上を区分して申告する必要があります。区分経理を行っていない場合は、原則としてより低いみなし仕入率が適用されてしまう点にも注意が必要です。物販の比率が今後増える見込みがある場合は、早めに区分経理の体制を整えておくとよいでしょう。

Q. 簡易課税の届出はいつまでに提出すればよいですか?

A. 原則として、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに提出する必要があります。新規開業年など一定の場合は、その課税期間中に提出すれば初年度から適用できる特例もあります。提出期限を過ぎてしまうと翌々課税期間からの適用になることもあるため、開業初年度から検討している場合は特に注意しましょう。開業準備の段階で税理士に相談しておけば、届出のタイミングを逃さずに済みます。

Q. 物販売上が多い場合の扱いはどうなりますか?

A. 施術売上と物販売上で事業区分が異なる場合があるため、売上を区分して記帳することが望まれます。区分していない場合、最も低いみなし仕入率が全体に適用されてしまうことがあるため、レジや会計ソフト上で売上区分を分けておくことが大切です。POSレジの設定段階で商品カテゴリを分けておくと、日々の記帳もスムーズに進められます。導入時に区分方法をレジベンダーへ相談しておくと、後からの設定変更の手間を減らせます。

Q. どちらが得かはどう判断すればよいですか?

A. 過去の売上・仕入データをもとにシミュレーションを行うことをおすすめします。設備投資の予定がある場合はその影響も加味する必要があるため、税理士に相談すると判断がスムーズです。数年分のシミュレーション結果を比較することで、単年度だけでなく中長期的に有利な方法を見極めやすくなります。判断材料が揃っていれば、届出期限に追われることなく落ち着いて検討できます。

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この記事を書いた税理士

税理士 菅原和望

菅原 和望(すがはら かずみ)税理士/菅原和望税理士事務所 代表

  • 東京地方税理士会 緑支部所属/税理士登録番号 第154708号(2024年11月登録)
  • 登録内容は日本税理士会連合会の税理士情報検索サイト(登録番号 154708 で検索)および東京地方税理士会でご確認いただけます。
  • 会計・税務の実務経験9年
  • 株式会社カプロス 代表(2015年12月設立/ダイヤモンドコア工法によるコンクリートの穿孔・切断・解体工事/施工エリア:関東・東北)
  • 不動産賃貸業(賃貸物件の経営)

1993年生まれ。横浜市青葉区市ケ尾の菅原和望税理士事務所代表。自ら建設業の施工会社を経営し、不動産賃貸業も営む事業者としての立場もふまえ、クラウド会計(マネーフォワード クラウド)を活用した記帳・決算・確定申告までを一貫してサポートしています。

消費税の制度詳細は国税庁の情報もご確認ください:国税庁公式サイト

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