皆様、こんにちは。税理士の菅原和望です。
令和8年(2026年)分の所得税では、令和8年度税制改正により基礎控除・給与所得控除の最低保障額・扶養親族等の所得要件が引き上げられます。改正法の施行日は令和8年12月1日で、会社員の方は12月の年末調整でまとめて精算され、個人事業主の方は令和9年2月16日から3月15日までに行う確定申告で反映されます。なお、ひとり親控除の控除額の引上げ(38万円)は令和9年分からで、令和8年分で変わるのは「子の所得要件」だけです。
この記事では、令和8年分の申告・年末調整で押さえておきたい変更点を、令和7年分と比べながら整理します。金額はすべて所得税のものです。
※本記事は2026年9月時点の法令と国税庁・財務省の公表資料にもとづいています。個々の適用は要件の確認が必要です。
1. 基礎控除が4万円引き上げ(本則58万円→62万円)
基礎控除は、合計所得金額2,350万円以下の方について本則が58万円から62万円に引き上げられました。さらに、合計所得金額655万円以下の方には令和8年分・令和9年分に限り上乗せ(最大42万円)があり、控除額は次のとおりです。
| 合計所得金額 | 令和7年分 | 令和8年分・令和9年分 |
|---|---|---|
| 132万円以下 | 95万円 | 104万円 |
| 132万円超 489万円以下 | 88万円(336万円以下)/68万円(336万円超) | 104万円 |
| 489万円超 655万円以下 | 63万円 | 67万円 |
| 655万円超 2,350万円以下 | 58万円 | 62万円 |
| 2,350万円超 2,400万円以下 | 48万円 | 48万円 |
| 2,400万円超 2,450万円以下 | 32万円 | 32万円 |
| 2,450万円超 2,500万円以下 | 16万円 | 16万円 |
| 2,500万円超 | 0円 | 0円 |
令和10年分以後は、合計所得金額132万円以下の方は99万円(62万円+37万円)、132万円超2,350万円以下の方は62万円になります。なお、令和8年度税制改正では、物価上昇に連動して基礎控除等を引き上げる仕組みも創設されており、今後の金額は物価の動きによって見直されます。
2. 給与所得控除の最低保障額が74万円に
給与収入が少ない方に適用される給与所得控除の最低保障額は、令和7年分の65万円から、本則で69万円に引き上げられ、令和8年分・令和9年分は特例で5万円が上乗せされて74万円になります。パート・アルバイトの方の「所得税がかからない給与収入の上限」は、基礎控除104万円と合わせて178万円(74万円+104万円)が目安です。
3. 扶養親族・配偶者の所得要件が62万円以下に
扶養控除・配偶者控除の対象になる親族等の合計所得金額の要件は、令和7年分の58万円以下から62万円以下に引き上げられました。給与収入だけの方であれば、給与収入136万円以下(62万円+給与所得控除74万円)が目安になります。19歳以上23歳未満の親族について所得がこの要件を超える場合は、引き続き特定親族特別控除の対象になりうるため、親族の所得の見込みを年末調整前に確認しておくことが大切です。
4. ひとり親控除:令和8年分は「子の所得要件」のみ改正(控除額38万円は令和9年分から)
ひとり親控除は、令和8年度税制改正で2つの見直しが行われましたが、適用が始まる年分が異なります。
- 生計を一にする子の所得要件:総所得金額等が58万円以下から62万円以下に引き上げられ、令和8年分から適用されます。
- 控除額の引上げ:所得税は35万円から38万円に(個人住民税は30万円から33万円に)引き上げられますが、適用は令和9年分の所得税(個人住民税は令和10年度分)からです。令和8年分の年末調整・確定申告では、控除額は35万円のままです。
本人の合計所得金額500万円以下という要件は変わりません。詳しくは「ひとり親控除の見直し|令和8年度税制改正のポイント」で解説しています。
5. 23歳未満の扶養親族がいる方の生命保険料控除
23歳未満の扶養親族がいる方は、令和8年分・令和9年分について、新契約(平成24年1月1日以後の契約)の一般の生命保険料に係る控除額の上限が4万円から6万円に引き上げられます(当初は令和8年分のみの措置でしたが、令和8年度税制改正で令和9年分まで延長されました)。ただし、介護医療保険料・個人年金保険料と合わせた生命保険料控除全体の上限12万円は変わりません。年末調整では保険料控除申告書に、確定申告では第二表の記載と控除証明書の内容の確認が必要です。
6. 定額減税は令和8年分にはありません
令和6年分に実施された定額減税(所得税3万円・住民税1万円)は令和6年分限りの措置で、令和8年分の年末調整・確定申告には関係ありません。令和6年分の書き方と混同しないようご注意ください。
7. 年末調整・確定申告の実務で注意する点
会社員・従業員のいる事業主の方
- 改正の施行日は令和8年12月1日です。令和8年11月までの毎月の源泉徴収は従来の税額表のままで、12月の年末調整で改正後の控除額を使って精算します。
- 扶養親族等の所得要件が62万円になったことで、令和8年分の年末調整で新たに扶養控除・配偶者控除の対象になる家族がいないか、申告書の記載内容を確認してください。
- ひとり親控除(子の所得要件が62万円以下に緩和)・生命保険料控除(23歳未満の扶養親族がいる場合)は、該当する方の記載漏れが起きやすい項目です。
個人事業主・フリーランスの方
- 令和8年分の確定申告期間は令和9年2月16日(火)から3月15日(月)まで、消費税の申告・納付期限は3月31日(水)です。
- 基礎控除の引き上げは事業所得の方にも適用されます。令和8年分の青色申告特別控除(最大65万円)の要件(複式簿記、e-Tax申告または優良な電子帳簿)は変わりません(令和8年度税制改正により、令和9年分からは控除額と要件が見直されます)。
- インボイス発行事業者の方は、令和8年分が「2割特例」の最後の年分です。令和9年分からの方式(3割特例・簡易課税・一般課税)は「インボイス2割特例はいつまで?令和8年度改正の「3割特例」と簡易課税の選び方」で解説しています。
- 免税事業者からの仕入れがある方は、令和8年10月1日以後の仕入れの控除割合が80%から70%に変わります。会計ソフトの税区分の設定を見直してください。
よくあるご質問
Q. 令和8年の給与は毎月の手取りが増えますか?
A. 改正は令和8年12月1日施行のため、11月までの毎月の源泉徴収税額は従来どおりです。引き上げ分は12月の年末調整で還付される形で反映されます。
Q. 妻の給与収入が130万円の見込みです。配偶者控除の対象になりますか?
A. 令和8年分では、給与収入だけの場合136万円以下(合計所得金額62万円以下)であれば配偶者控除の対象です。130万円であれば対象になります(本人の合計所得金額が1,000万円以下であることが必要です)。なお、社会保険の扶養の判定は税金とは別の基準ですのでご注意ください。
Q. 大学生の子のアルバイト収入が150万円です。扶養控除は受けられますか?
A. 給与収入150万円は合計所得金額76万円(150万円-74万円)となり、扶養控除の所得要件(62万円以下)を超えるため扶養控除の対象にはなりません。ただし、19歳以上23歳未満であれば特定親族特別控除の対象になりうるため、年末調整では「給与所得者の特定親族特別控除申告書」の提出を検討してください。
Q. ひとり親控除は令和8年分から38万円になりますか?
A. なりません。控除額が38万円になるのは令和9年分の所得税からで、令和8年分は35万円のままです。令和8年分から変わるのは、生計を一にする子の所得要件(総所得金額等58万円以下→62万円以下)です。
Q. 個人住民税も同じように変わりますか?
A. 個人住民税は所得税の翌年度に反映されます。給与所得控除の最低保障額や扶養親族等の所得要件(62万円以下)の見直しは、令和8年分の所得に対する住民税(令和9年度分)から、ひとり親控除の33万円への引上げは令和10年度分から適用されます。住民税の基礎控除など所得税と金額が異なる項目もあるため、住民税の詳細はお住まいの市区町村の案内をご確認ください。
まとめ
令和8年分は、基礎控除62万円(所得655万円以下は最大104万円)、給与所得控除の最低保障額74万円、扶養親族等の所得要件62万円(給与収入136万円)と、控除が全体に広がる年です。ひとり親控除は、令和8年分は子の所得要件(62万円以下)のみが変わり、控除額38万円への引上げは令和9年分からです。会社員の方は12月の年末調整で精算され、個人事業主の方は令和9年3月15日までの確定申告で反映されます。
出典
- 国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」
- 国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」(令和8年5月)
- 国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」
- 国税庁 タックスアンサー No.1199「基礎控除」
- 国税庁 タックスアンサー No.1410「給与所得控除」
- 国税庁 タックスアンサー No.1171「ひとり親控除」
- 国税庁 タックスアンサー No.1140「生命保険料控除」
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」
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