令和8年度税制改正では、防衛特別所得税が新たに創設されます。本記事では、横浜市青葉区の菅原和望税理士事務所が、防衛特別所得税の創設の概要と課税対象と今後確認しておきたいポイントをわかりやすく解説します。防衛特別所得税は、既存の所得税に付加する形で課される新たな税であり、名称に「所得税」とあるとおり、所得税の枠組みを利用して徴収される点が特徴です。新たに全く別の申告手続きが設けられるわけではなく、既存の所得税制度の中に組み込まれる形で運用される点は、納税者にとって理解しやすい設計といえます。防衛力強化に係る財源確保のための税制措置は、防衛特別所得税のほか、法人税や地方税の分野でも別途措置が講じられており、所得税だけでなく複数の税目にわたる財源確保策の一部として位置づけられています。新しい税目が創設される場合、実務上の細かい取り扱いは政令や通達で追って示されることも多いため、今後の情報を注視しておくことが大切です。防衛特別所得税は令和6年度以降の税制改正議論の中で具体化が進められてきた税制であり、防衛費の増額方針とあわせて、その財源確保策の一つとして位置づけられています。
防衛特別所得税の創設の概要
防衛力強化に係る財源確保のための税制措置として、防衛特別所得税が創設されました。個人については、居住者又は非居住者に対して課される令和9年分以後の各年分の所得税に係る基準所得税額について、当分の間、防衛特別所得税が課されます。法人については、内国法人又は外国法人に対して課される令和9年1月1日以後に生ずる所得に対する所得税(利子・配当等に係るもの)に係る基準所得税額について、同様に当分の間、防衛特別所得税が課される仕組みです。「基準所得税額」は、外国税額控除等を適用しない場合の所得税額を基礎とし、附帯税の額を除いて計算されます。附帯税とは延滞税や無申告加算税など、本来の税額に付随して課される税を指すため、基準所得税額はあくまで本来の所得税本体の金額をもとに算出される点を理解しておくとよいでしょう。具体的には、非永住者以外の居住者は全ての所得に対する所得税の額、非永住者は国外源泉所得以外の所得等に対する所得税の額、非居住者は国内源泉所得に対する所得税の額を基礎とするなど、納税義務者の区分に応じて基準となる所得税額の範囲が定められています。内国法人は利子等及び配当等などに対する所得税の額、外国法人は国内源泉所得のうち利子等及び配当等などに対する所得税の額が基礎となるなど、法人についても区分に応じた取り扱いが設けられています。なお、防衛特別所得税は基準所得税額に一定の税率を乗じて計算される仕組みであるため、通常の所得税とは別に計算・納付が必要になる点に留意が必要です。
防衛特別所得税の創設が源泉徴収・年末調整の実務に与える影響
防衛特別所得税は、本来の所得税の申告・納付・還付の手続きにあわせて行われる仕組みとなっており、所得税の確定申告書を提出する場合は、その申告期限までに防衛特別所得税を所得税に併せて納付することとされています。新たな税目でありながら、申告や納付の窓口・期限は既存の所得税の枠組みをそのまま利用するため、納税者にとっては手続き自体が大幅に複雑化するわけではない点は安心材料といえます。控除しきれない源泉徴収特別税額等がある場合は、防衛特別所得税を所得税に併せて還付する取り扱いも定められています。このように、申告・納付・還付のいずれの手続きも、本来の所得税の手続きと一体で行う設計になっているため、事業者側で新たに別の申告書を用意したり、別の窓口で手続きを行ったりする必要は基本的にありません。既存の所得税の手続きの流れの中に防衛特別所得税の計算が組み込まれる形であるため、これまでの確定申告や年末調整の経験を活かしながら対応できる点も特徴の一つです。ただし、確定申告書を作成する際に防衛特別所得税の記載欄を見落とさないよう注意が必要です。特に令和9年分以降、初めて防衛特別所得税の記載が必要になる年は、例年の確定申告書とフォーマットが変わる可能性もあるため、国税庁が公表する最新の申告書様式を確認しながら作成することをお勧めします。給与所得者・個人事業主ともに、最新情報の確認が必要です。特に源泉徴収義務者である事業主の方は、給与計算システムやソフトウェアが防衛特別所得税に対応した仕様に更新されているかどうかも、令和9年に向けて確認しておくとよいでしょう。特に複数の事業所を持つ法人や、給与計算を外部に委託している事業者は、委託先のシステム対応状況についても早めに確認しておくと、令和9年の実務開始に向けて安心です。
防衛特別所得税の創設に関するよくある質問
Q. 防衛特別所得税はいつから課税されますか?
A. 個人については令和9年分以後の所得税から、法人については令和9年1月1日以後に生ずる所得に対する所得税から、それぞれ課税が開始されます。ただし、税率など細部の取り扱いについては、今後公布される法律や政令等で正式に確定する部分もあるため、国税庁などの公式発表を随時ご確認いただくことをおすすめします。適用開始時期は個人と法人で基準となる日付が異なるため、ご自身がどちらの基準で判定されるかを事前に確認しておくとよいでしょう。
Q. 給与所得者にも影響がありますか?
A. 防衛特別所得税は所得税に係る税制措置として位置づけられているため、給与所得者・個人事業主を問わず、幅広い方に影響する可能性があります。所得税の源泉徴収をすべき者は、源泉徴収税額に係る防衛特別所得税を併せて徴収し、法定納期限までに国に納付する取り扱いとなっており、所得税の年末調整をする事業者は、年末調整と併せて防衛特別所得税についても年末調整を行うこととされています。年末調整における防衛特別所得税の計算方法についても、既存の年末調整の枠組みを活用する形が想定されているため、担当者の方は例年の年末調整業務のスケジュールに沿って準備を進めることができます。給与計算を行う事業主にとっては、既存の源泉徴収の仕組みに新たな計算項目が加わる形になるため、給与計算ソフトの対応状況を早めに確認しておくことが望ましいでしょう。パートやアルバイトの方であっても、所得税の源泉徴収の対象となる収入がある場合は同様に防衛特別所得税の対象となる可能性があるため、雇用形態にかかわらず確認が必要です。
まとめ
防衛特別所得税の創設は、防衛力強化のための財源確保を目的とした「当分の間の措置」として、既に法律上の枠組みが整備されている税制です。適用開始時期や基本的な仕組みは明らかになっているものの、実務上の細かい取り扱いについては今後も情報が更新される可能性があるため、継続して確認していくことが大切です。特に税率や具体的な計算方法など、政令等で追って定められる部分については、今後の公布状況を注視しておくことをお勧めします。給与計算や確定申告の実務に直接関わる内容であるため、令和9年分の申告に向けて余裕を持って準備を進めておくことをおすすめします。特に給与計算や確定申告のシステムを利用している事業者・個人の方は、ソフトウェアのアップデート状況を早めに確認し、令和9年分の実務に備えておくことをお勧めします。令和8年度税制改正の全体像は令和8年度税制改正まとめのページでご覧いただけます。最新情報は国税庁の公式サイトでも随時公表されますので、あわせてご確認ください。
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