令和8年度税制改正では、青色申告特別控除の見直しが行われます。個人事業主の記帳・申告実務に関わる改正です。特に簡易な帳簿で済ませてきた個人事業主にとっては、今後の記帳方法を見直すきっかけとなる改正といえます。開業から時間が経っていない方も、将来の事業拡大を見据えて記帳方法を早めに検討しておくと、収入が増えた際にも慌てず対応できます。本記事では、横浜市青葉区の菅原和望税理士事務所が、青色申告特別控除の見直しの内容と実務上のポイントをわかりやすく解説します。青色申告特別控除は所得税額を大きく左右する控除であるため、控除額そのものだけでなく、どの記帳方法を選ぶかによって受けられる控除額が変わる点を理解しておくことが重要です。控除額の差は55万円(または65万円)と10万円という大きな幅があるため、記帳方法の選択が最終的な税負担に与える影響は決して小さくありません。事業の成長にあわせて記帳方法も見直していくことが、長期的な税負担の軽減につながります。特に開業してから数年が経過し、事業規模が拡大してきたタイミングは、記帳方法を見直す良い機会となります。
青色申告特別控除の見直しの概要と対象者の限定
青色申告特別控除には、複式簿記による記帳などの要件を満たした場合の55万円・65万円の控除と、簡易な簿記の方法による10万円の控除があります。今回の改正では、この「10万円」の青色申告特別控除について、対象者から一定の高収入者を除外する見直しが行われました。従来は事業規模の大小にかかわらず、簡易な帳簿でも10万円の控除を受けられていましたが、今回の見直しにより一定以上の収入がある方には複式簿記による記帳が実質的に求められる形になります。この見直しの背景には、一定の収入規模がある事業者についてはより正確な記帳を促し、適正な申告を確保したいという狙いがあると考えられます。具体的には、前々年分の不動産所得に係る収入金額が1,000万円を超える不動産所得者、または前々年分の事業所得に係る収入金額が1,000万円を超える事業所得者が対象から除外されます。この「前々年」という基準は、その年の収入が急に増減した場合でも、2年前の実績で判定されるという点に特徴があり、直近の業績だけでなく過去の実績も踏まえて事前に見通しを立てておく必要があります。これにより、簡易な簿記による10万円の控除の適用は、前々年の収入金額が1,000万円以下の事業所得者、事業としての規模を有し前々年の収入金額が1,000万円以下の不動産所得者、事業としての規模に満たない不動産所得者、山林所得者のいずれかに該当する青色申告者に限定されることになりました。特に不動産所得については、賃貸物件の棟数や部屋数によって「事業としての規模」に該当するかどうかの判定が変わってくるため、該当性の判断に迷う場合は税理士への確認をお勧めします。あわせて、極めて高い水準の所得に対する負担の見直し、セルフメディケーション税制に係る措置の期限撤廃、通勤手当の非課税措置の見直し、公的年金等に係る雑所得の見直しなど、幅広い項目で改正が予定されています。事業を開始したばかりで収入がまだ少ない方は、当面は簡易な簿記による10万円控除の対象であり続けることが多いですが、事業拡大とともに収入が1,000万円に近づいてきた場合は、複式簿記への移行を見据えて記帳体制を準備しておくと安心です。なお、事業所得と不動産所得を両方お持ちの方は、それぞれの収入金額を合算せず、各所得の区分ごとに1,000万円の基準を満たすかどうかを判定する点にも注意が必要です。
青色申告特別控除の見直しが記帳・申告実務に与える影響
複式簿記による記帳は簡易な方法に比べて手間がかかりますが、クラウド会計ソフトを活用すれば、銀行口座やクレジットカードの取引を自動で取り込みながら複式簿記の帳簿を作成することも可能です。日々の取引が多い事業者ほど自動化のメリットを感じやすいため、記帳方法の見直しとあわせてクラウド会計の導入を検討する価値があります。クラウド会計ソフトの中には、日々の入力作業を簡略化しながら複式簿記の形式で自動的に仕訳を作成してくれるものも多く、簿記の知識に不安がある方でも比較的取り組みやすくなっています。今回の改正を機に複式簿記への移行を検討する場合は、期の途中からの切り替えよりも、新しい事業年度の開始にあわせて移行する方が、帳簿の整理がしやすい傾向があります。青色申告特別控除の実務については個人事業主の記帳・帳簿保存のポイントに関する記事もあわせてご参照ください。確定申告に向けた記帳体制の見直しを検討されている方は当事務所の確定申告サービスもご活用ください。記帳方法を複式簿記に切り替える際は、開始残高の設定や過去の取引の整理など、初年度特有の作業が発生することもあるため、余裕を持ったスケジュールで準備を進めることをお勧めします。
青色申告特別控除の見直しに関するよくある質問
Q. 青色申告特別控除を受けるための基本要件は変わりますか?
A. 複式簿記による記帳や期限内申告、e-Taxによる電子申告などの基本的な要件の枠組みは維持される見込みです。ただし、簡易な簿記による10万円控除を利用している方のうち、前々年の収入金額が事業所得・不動産所得ともに1,000万円を超える方は対象から除外されるため、該当する可能性がある方は複式簿記への切り替えを検討する必要があります。ご自身が対象になるかどうか判断がつかない場合は、前々年の確定申告書を確認し、事業所得・不動産所得それぞれの収入金額を確認することから始めるとよいでしょう。また、前々年の収入金額を確認する際は、確定申告書の控えだけでなく、決算書や青色申告決算書に記載された金額もあわせて確認しておくと、判定の精度が高まります。
Q. 白色申告から青色申告に切り替えるにはどうすればよいですか?
A. 青色申告をする年の3月15日まで(新規開業の場合は開業から2か月以内)に、青色申告承認申請書を税務署に提出する必要があります。切り替えをご検討の際は、記帳体制の整備とあわせて早めのご相談をおすすめします。青色申告承認申請書の提出が期限に間に合わなかった場合、その年は白色申告となり、青色申告特別控除を受けられなくなってしまうため、切り替えを検討する際は提出期限を必ず確認しておきましょう。特に今回の見直しで10万円控除の対象から外れる可能性がある高収入の個人事業主・不動産所得者は、55万円・65万円の控除を受けられる複式簿記への移行もあわせて検討する価値があります。複式簿記への移行には一定の準備期間が必要になることが多いため、対象になりそうな方は早めに検討を始めることをお勧めします。複式簿記への移行にあたっては、会計ソフトの導入費用や税理士への依頼費用など新たなコストが発生する場合もあるため、控除額の増加分とのバランスを踏まえて検討することが大切です。
まとめ
青色申告特別控除の見直しは、個人事業主の申告実務に関わる改正です。特に前々年の収入水準によって適用できる控除額が変わる仕組みであるため、事業が成長している個人事業主ほど、早めに記帳方法の見直しを検討しておくことが望ましいでしょう。特に不動産所得者の方は、事業的規模の判定基準(いわゆる5棟10室基準など)も踏まえたうえで、ご自身がどの区分に該当するかを早めに確認しておくとよいでしょう。令和8年度税制改正の全体像は令和8年度税制改正まとめのページでご覧いただけます。改正の詳細は国税庁の公式サイトでも随時公表されますので、あわせてご確認ください。
横浜市青葉区・都筑区・緑区の個人事業主の確定申告・顧問契約はぜひ菅原和望税理士事務所へ!
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