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飲食店の消費税申告|簡易課税と原則課税どちらが得かを解説

皆様、こんにちは。税理士の菅原和望です。

インボイス制度の開始により、これまで免税事業者だった飲食店でも消費税の申告が必要になるケースが増えています。これまで確定申告のみで済んでいた事業者にとって、消費税の申告方法の選択は新たに直面する大きな悩みの一つになっています。消費税の申告方法は原則課税と簡易課税の2種類が基本ですが、インボイス制度をきっかけに新たに課税事業者となった事業者には『2割特例』という選択肢もあり、どの方法が有利かは業態や仕入の状況によって変わります。3つの方式にはそれぞれ届出の要否や適用期間の制限が異なるため、自店がどの方式を選べるのかをまず整理することが第一歩になります。特にインボイス登録初年度は、選択できる制度の組み合わせが年によって変わることもあるため、早めに顧問税理士へ確認しておくと安心です。今回は、消費税申告における簡易課税制度と原則課税制度の違いについて解説します。 特に開業からしばらくは仕入や設備投資の状況が変化しやすいため、毎年の見直しが欠かせません。開業直後は客数や客単価も安定しにくく、仕入率も月ごとに変動しやすいため、複数月分のデータをもとに判断することが望ましいでしょう。

原則課税と簡易課税の違い

原則課税は、売上にかかる消費税から仕入・経費にかかった消費税を差し引いて納税額を計算する方法です。取引ごとの消費税額を正確に把握する必要があるため、日々の記帳の精度がそのまま納税額の正確性に直結します。たとえば年間売上に係る消費税額が300万円で、実際に支払った仕入・経費の消費税額が150万円だった場合、原則課税では差額の150万円が納税額となります。原則課税は実際の取引に基づいて計算するため、仕入や経費の消費税を証明する請求書・領収書の保存が欠かせません。インボイス制度開始後は、取引先が適格請求書発行事業者かどうかによって控除できる金額が変わるため、請求書の保存だけでなく登録状況の確認もあわせて必要になります。一方、簡易課税は売上にかかる消費税に業種ごとの「みなし仕入率」を掛けて納税額を計算する簡便な方法で、実際の仕入額を一件ごとに集計する手間が省けますが、事前の届出が必要です。仕入や経費の実額を細かく集計する必要がないため、記帳の手間を減らしたい小規模店舗に選ばれることが多い方式です。 どちらの方式が有利かは、仕入や外注費の割合によって変わるため、開業後の実績が出てきた段階で一度シミュレーションしておくと安心です。開業直後で実績データが少ない時期は、同業種の平均的な数値を参考にしながら暫定的に方針を決めることも一つの方法です。数か月分の実績が蓄積された時点で改めて試算し、必要であれば翌年以降の方式を見直すとよいでしょう。

飲食店のみなし仕入率

飲食店(飲食サービス業)は業態により事業区分が異なりますが、一般的な飲食店は第4種事業(みなし仕入率60%)に区分されることが多いです。原価率の高い業態(食材費比率が高い焼肉店など)ほど、実際の仕入率がみなし仕入率を上回ることがあり、その場合は原則課税の方が有利になることもあります。ただし、テイクアウトや持ち帰り用の製造小売とみなされる場合は第3種事業(みなし仕入率70%)など区分が異なることもあるため注意が必要です。同じ店舗でイートインとテイクアウトの両方を提供している場合、売上を事業区分ごとに区分して記帳する必要がある点にも注意しましょう。なお、簡易課税制度を選択できるのは、前々年(基準期間)の課税売上高が5,000万円以下の事業者に限られる点にも留意しましょう。複数店舗を運営し売上が拡大してきた事業者は、この基準を超えていないか毎年確認しておく必要があります。 自店がどの事業区分に該当するかの判断を誤ると、想定より納税額が大きくなってしまうこともあるため、営業形態が複数の区分にまたがる場合は税理士に確認することをおすすめします。飲食物の製造販売とサービス提供が混在する業態ほど、事業区分の判定が複雑になりやすい傾向があります。

簡易課税を選ぶメリット・デメリット

  • メリット:仕入税額の計算や請求書等の保存に関する事務負担が簡略化され、インボイスの保存要件を細かく確認する手間も軽減される。取引先が免税事業者かどうかを個別に確認する必要もないため、仕入先の選択肢が広がりやすい面もあります。特に個人の生産者や小規模業者との取引が多い店舗にとって、この事務負担の軽減効果は小さくありません
  • メリット:実際の仕入率(60%未満)がみなし仕入率(60%)より低い場合、簡易課税の方が納税額が少なくなることがある。原価率を抑えた経営をしている店舗ほど、簡易課税を選ぶメリットが大きくなる傾向にあります。逆に原価率が高い業態では、原則課税の方が有利になるケースも多いため、業態に応じた見極めが重要です
  • デメリット:厨房設備の入れ替えなど高額な設備投資をした年は、その分の消費税を控除できる原則課税の方が有利になる場合がある。大規模な改装や開業初年度など、投資額が大きい年は特に事前のシミュレーションが重要です。設備投資の計画がある場合は、投資を行う年度に合わせて課税方式を選択できるよう、早めにスケジュールを立てておくとよいでしょう
  • デメリット:一度選択すると原則として2年間は継続適用が必要となり、その間に大きな設備投資が発生しても原則課税に変更できない。将来の設備投資計画がある場合は、選択する前にタイミングを慎重に検討する必要があります

よくあるご質問

Q. 簡易課税を選ぶにはどうすればよいですか?

A. 適用を受けたい課税期間の開始前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出する必要があります。新規開業年など一定の場合は、その課税期間中に提出すれば初年度から適用できる特例もあるため、開業タイミングとあわせて確認しておきましょう。届出書の提出を忘れると、翌課税期間まで簡易課税を適用できなくなってしまうため、期限管理には特に注意が必要です。

Q. どちらが有利か迷ったらどうすればいいですか?

A. 過去の実績データをもとに、原則課税と簡易課税、該当する場合は2割特例を含めて納税額をシミュレーションすることをおすすめします。前年の確定申告データや試算表が手元にあれば、比較的短時間で精度の高い試算が可能です。試算の際は月ごとの仕入率のばらつきも考慮し、繁忙期・閑散期それぞれのデータを踏まえて判断すると精度が高まります。設備投資の予定がある場合はその影響も加味する必要があるため、税理士に相談すると判断がスムーズです。過去数年分の決算書があれば、実際の仕入率をもとにより精度の高いシミュレーションが可能になります。

まとめ 税理士からのアドバイス

簡易課税と原則課税のどちらが有利かは、業態や設備投資の予定、実際の仕入率によって変わります。一度選択すると2年間は変更できないため、翌年以降の事業計画も踏まえて毎年の状況にあわせて見直すことが大切です。特に開業から数年は売上構成や設備投資の状況が変わりやすいため、毎年の決算のタイミングで方式を見直す習慣をつけておくと安心です。 判断に迷う場合は、決算内容をもとに税理士へ早めに相談することをおすすめします。特に開業から数年間は経営状況の変化が大きいため、単年度だけでなく数年先を見据えた方式選択を心がけましょう。多店舗展開を視野に入れている場合は、店舗ごとの状況も踏まえて全体最適の視点で検討することが望ましいです。

菅原和望税理士事務所では、飲食店の消費税申告や簡易課税の選択について、シミュレーションを踏まえたご提案を行っております。

確定申告の基本については「飲食店の確定申告ガイド」、インボイス制度については「飲食店とインボイス制度」、軽減税率については「飲食店の軽減税率」もあわせてご覧ください。

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この記事を書いた税理士

税理士 菅原和望

菅原 和望(すがはら かずみ)税理士/菅原和望税理士事務所 代表

  • 東京地方税理士会 緑支部所属/税理士登録番号 第154708号(2024年11月登録)
  • 登録内容は日本税理士会連合会の税理士情報検索サイト(登録番号 154708 で検索)および東京地方税理士会でご確認いただけます。
  • 会計・税務の実務経験9年
  • 株式会社カプロス 代表(2015年12月設立/ダイヤモンドコア工法によるコンクリートの穿孔・切断・解体工事/施工エリア:関東・東北)
  • 不動産賃貸業(賃貸物件の経営)

1993年生まれ。横浜市青葉区市ケ尾の菅原和望税理士事務所代表。自ら建設業の施工会社を経営し、不動産賃貸業も営む事業者としての立場もふまえ、クラウド会計(マネーフォワード クラウド)を活用した記帳・決算・確定申告までを一貫してサポートしています。

消費税の簡易課税制度については、国税庁の公式サイトでもご確認いただけます。

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