topics

トピックス

美容室・サロンの廃業・閉店手続きと廃業後の税金|廃業届・保健所・在庫と設備の処分・確定申告を税理士が解説

皆様、こんにちは。税理士の菅原和望です。

「サロンを閉めることになったが、何を届け出ればよいか」という方に向けて、今回は、美容室・サロンの廃業・閉店の手続きについて解説します。廃業の理由は人それぞれですが、届出漏れがあると翌年以降の税務手続きに影響することもあるため、正しい手順を押さえておくことが大切です。特に一人で経営してきたサロンでは、届出のタイミングを見落としがちなため、チェックリストを作って確認することをおすすめします。税理士に依頼すれば、必要な届出をまとめて洗い出してもらえるため、抜け漏れの心配を減らせます。

この記事の結論(先に3行で)

  1. 届出は税務署(廃業届・青色申告の取りやめ届出書:廃業年分の確定申告期限まで)、保健所(美容所廃止届:速やかに)、消費税の事業廃止届出書、給与支払事務所の廃止届(1か月以内)の4系統。
  2. 廃業した年も確定申告が必要。内装の除却損・原状回復費・在庫の処分・機器の売却損益を入れると赤字になることが多く、給与など他の所得と損益通算できます。
  3. 廃業後は国民健康保険・国民年金の手続き、帳簿の7年保存、小規模企業共済の請求も忘れずに。再就職や面貸しで働く場合の税金も変わります。

美容室・サロンの廃業手続きとは

税務署への廃業届の提出

廃業した年分の確定申告期限(原則として翌年3月15日)までに、個人事業の開業・廃業等届出書を税務署に提出する必要があります。青色申告の承認を受けていた場合は、青色申告の取りやめ届出書も、取りやめようとする年分の確定申告期限(原則として、取りやめる年の翌年3月15日)までに提出します(ほかの事業や不動産の貸付けなどで青色申告を続ける場合を除きます)。事業(不動産の貸付けなどを含みます)をすべてやめると、青色申告の承認はやめた年の翌年分から効力を失いますが、国税庁の案内では廃業時に提出する届出書に挙げられているため、廃業届とあわせて提出しておきましょう。届出書に記入した年分から青色申告ができなくなるため、廃業した年分も青色申告で申告する場合は、取りやめる年分を廃業した年の翌年分とします。廃業後であっても、廃業年分の帳簿書類は一定期間の保存義務があるため、すぐに処分しないよう注意しましょう。

保健所への廃止届の提出

美容所を廃業する場合は、保健所への美容所廃止届の提出もあわせて必要です。廃止届は廃業後速やかに提出することが求められており、税務署への届出とあわせて漏れなく対応しましょう。管轄の保健所によって必要書類や提出方法が異なる場合があるため、事前に問い合わせて確認しておくと安心です。美容師免許に関する手続きは廃止届とは別に管理する必要があるため、混同しないよう注意しましょう。

美容室・サロン廃業時の手続きチェックリスト(提出先と期限)

手続き 提出先 期限
美容所廃止届 保健所 廃止後速やかに(自治体により廃止から10日以内などの定めあり)
個人事業の開業・廃業等届出書(廃業届) 税務署 廃業した年分の所得税の確定申告期限まで
所得税の青色申告の取りやめ届出書 税務署 青色申告をやめる年分の翌年3月15日まで
給与支払事務所等の廃止届出書 税務署 廃止から1か月以内(スタッフを雇っていた場合)
事業廃止届出書(消費税) 税務署 速やかに(課税事業者・インボイス登録者)。インボイス登録を取り消す場合は登録取消届出書も
事業開始(廃止)等申告書 都道府県税事務所 自治体の定めによる(個人事業税)
社会保険・雇用保険の資格喪失、労働保険の確定申告 年金事務所・ハローワーク・労働基準監督署 退職日の翌日から5日以内(社保)・10日以内(雇用保険)、廃止から50日以内(労働保険)
国民健康保険・国民年金への切り替え(法人から個人へ戻る場合など) 市区町村 14日以内

廃業の日付は、保健所の廃止届と税務署の廃業届で同じ日にそろえておくと、廃業年分の申告や消費税の期間計算で迷いません。

廃業した年の確定申告|除却損・処分損で赤字になったら

廃業年分の確定申告を正しく行える

廃業した年もその年の所得について確定申告が必要です。廃業した年に発生した在庫の処分損や設備の除却損なども、その年の必要経費として計上できる場合があるため、手続きを整理しておくことでスムーズに対応できます。廃業年は売上が例年より少なくなる一方、処分損などの経費がまとまって発生しやすいため、資金繰りの見通しも含めて早めに整理しておくとよいでしょう。廃業した年に生じた赤字は、その年の給与所得など他の所得と損益通算でき、引ききれない分は、青色申告であれば翌年以後3年間繰り越せる場合もあるため(純損失の繰越控除)、確定申告時に忘れず検討しましょう。

在庫・設備の取扱いを整理できる

物販商品の在庫や美容機器の処分方法について整理しておくことで、税務上の取扱いも明確になります。在庫を自分で消費したり無償で譲渡した場合は、通常の販売価格に相当する金額を売上として計上する必要がある点にも注意が必要です。在庫の数量や種類を事前にリスト化しておくと、処分方法を検討する際の判断材料になります。仕入先や同業者への譲渡を検討する場合は、価格設定の妥当性についても税理士に相談しておくと安心です。極端に低い価格での譲渡は税務上問題視される場合もあるため、相場を踏まえた価格設定を心がけましょう。

従業員がいる場合の手続きも整理できる

従業員を雇用していた場合、社会保険・雇用保険の資格喪失手続きなども必要になるため、あわせて整理しておくと安心です。給与支払事務所等の廃止届出書も、廃止の事実があった日から1か月以内に提出する必要があります。従業員の離職票の発行や源泉徴収票の交付など、退職に伴う事務手続きも並行して進める必要があります。未払いの給与や退職金がある場合は、支払時期についても従業員へ丁寧に説明しておくことがトラブル防止につながります。退職金を支給する場合は、退職所得の源泉徴収票を作成し、従業員へ交付する必要がある点にも注意しましょう。

廃業・閉店の注意点|消費税の届出と設備の処分

消費税の届出も忘れずに

消費税の課税事業者が廃業した場合は、事業廃止届出書を提出します(ほかに消費税のかかる売上が残る場合を除きます)。課税事業者選択届出書を提出している場合は、事業廃止届出書など、事業を廃止した旨の届出書を提出しないと選択の効力が続くため、注意が必要です。廃業した年についても、1月1日から廃業日までの期間について消費税の申告が必要になる点も忘れないようにしましょう。簡易課税を選択している場合、廃業年の申告方法についても通常年と異なる点がないか事前に確認しておくと安心です。課税事業者選択不適用届出書など、消費税関連の届出も複数あるため、税理士と一緒にチェックリストを作成しておくと漏れを防げます。

設備・什器の処分による損益

美容機器や内装設備を売却・処分する場合、売却額と未償却残高(取得価額から減価償却費を差し引いた金額)との差額が譲渡損益として、廃棄する場合は未償却残高が除却損として扱われます。処分方法によって税務上の取扱いが異なるため、事前に確認しておきましょう。廃業時にまとめて処分するのではなく、廃業前から計画的に在庫を減らしておくことで、処分損の発生を抑えられる場合もあります。閉店セールなどで在庫を販売する場合は、通常の売上として計上する点も忘れないようにしましょう。

まとめ

美容室・サロンの廃業・閉店には、税務署・保健所への届出や確定申告など複数の手続きが必要です。特に在庫や設備の処分方法によって税負担が変わることもあるため、廃業を決めた時点で早めに専門家へご相談いただくとスムーズに進められます。廃業後の生活設計や再就職の予定も踏まえて、税理士と一緒にスケジュールを組んでおくと安心です。国民健康保険や国民年金への切り替え手続きなど、税務以外の届出もあわせて確認しておくと、廃業後の生活がスムーズに始められます。市区町村役場への届出も必要になるため、税務署・保健所とあわせて手続き先を一覧にしておくと安心です。

確定申告全体の流れは「美容室・サロンの確定申告ガイド|個人事業主の税務手続きを税理士が解説」もあわせてご覧ください。

確定申告の業務内容はこちら、料金プランはこちらをご覧ください。顧問契約・確定申告のご依頼・ご予約はこちらの予約方法からお気軽にどうぞ。

よくある質問

Q. 廃業届を出さないとどうなりますか?

A. 提出しなくても直ちに罰則はありませんが、廃業届を提出していない場合、翌年以降も確定申告に関する案内が届くことがあるため、各種届出の整理のためにも提出をおすすめします。届出書は税務署の窓口だけでなく郵送でも提出できるため、来所が難しい場合は郵送での提出も検討しましょう。控えを1部保管しておくと、後日提出状況を確認したい場合にも役立ちます。

Q. 廃業と休業はどう違いますか?

A. 廃業は事業を完全にやめること、休業は一時的に営業を止めることを指します。休業の場合は届出が不要なケースもありますが、保健所の許可の扱いなど業態によって対応が異なるため、事前にご相談ください。休業期間が長期化する見込みがある場合は、税務上は廃業として扱うべきかどうかも含めて検討するとよいでしょう。再開の見込みが立たない場合は、早めに廃業手続きに切り替えることで、無用な届出義務を減らせることもあります。

Q. 在庫として残った物販商品はどう処理すればよいですか?

A. 廃棄・自家消費・譲渡など処理方法によって税務上の取扱いが異なります。特に自家消費や無償譲渡の場合は、通常の販売価格に相当する金額を売上として計上する必要があるため、処分前に税理士へ確認しておくと安心です。廃棄する場合も、処分業者からの証明書等を保管しておくことで、経費計上の根拠として活用できます。廃棄費用がかかる場合は、その費用も廃業年の必要経費として計上できる点もあわせて確認しておきましょう。

Q. 廃業した後に払う税金はありますか?

A. 廃業した年分の所得税・住民税(翌年6月から納付)と、課税事業者なら消費税を翌年3月までに申告・納付します。住民税は前年の所得に対してかかるため、廃業翌年にまとまった納付書が届く点に注意してください。廃業後に支払った家賃の精算や原状回復費のうち一定のものは、廃業年分の必要経費にできます。小規模企業共済に加入していた場合は、廃業を理由に共済金(退職所得扱い)を請求できます。

Q. 閉店後に面貸しや業務委託で働く場合はどうなりますか?

A. 業務委託の報酬は引き続き事業所得(または雑所得)になるため、廃業届は出さずに事業を継続する形も選べます。店舗をやめて個人で施術を続ける場合は、青色申告をそのまま維持したほうが有利なことが多いので、届出を出す前にご相談ください。

美容室・サロンの税務・会計に関する関連記事

美容室・サロンの税務を全体像から確認したい方は、まず美容室・サロンの税務 完全ガイドをご覧ください。個別のテーマは以下の記事で解説しています。

廃業時の手続きは国税庁の情報もご確認ください:国税庁公式サイト

免責事項

本記事は、掲載時点の法令等に基づく一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する税務上の判断や助言を行うものではありません。制度は改正されることがありますので、実際の手続きの際は最新の情報をご確認ください。記事の内容に関するご質問や、記事の内容についてのスポットでのご相談はお受けしておりません。顧問契約をご検討の方には、初回無料の面談を行っています。本記事の内容を利用したことにより生じた損害について、当事務所は一切の責任を負いません。

この記事を書いた税理士

税理士 菅原和望

菅原 和望(すがはら かずみ)税理士/菅原和望税理士事務所 代表

  • 東京地方税理士会 緑支部所属/税理士登録番号 第154708号(2024年11月登録)
  • 登録内容は日本税理士会連合会の税理士情報検索サイト(登録番号 154708 で検索)および東京地方税理士会でご確認いただけます。
  • 会計・税務の実務経験9年
  • 株式会社カプロス 代表(2015年12月設立/ダイヤモンドコア工法によるコンクリートの穿孔・切断・解体工事/施工エリア:関東・東北)
  • 不動産賃貸業(賃貸物件の経営)

1993年生まれ。横浜市青葉区市ケ尾町の菅原和望税理士事務所代表。自ら建設業の施工会社を経営し、不動産賃貸業も営む事業者としての立場もふまえ、クラウド会計(マネーフォワード クラウド)を活用した記帳・決算・確定申告までを一貫してサポートしています。

顧問契約・確定申告のご依頼はこちら

横浜市青葉区・市が尾駅徒歩2分。個人事業主・中小企業の記帳代行から申告書の作成、月次の税務顧問まで一貫してお引き受けします。

初回のご相談は無料です。お問い合わせには通常2営業日以内にご返信いたします。土日は原則お休みですが、事前にご予約いただければ対応いたします。

面談予約の流れ:カレンダーで日時を選ぶ → 確認メールが届く → 当日は資料がなくても大丈夫です(オンライン面談も可)

CONTACT

税務会計に関する様々なご相談に対応しています。
お気軽にお問い合わせください。

初回のご相談は無料です。LINE・お問い合わせフォームは24時間受付/通常2営業日以内にご返信いたします。
土日は原則お休みですが、事前にご予約いただければ対応いたします。

Tel.045-482-6570(受付 9:00~17:00)

※営業電話が多いため、留守番電話に設定している場合があります。お名前とご用件を残していただければ、営業時間内に折り返しご連絡いたします。

菅原和望税理士事務所

菅原和望税理士事務所

〒225-0024
神奈川県横浜市青葉区市ケ尾町1062-1
ローゼ市ヶ尾208

TEL 045-482-6570(受付 9:00~17:00) ※留守番電話の場合は、お名前とご用件を残していただければ折り返します ご連絡はLINE・お問い合わせフォームが確実です(24時間受付/お返事は営業時間内) 定休日:土日祝(土日は事前予約制でご相談可) 東急田園都市線「市が尾駅」より徒歩2分

LINEで相談24時間受付 お電話留守電にご用件を
LINEで相談 045-482-6570