皆様、こんにちは。税理士の菅原和望です。
飲食店経営では、日々の売上・仕入・経費の記帳が煩雑になりがちです。特にランチとディナーで客層や単価が異なる店舗、テイクアウトと店内飲食を併設する店舗では、売上データの区分だけでも一苦労という声をよくお聞きします。特に複数店舗を運営していたり、キャッシュレス決済の種類が多い店舗では、手作業での記帳に多くの時間がかかってしまいます。営業終了後の疲れた状態でレジ締めや伝票整理をこなすのは負担が大きく、記帳作業が後回しになって月末にまとめて処理する店舗も少なくありません。月末にまとめて処理しようとすると内容を思い出せず、経費の計上漏れにつながることもあるため、日々の記帳の仕組み化が重要です。今回は、飲食店におすすめの会計ソフトの選び方と、POSレジ連携による記帳効率化のポイントについて解説します。 また、開業当初から適切なソフトを選んでおくことで、後から別のソフトに移行する際のデータ移行の手間を避けられるという利点もあります。特に開業から数年後に法人化を検討する場合、法人でも継続利用しやすいソフトを選んでおくと、切り替えの手間を最小限に抑えられます。個人事業と法人の両方に対応したソフトであれば、事業形態が変わっても過去のデータを引き継いで運用を続けられます。
飲食店が会計ソフトを選ぶポイント
- POSレジやキャッシュレス決済サービス(クレジットカード・QRコード決済等)との連携が可能か。連携が不十分だと、決済手数料や入金タイミングのズレを手作業で調整する手間が発生します。導入前に自店で利用中の決済サービスとの連携実績があるか確認しておくと、後からの手戻りを防げます
- 軽減税率(8%・10%)の区分に対応し、テイクアウトと店内飲食を自動で区別できるか。この区分を誤ると消費税申告の際に修正が必要になるため、レジ入力の段階で正しく仕分けられる仕組みが重要です
- インボイス制度に対応した請求書・領収書の発行や、電子帳簿保存法に対応したデータ保存ができるか。対応が不十分なソフトを選んでしまうと、後から別のシステムを追加導入する必要が生じることもあります
- 複数店舗を運営している場合、店舗別・部門別の損益管理ができ、比較しやすい形でレポートを出力できるか。店舗間の数値を比較できると、不振店舗の早期発見や成功事例の横展開にも役立ちます。多店舗展開を予定している場合は、開業初期の段階からこうした比較機能があるソフトを選んでおくと、将来の運用がスムーズになります
POSレジ連携のメリット
POSレジと会計ソフトを連携させることで、日々の売上データを自動的に取り込み、手入力の手間や入力ミスを減らすことができます。これまで閉店後にレジの集計データを手作業で会計ソフトへ転記していた場合、この作業そのものが不要になるため、閉店後の時間を仕込みや翌日の準備に充てられるようになります。軽減税率の区分も自動で反映されるため、消費税申告の正確性向上にもつながります。手作業での区分入力が減ることで、繁忙期にありがちな入力ミスや区分の付け忘れも防ぎやすくなります。また、日別・時間帯別の売上データを自動で集計できるため、繁忙時間帯の把握や人員配置の見直しなど、経営判断にも活用しやすくなります。手入力による記帳漏れや二重入力のリスクが減ることで、月次の締め作業も短時間で行えるようになります。 特に複数のキャッシュレス決済サービスを併用している店舗では、決済手数料や入金サイクルの違いも会計ソフト上で一元管理できると、資金繰りの把握がしやすくなります。決済手数料は種類によって料率が異なるため、どの決済方法の利用比率が高いかを把握しておくと、コスト削減の交渉材料にもなります。
記帳を効率化する具体的な方法
クラウド会計ソフトと銀行口座・クレジットカードを連携させることで、入出金明細を自動で取り込むことができます。通帳記帳やカード明細の確認作業そのものを省略でき、手入力による転記ミスも減るため、記帳作業全体のスピードが上がります。レシート・領収書をスマートフォンで撮影して取り込める機能も、日々の記帳の負担軽減に役立ちます。AI-OCR機能を使えば、撮影したレシートの店名・日付・金額を自動で読み取り、仕訳の候補まで提示してくれるソフトもあります。読み取り精度はソフトによって差があるため、実際の運用で使う予定のレシートの種類で事前に試しておくと安心です。感熱紙のレシートは印字が薄れやすいため、受け取ったらできるだけ早く読み取っておくことをおすすめします。仕入先や経費の種類ごとに自動で分類ルールを設定しておくことで、入力作業をさらに省力化できます。一度ルールを整えてしまえば、日々の記帳作業は内容の確認とイレギュラーな取引の処理が中心になり、担当者の負担は大きく軽減されます。 給与計算ソフトと連携できるタイプであれば、アルバイト・パートの勤怠データから給与計算、記帳までを一連の流れで行うことも可能です。シフト管理アプリと連動させれば、勤怠の集計から給与計算までの手作業をさらに減らすこともできます。
よくあるご質問
Q. 会計ソフトはどれを選べばよいですか?
A. お店の規模やPOSレジとの相性、顧問税理士が対応しているソフトかどうかも踏まえて選ぶことをおすすめします。無料体験期間を設けているソフトも多いため、実際の記帳業務で使い勝手を確認してから本契約するのも一つの方法です。すでに使っているキャッシュレス決済サービスや予約システムとの連携実績があるかどうかも、選定時の重要なポイントです。
Q. 会計ソフトを導入すれば記帳は税理士に頼まなくてもよいですか?
A. 日々の記帳の手間は大きく減らせますが、経費区分や税務判断など専門知識が必要な部分も多いため、顧問税理士と連携しながら活用することをおすすめします。会計ソフトが自動で作成する仕訳がすべて正しいとは限らないため、月に一度は内容を確認してもらうと安心です。特に自動仕訳のルール設定を誤ったまま放置すると、同じ間違いが繰り返し発生してしまうため、早い段階で顧問税理士にチェックしてもらうことをおすすめします。
まとめ 税理士からのアドバイス
会計ソフトの活用は、飲食店の記帳効率化と経営状況の見える化に大きく貢献します。日々忙しい飲食店経営者にとって、リアルタイムに近い形で数字を把握できることは、勘に頼らない経営判断を行ううえでも大きな武器になります。日々の記帳負担を減らすだけでなく、店舗ごとの収益状況を把握しやすくなる点も大きなメリットです。数値をタイムリーに把握できれば、原価率や人件費率の変動にも早めに気づき、対策を打ちやすくなります。導入や運用に迷う場合は、税理士へご相談いただくとスムーズです。特に開業前の準備期間中に会計ソフトの選定まで済ませておくと、開業後すぐに記帳を習慣化しやすくなります。開業後にソフトを切り替えると過去データの移行に手間がかかるため、最初の選定は慎重に行うことをおすすめします。
菅原和望税理士事務所では、クラウド会計を活用した飲食店の記帳代行や導入サポートを行っております。
確定申告の基本については「飲食店の確定申告ガイド」、経費の取扱いについては「飲食店の経費と設備投資」、人件費・社会保険については「飲食店の人件費と社会保険」もあわせてご覧ください。
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電子帳簿保存法の詳細については、国税庁の公式サイトでもご確認いただけます。
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