皆様、こんにちは。税理士の菅原和望です。
「病気で働けなくなったときの保障が心配」というご相談を多くいただきます。会社員時代は当然のように受けられていた保障が、独立後にはなくなる点に気づいて初めて不安を感じる方が多い印象です。会社員と異なり、フリーランスは働けない期間の収入が途絶えやすく、事前の備えの重要性を実感される方が多いテーマです。健康なうちは意識しにくいテーマですが、突然の入院や療養が事業の継続に直結するため、早めの情報収集が安心につながります。特に一人で事業を営むフリーランスにとって、収入が途絶えるリスクへの備えは経営面でも重要な課題です。今回は、フリーランスが病気やケガ、出産の際に受け取れる給付金と、その税務上の取扱いについて解説します。
フリーランスの傷病手当・出産手当とは
会社員との違い
会社員が加入する健康保険には傷病手当金がありますが、国民健康保険には原則として傷病手当金の制度がなく、働けない期間の収入保障が手薄になりがちです。会社員であれば給与の約3分の2程度が最長1年6か月支給される制度がある一方、フリーランスにはこうした公的な収入保障が用意されていない点は大きな違いです。この違いを知らずに独立すると、いざという時に想定外の資金不足に陥る可能性があります。
出産育児一時金は利用できる
国民健康保険加入者も、出産時には出産育児一時金を受け取ることができます。出産にかかる分娩費用等の負担を軽減する目的の給付金で、一定の金額が支給される仕組みになっています。医療機関によっては制度を利用して直接支払いを行う仕組みもあり、まとまった費用を一時的に立て替える負担を軽減できます。出産予定の医療機関がこの仕組みに対応しているか、事前に確認しておくと安心です。
給付金・保険を理解しておくメリット
非課税となる給付金がある
出産育児一時金など、社会保険制度に基づく一定の給付金は非課税とされており、確定申告での収入計上は不要です。非課税の給付金を誤って売上として計上してしまうと、本来納める必要のない税金を負担することになるため、区分を正しく理解しておくことが大切です。給付金を受け取った際は、まず課税・非課税の区分を確認する習慣をつけておくとよいでしょう。
民間の就業不能保険で備えられる
傷病手当金がない分、就業不能保険や所得補償保険に加入することで、働けなくなった際の収入減少に備えることができます。事業の状況に応じて、どの程度の期間・金額の保障が必要かを試算したうえで加入を検討するとよいでしょう。毎月の固定費や生活費をもとに、必要な保障額を具体的に見積もっておくと安心です。
保険料が所得控除の対象になる場合がある
加入する保険の種類によっては、支払った保険料が生命保険料控除等の対象となり、税負担の軽減につながります。保険の種類ごとに控除の区分や上限額が異なるため、加入前に控除の対象となるかどうかを確認しておくと安心です。複数の保険に加入している場合は、控除額の上限を踏まえて全体のバランスを確認しておくとよいでしょう。
給付金受け取り時の注意点
課税・非課税の区分を確認する
給付金の種類によって課税・非課税の取扱いが異なるため、確定申告の際は事前に区分を確認しておくことが大切です。公的な給付金は非課税とされるものが多い一方、民間保険からの給付金は契約内容によって課税対象となる場合もあるため、個別に確認する必要があります。加入している保険の契約内容を一度確認し、税務上の取扱いを把握しておくと安心です。
保険金の受取人・契約形態に注意
民間保険から受け取る保険金は、契約形態によって所得区分が異なる場合があるため注意が必要です。契約者・被保険者・受取人の関係によって一時所得や雑所得など扱いが変わることがあるため、加入時に契約形態を確認しておくとよいでしょう。給付金を受け取った際は、契約内容と照らし合わせて所得区分を確認する習慣をつけておくと安心です。
まとめ
フリーランスは会社員に比べて傷病時の保障が手薄になりやすいため、民間の就業不能保険等での備えと、給付金の税務上の取扱いを正しく理解しておくことが大切です。健康なうちから保障内容を検討しておくことで、いざという時にも安心して療養に専念できる環境を整えることができます。備えがあることで、療養中も経済的な不安を最小限に抑えられます。
社会保険全般については「フリーランスの国民健康保険・国民年金、社会保険の基本を税理士が解説」、所得控除の活用は「フリーランスの確定申告で使える所得控除まとめ|社会保険料控除・生命保険料控除・医療費控除の実務」もあわせてご覧ください。
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よくある質問
Q. 国民健康保険には傷病手当金は一切ありませんか?
A. 市区町村によっては条例で独自の傷病手当金制度を設けている場合もあるため、お住まいの自治体にご確認ください。実施している自治体は限られていますが、対象となる場合は申請により給付を受けられることがあります。お住まいの自治体の窓口やホームページで、独自の制度がないか確認しておくとよいでしょう。
Q. 出産育児一時金は確定申告で申告が必要ですか?
A. 出産育児一時金は非課税のため、原則として確定申告での申告は不要です。ただし、出産にかかった医療費については医療費控除の対象となる場合があるため、あわせて確認しておくとよいでしょう。出産育児一時金を受け取った場合は、その金額を差し引いた実質負担額をもとに控除額を計算する点にも注意が必要です。
Q. 就業不能保険の保険料は経費にできますか?
A. 契約形態によりますが、事業経費ではなく生命保険料控除等の対象となるケースが一般的です。事業のための保障であっても、個人の生命保険料控除の枠内で処理されることが多い点に注意しましょう。事業と個人の保険を混同しないよう、契約内容を整理しておくと安心です。
Q. 医療費控除とあわせて考えるべきことはありますか?
A. 治療費の負担が大きい場合は医療費控除もあわせて活用できないか確認するとよいでしょう。年間の医療費が一定額を超える場合、確定申告で医療費控除を適用することで所得税・住民税の負担を軽減できます。医療費の領収書はまとめて保管しておくと、確定申告の際にまとめて集計しやすくなります。
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