令和8年度税制改正では、国際課税関係についても改正が行われます。国際課税の分野はOECDなど国際的な合意に基づいて制度が設計されることが多く、日本国内の改正も世界的な租税回避対策の潮流と連動して行われる点が特徴です。各国が協調して制度を導入することで、税負担の軽い国へ利益を移転する動きを国際的に抑制する狙いがあります。デジタル化により国境を越えた事業活動が容易になった結果、伝統的な国際課税の枠組みでは対応が難しい課税逃れが問題視されるようになったことが、こうした国際協調の背景にあります。一国だけが厳格なルールを導入しても実効性が薄れてしまうため、主要国が足並みを揃えて制度を整備している点も国際課税分野ならではの特徴といえます。日本国内の税制だけを見ていても国際課税の全体像は把握しづらいため、国際的な議論の方向性も踏まえながら制度を理解していくことが求められます。本記事では、横浜市青葉区の菅原和望税理士事務所が、国際課税関係の改正の内容と実務上のポイントをわかりやすく解説します。国際課税は制度が複雑で対象範囲も限定的であるため、まずは自社が改正の対象に含まれるかどうかを確認することが最初のステップになります。制度の名称や仕組みが専門的で分かりにくいと感じる場合でも、まずは自社の海外展開の状況を整理することから始めれば、関係する制度を絞り込みやすくなります。判断に迷う場合は、海外子会社の資本関係図や取引内容を整理した上で、国際税務に詳しい税理士へ相談することをお勧めします。特に海外に複数の拠点や子会社を持つ企業グループは、今回の改正で新設・見直しされた制度のうち、どの項目が自社に適用されるかを整理したチェックリストを作成しておくと、実務上の確認漏れを防ぎやすくなります。
国際課税関係の改正の概要と主な改正項目
各国共通の法人税の最低税率を確保する制度であるグローバル・ミニマム課税への対応が進められているほか、外国子会社合算税制の見直し、外国組合員に対する課税の特例、非居住者のカジノ行為の勝金に係る一時所得の非課税措置の適用時期の見直し、特定外国法人が特定金融機関等との間で行う債券現先取引に係る利子等の非課税措置の延長、非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度の見直しなど、国際的な租税回避への対応や情報交換の充実に関する改正が幅広く行われています。これらの制度は項目ごとに対象者が大きく異なるため、自社や自身がどの制度に関係するのかを個別に確認することが実務上重要になります。なお、これらの制度の多くは適用対象となる規模や取引形態が限定されているため、中小規模の事業者であれば直接の対象とならないケースも多いですが、将来の事業拡大や海外展開を見据えて、制度の概要だけでも把握しておく価値があります。
国際課税関係の改正が海外展開企業の実務に与える影響
海外子会社を有する法人や、国際的な取引を行う法人は、改正内容を踏まえた対応が必要です。特に複数の国に子会社を展開している企業グループは、グローバル・ミニマム課税に関する情報申告など、新たに求められる事務負担についても事前に把握しておくことが望まれます。グローバル・ミニマム課税に関する情報申告は、対象となるグループ内のいずれかの会社が代表して行うことができる仕組みも設けられており、グループ全体での対応体制の整備が求められます。対象となる多国籍企業グループは限られるものの、該当する場合は各国の税務当局への情報開示が求められるため、グループ内での情報集約体制を早めに整えておくことが望ましいでしょう。情報申告の作成には各国子会社の財務情報を一定のフォーマットで集約する必要があり、準備に相応の時間がかかることが多いため、対象となる可能性のある企業は早期の準備着手をお勧めします。
国際課税関係の改正に関するよくある質問
Q. グローバル・ミニマム課税とは、どのような制度ですか?
A. 多国籍企業グループが各国で実質的に負担する税率が最低税率(15%)を下回る場合に、上乗せ課税を行う国際的な枠組みです。一定規模以上の多国籍企業グループ(具体的には、直前4事業年度のうち2以上の事業年度において総収入金額が7.5億ユーロ相当額以上であるグループなど)が対象となります。税負担の低い国・地域に利益を移転することで実効税率を引き下げる租税回避行為を防止する目的で、OECD/G20の合意に基づき各国で導入が進められている制度です。対象となる企業グループは世界的に見ても限られていますが、日本に本社を置く多国籍企業グループも対象となり得るため、グループ全体の規模を正確に把握しておくことが最初のステップとなります。
Q. 中小企業にも影響がありますか?
A. グローバル・ミニマム課税は主に大規模な多国籍企業グループを対象としており、多くの中小企業には直接的な影響は限定的です。国内のみで事業を行っている中小企業や個人事業主にとっては、当面は直接の適用対象になることは少ないと考えられますが、取引先が対象企業グループに含まれる場合は間接的な影響が生じる可能性もあります。ただし、海外子会社を有する法人や国際取引を行う事業者は、外国子会社合算税制など関連する制度の見直しの影響を受ける可能性があるため、確認が必要です。外国子会社合算税制は、税負担の軽い海外子会社に利益を留保することで租税回避を図る行為に対応するための制度で、一定の要件を満たす外国関係会社の所得を、日本の親会社の所得に合算して課税する仕組みです。特に、実体のない、いわゆるペーパーカンパニーに該当する外国関係会社については、経済活動基準を満たしていなくても合算対象になりやすいため、海外子会社の実態を整理しておくことが重要です。外国子会社合算税制の適用を受けるかどうかの判定は複雑な計算を伴うことが多いため、海外子会社をお持ちの企業は、決算のタイミングにあわせて毎期継続的に確認しておくことをお勧めします。
まとめ
国際課税関係の改正は、海外展開を行う法人にとって重要な改正です。今回あわせて見直された外国組合員に対する課税の特例や、非居住者のカジノ行為の勝金に係る一時所得の非課税措置、特定外国法人の債券現先取引に係る利子等の非課税措置なども、対象となる方にとっては実務上の取扱いが直接変わる改正です。海外投資や国際的な事業活動を行っている方は、自社・ご自身に関係する項目がないか、この機会に確認しておくことをお勧めします。適用対象は限定的であるものの、該当する場合の影響は大きくなりやすいため、心当たりのある方は早めに専門家に確認することをお勧めします。国際課税は国内税制以上に情報のアップデートが重要な分野であるため、継続的な情報収集と専門家への相談を組み合わせて対応することをおすすめします。特に国際課税の分野は各国の制度改正のタイミングも影響するため、日本国内の改正内容だけでなく、事業を展開している国・地域の税制動向にも目を配っておくことが望ましいでしょう。令和8年度税制改正の全体像は令和8年度税制改正まとめのページでご覧いただけます。改正の詳細は国税庁の公式サイトでも随時公表されますので、あわせてご確認ください。
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