皆様、こんにちは。税理士の菅原和望です。
「白色申告と青色申告、どちらを選べばよいのか」というご相談を多くいただきます。開業したばかりの方にとっては聞き慣れない言葉かもしれませんが、選択次第で税負担が大きく変わることもあるため、早い段階で違いを理解しておくことが大切です。特に開業直後は分からないことも多いため、基本を押さえておくことで後々の判断がしやすくなります。今回は、フリーランスの白色申告と青色申告の違いについて解説します。
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確定申告のやり方・青色申告・経費と家事按分・源泉徴収と請求書・インボイス・社会保険・小規模企業共済とiDeCo・法人化・廃業までを1ページにまとめたフリーランス・ITエンジニアの税務 完全ガイドも公開しています。この記事はそのうちの1テーマを詳しく解説したものです。
白色申告と青色申告とは
白色申告の特徴
白色申告は事前の届出が不要で、簡易な帳簿付けで申告できる方法です。手軽な一方、税制上の優遇措置は限定的です。開業直後で記帳に不慣れな方が、まず慣れるために選ぶケースもあります。特別な手続きをしていない場合は自動的に白色申告の扱いとなるため、多くの開業直後のフリーランスがまずこの方法で申告をスタートすることになります。ただし、白色申告のままでいると青色申告で受けられる控除や繰越控除の恩恵を受けられないため、収入が安定してきた段階で青色申告への切り替えを検討する方が多く見られます。切り替えを検討する際は、まず自分の記帳状況が複式簿記に対応できるか確認しておくとよいでしょう。
青色申告の特徴
青色申告は事前に承認申請書を提出し、複式簿記による記帳を行うことで、さまざまな税制優遇を受けられる申告方法です。記帳や申告の手間は増えるものの、所得控除や損失の繰越控除など、税負担を軽減できる特典が数多く用意されています。手間と効果のバランスを考えれば、早めに切り替えを検討する価値は十分にあります。
青色申告を選ぶメリット
最大65万円(令和9年分からは最大75万円)の青色申告特別控除
複式簿記による記帳と貸借対照表の作成、期限内のe-Taxによる申告(令和8年分までは、e-Taxに代えて、優良な電子帳簿の保存でも可)の要件を満たすことで、所得から65万円を控除できます。複式簿記で記帳していても、e-Taxで申告しない場合の控除額は、令和8年分までは原則として55万円、令和9年分からは10万円になり、簡易な帳簿にとどまる場合は最大10万円です。令和9年分からは、65万円の要件に加えて、優良な電子帳簿の保存などの要件も満たすと控除額が75万円になる一方、前々年の事業の収入が1,000万円を超える方は、簡易な帳簿では原則として控除を受けられなくなります。このように、記帳・申告方法によって控除額が変わります。同じ複式簿記の手間をかけるのであれば、e-Taxに対応して65万円の控除を目指す方が結果的に有利になるケースがほとんどです。
赤字の3年間繰越控除
その年の事業が赤字になった場合、翌年以降3年間にわたって黒字と相殺できるため、収入が不安定なフリーランスに有利です。開業初年度は営業活動費や設備投資がかさみ赤字になりやすいため、この繰越控除を活用できるかどうかは長期的な税負担に大きく影響します。青色申告を選択していなければこの制度自体が使えないため、開業時の申告方式の選択が重要な意味を持ちます。
家族への給与を必要経費にできる
青色事業専従者給与の届出により、生計を一にする家族への給与を必要経費として計上できます。白色申告の場合も事業専従者控除という制度がありますが、控除できる金額は、配偶者であれば86万円、それ以外の親族であれば1人につき50万円が上限で(この控除をする前の事業所得の金額を、専従者の数に1を足した数で割った金額の方が低い場合は、その金額)、青色申告の専従者給与と比べて優遇の幅は限定的です。家族に事務作業や制作の手伝いをしてもらっている場合、この制度の活用有無で世帯全体の税負担が大きく変わることもあります。なお、青色事業専従者給与として必要経費にできるのは、届出書に記載した金額の範囲内で、労務の対価として相当な金額に限られる点に注意が必要です。
青色申告の注意点
事前の届出が必要
青色申告を行うには、開業の日から2か月以内(1月15日までに開業した場合はその年の3月15日まで。すでに開業している場合は、青色申告をしようとする年の3月15日まで)に承認申請書を提出する必要があります。この期限を過ぎてしまうと、その年は白色申告となり、翌年分から青色申告をするには、翌年の3月15日までに申請書を出す必要があります。そのため、開業と同時に手続きを済ませておくことが望ましいです。開業から2か月以内に、開業届とあわせて提出しておけば、提出漏れを防ぎやすくなります。
複式簿記による記帳が必要
65万円控除を受けるには複式簿記による記帳が必要となるため、クラウド会計ソフトの活用が実務上おすすめです。クラウド会計ソフトを使えば、銀行口座やクレジットカードの明細を自動取得して仕訳を作成できるため、簿記の知識が少ない方でも複式簿記による記帳を無理なく続けやすくなります。導入当初は操作に慣れが必要ですが、続けるうちに日々の記帳がスムーズになります。
まとめ
フリーランスにとって青色申告は、事務負担が増える一方で税制優遇のメリットが大きい制度です。控除額や繰越控除などの特典を踏まえると、多くの場合、青色申告を選択する方が長期的には有利になります。目先の手間だけでなく、数年先の税負担も見据えて判断することをおすすめします。開業時にはできるだけ早く青色申告承認申請書を提出することをおすすめします。
開業時の手続き全体は「フリーランス開業時の税務手続き|開業届・青色申告承認申請書を解説」、おすすめの会計ソフトは「フリーランスにおすすめの会計ソフト|クラウド会計と記帳のポイントを解説」もあわせてご覧ください。
当事務所では、青色申告への切り替えや複式簿記での記帳サポートも行っております。確定申告の業務内容はこちら、料金プランはこちらをご覧ください。顧問契約・確定申告のご依頼・ご予約はこちらの予約方法からお気軽にどうぞ。
よくある質問
Q. 青色申告承認申請書の提出が遅れた場合はどうなりますか?
A. 期限に間に合わなかった場合、その年は白色申告となります。翌年分から青色申告をするには、翌年の3月15日までに申請書を提出する必要があります。提出期限を過ぎてから慌てて準備をするのではなく、開業から2か月以内に、開業届とあわせて提出しておくことをおすすめします。提出方法は税務署窓口のほか郵送やe-Taxでも可能です。
Q. 65万円控除を受けるための要件は何ですか?
A. 複式簿記による記帳、貸借対照表・損益計算書の添付、期限内のe-Taxによる申告(令和8年分までは、e-Taxに代えて、優良な電子帳簿の保存でも可)が要件です。複式簿記で記帳していても、e-Taxで申告しない場合の控除額は、令和8年分までは原則として55万円、令和9年分からは10万円に下がり、簡易な帳簿による記帳の場合は最大10万円のため、事前にどの要件を満たせるか確認しておくとよいでしょう。控除額の差は所得税だけでなく住民税や国民健康保険料にも影響するため、しっかり把握しておくことが大切です。
Q. 白色申告でも記帳は必要ですか?
A. 白色申告でも簡易な帳簿の記帳と保存が義務付けられています。記帳義務があるにもかかわらず税制優遇は限定的であるため、同程度の手間をかけるのであれば青色申告を選ぶ方が有利になるケースが多いです。同じ記帳の手間をかけるなら、税制優遇の大きい青色申告を検討する価値は十分にあります。
Q. 青色申告に変更するにはどうすればよいですか?
A. 青色申告をしようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業した場合は、開業の日から2か月以内)に、税務署へ青色申告承認申請書を提出すれば、その年分から青色申告ができます。あわせて複式簿記に対応した会計ソフトの導入や記帳体制の整備も進めておくと、スムーズに移行しやすくなります。切り替え初年度は不慣れな部分も多いため、月次で記帳内容を確認してもらう体制を整えておくと安心です。
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