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飲食店は白色申告と青色申告どちらが得か|65万円控除のメリットを解説

皆様、こんにちは。税理士の菅原和望です。

飲食店の確定申告では、白色申告と青色申告のどちらを選ぶかによって、税負担や事務負担が大きく変わります。特に食材の仕入や日々の売上管理が多い飲食店では、記帳方法の違いが日常業務の負担にも直結するため、開業時にしっかり比較しておくことが大切です。取引件数が多い業種ほど、記帳方式の違いが日々の作業時間に大きく影響します。特に複数の決済手段を導入している飲食店は、日々の入金消込作業も増えるため、記帳の仕組みを整えておくことが業務効率化にもつながります。今回は、それぞれの違いとメリット・デメリットについて解説します。 なお、白色申告から青色申告への切り替えは開業後でもできますが、青色申告をしようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業した場合は、開業の日から2か月以内)に青色申告承認申請書を提出する必要があります。期限に注意したうえで、経営状況の変化に応じて記帳方法を見直すとよいでしょう。売上規模が拡大してきたタイミングや、従業員を新たに雇用するタイミングは、記帳方法を見直すよい機会になります。

白色申告と青色申告の違い

  • 白色申告は記帳が簡易で、単式簿記(いわゆる簡易な帳簿)による記帳が認められており、開業直後で経理体制が整っていない場合でも対応しやすい方式です。ただし簡易とはいえ記帳や書類の保存義務がなくなるわけではないため、日々の記録は変わらず必要です。白色申告であっても売上・仕入・経費を日々記録しておかないと、確定申告時期にまとめて集計する負担が大きくなってしまいます
  • 青色申告は、65万円の特別控除を受けるには複式簿記による記帳が必要で、日々の売上・仕入・経費を仕訳として記録する手間はかかりますが、税制上の優遇措置が数多く用意されています。クラウド会計ソフトの普及により、以前より複式簿記のハードルは下がってきています。銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込める機能を使えば、日々の入力の手間も大きく減らすことができます

青色申告の主なメリット

  • 最大65万円(令和9年分からは最大75万円)の青色申告特別控除が受けられる(複式簿記での記帳とe-Taxによる電子申告等の要件を満たす場合)。所得税だけでなく住民税や国民健康保険料の計算にも影響するため、控除額の差は思った以上に大きくなることがあります
  • 赤字が出た場合、翌年以降3年間にわたって赤字を繰り越し、将来の利益と相殺できる純損失の繰越控除が可能(厨房設備の入れ替えなど大きな投資をした年に有効)。開業初年度は先行投資がかさみやすいため、この制度の有無が数年後の税負担に影響することもあります
  • 配偶者や親族に支払う給与のうち、届出書に記載した金額の範囲内で、仕事の内容に見合った金額を青色事業専従者給与として必要経費にできる(白色申告の事業専従者控除には上限額があります)。家族経営の飲食店では、この制度の活用有無で税負担が大きく変わることがあります
  • 40万円未満の減価償却資産を年間300万円まで一括で経費にできる少額減価償却資産の特例が使える(厨房機器やPOSレジの買い替え時に有効)。複数の設備を同時に入れ替える年は、この特例の年間上限額を超えないよう計画的に導入時期を分けることも検討し、優先度の高い設備から順に入れ替える計画を立てておくと資金繰りの面でも安心です

65万円控除を受けるための要件

65万円の青色申告特別控除を受けるには、複式簿記による記帳、貸借対照表・損益計算書の作成、期限内のe-Taxによる電子申告(令和8年分までは、e-Taxに代えて、優良な電子帳簿の保存でも可)などの要件を満たす必要があります。複式簿記で記帳していても、e-Taxで申告しない場合の控除額は、令和8年分までは原則として55万円、令和9年分からは10万円になり、単式簿記などの簡易な帳簿による記帳の場合は最大10万円の控除となります。令和9年分からは、65万円の要件に加えて、優良な電子帳簿の保存などの要件も満たすと控除額が75万円になる一方、前々年の事業の収入が1,000万円を超える方は、簡易な帳簿では原則として控除を受けられなくなります。同じ複式簿記で記帳する手間をかけるのであれば、e-Taxに対応して65万円控除を目指す方が結果的にお得になるケースがほとんどです。e-Taxでの申告に慣れておけば、翌年以降の確定申告もスムーズに進められる点もメリットです。クラウド会計ソフトを利用すれば、複式簿記の知識がなくても仕訳を自動で作成できるため、65万円控除の要件を満たしやすくなります。銀行口座やクレジットカードと連携させれば、日々の入出金データを自動で取り込める点も記帳の負担軽減につながります。POSレジと会計ソフトを連携させれば、売上データの入力も自動化でき、日々の記帳作業をさらに効率化できます。 なお、2024年1月以降は電子取引データの保存が全事業者に義務化されており、請求書や領収書をPDFなどで受け取っている場合は、紙に印刷するだけでなく所定のルールに沿ったデータ保存も必要になる点に注意しましょう。仕入先からの請求書をメールやウェブでやり取りする機会が多い飲食店ほど、早めの対応が求められます。

よくあるご質問

Q. 開業したばかりでも青色申告はできますか?

A. 開業日から2か月以内(1月1日〜15日開業の場合はその年の3月15日まで)に青色申告承認申請書を提出すれば、初年度から青色申告が可能です。開業準備で忙しい時期ですが、この届出だけは期限に遅れないよう特に注意しましょう。提出が遅れると、その年は白色申告となってしまうため、期限までに開業届と同時に提出しておくと安心です。 なお、青色申告ができるかどうかに関わるのは、青色申告承認申請書を期限までに提出したかどうかで、開業届の提出時期は関係しませんが、提出漏れを防ぐため、両方をセットで準備しておくとよいでしょう。

Q. 白色申告から青色申告に変更できますか?

A. 適用を受けたい年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業した場合は開業から2か月以内)に青色申告承認申請書を提出すれば変更できます。提出期限を1日でも過ぎるとその年は青色申告ができず、翌年分から青色申告をするには翌年の3月15日までの提出が必要になるため、余裕を持って準備を進めましょう。届出書の提出は税務署窓口のほか郵送やe-Taxでも可能なため、忙しい時期は電子申請の活用も検討するとよいでしょう。65万円の特別控除を受けるには複式簿記での記帳体制を整える必要があるため、切り替えの前にクラウド会計ソフトの導入や記帳方法について税理士に相談しておくとスムーズです。特に日々の売上・仕入の記録方法が変わるため、切り替え前に一度実際の記帳フローを確認しておくと安心です。切り替え初年度は不慣れな部分も多いため、月次で記帳内容を確認してもらう体制を整えておくと安心です。慣れないうちは月末に自分で記帳内容を見直す時間を確保し、疑問点をまとめて税理士に確認する習慣をつけるとよいでしょう。 また、変更後最初の年から65万円控除を受けるには、複式簿記での記帳とe-Taxによる電子申告の両方に対応しておく必要があります(令和8年分までは、e-Taxによる電子申告に代えて、優良な電子帳簿の保存でも受けられます)。

まとめ 税理士からのアドバイス

飲食店経営で売上が安定してきた場合、青色申告のメリットは非常に大きくなります。控除額だけでなく、赤字繰越や専従者給与など複数の制度を組み合わせることで、トータルの節税効果はさらに大きくなります。それぞれの制度は単独でも効果がありますが、組み合わせて活用することで世帯全体の税負担をより効果的に抑えられます。記帳の手間はかかりますが、クラウド会計ソフトや税理士のサポートを活用すれば負担を抑えることができ、将来の資金計画にもつながります。開業直後で判断に迷う場合は、白色申告からスタートし、経理体制が整った段階で青色申告に切り替えることも選択肢の一つです。無理に最初から複式簿記を目指すのではなく、まずは日々の記帳を習慣化することを優先するのも一つの考え方です。 特に複数店舗の展開や設備投資を検討している場合は、税負担だけでなく資金調達の観点からも青色申告への切り替えを検討する価値があります。複式簿記による正確な決算書は、金融機関からの融資審査でも信頼性の高い資料として評価されやすくなります。特に多店舗展開を目指す場合、融資を受ける機会も増えるため、早い段階から信頼性の高い決算書を作成できる体制を整えておくことが有利に働きます。

菅原和望税理士事務所では、飲食店の記帳代行や確定申告のサポートを行っております。

確定申告の基本については「飲食店の確定申告ガイド」、開業時の税務手続きについては「飲食店開業時の税務手続きまとめ」、インボイス制度については「飲食店とインボイス制度」もあわせてご覧ください。

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飲食店の税務を全体像から確認したい方は、まず飲食店の税務 完全ガイドをご覧ください。個別のテーマは以下の記事で解説しています。

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この記事を書いた税理士

税理士 菅原和望

菅原 和望(すがはら かずみ)税理士/菅原和望税理士事務所 代表

  • 東京地方税理士会 緑支部所属/税理士登録番号 第154708号(2024年11月登録)
  • 登録内容は日本税理士会連合会の税理士情報検索サイト(登録番号 154708 で検索)および東京地方税理士会でご確認いただけます。
  • 会計・税務の実務経験9年
  • 株式会社カプロス 代表(2015年12月設立/ダイヤモンドコア工法によるコンクリートの穿孔・切断・解体工事/施工エリア:関東・東北)
  • 不動産賃貸業(賃貸物件の経営)

1993年生まれ。横浜市青葉区市ケ尾町の菅原和望税理士事務所代表。自ら建設業の施工会社を経営し、不動産賃貸業も営む事業者としての立場もふまえ、クラウド会計(マネーフォワード クラウド)を活用した記帳・決算・確定申告までを一貫してサポートしています。

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