令和8年度税制改正では、事業承継税制の特例承継計画の提出期限に関わる見直しが行われます。事業承継税制は、後継者不足に悩む中小企業の事業継続を後押しする目的で創設された制度であり、後継者への円滑な引き継ぎを税制面から支援することで、廃業による雇用や技術の損失を防ぐという社会的な役割も担っており、提出期限の延長は、承継の準備が整わないまま特例を使えなくなる事業者を減らす狙いがあります。特に地方の中小企業では、後継者候補が見つからず承継の検討が後回しになりがちなケースも多く、計画提出の期限に余裕ができることは実務上大きな意味を持ちます。親族内に後継者がいない場合は、従業員への承継や第三者への売却(M&A)といった選択肢も含めて、早い段階から幅広く検討しておくことが望ましいでしょう。本記事では、横浜市青葉区の菅原和望税理士事務所が、事業承継税制の見直しの内容と実務上のポイントをわかりやすく解説します。特に法人版・個人版のいずれも、特例承継計画の提出と実際の承継のタイミングは別物であるという点を理解しておくことが、制度を正しく活用するための第一歩です。会社の株式を承継する法人版と、事業用資産を承継する個人版とでは、対象となる資産の範囲や適用要件が異なるため、ご自身の事業形態に応じてどちらの制度が関係するかをまず確認しましょう。特に地方では後継者不足が深刻化しており、事業承継税制の活用可否が会社の存続そのものを左右するケースも少なくないため、早期の情報収集が重要です。
ご相談の対象について
当事務所では、相続・贈与・事業承継に関するご相談は、顧問契約をいただいているお客様とそのご家族を対象にお受けしています。顧問契約のない方からの相続税・贈与税の申告のみのご依頼や、単発のご相談は承っておりません。本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。
事業承継税制の見直しの概要と特例承継計画の役割
非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例(法人版事業承継税制)は、後継者が先代経営者から非上場株式等を相続・贈与により取得した際にかかる相続税・贈与税について、一定の要件のもとで納税を猶予する制度で、現行制度で適用期限が令和9年12月末までとされていますが、特例承継計画の提出期限の延長が図られています。この制度を活用することで、多額の相続税・贈与税の納税資金を用意できずに事業承継が進まないという事態を避けやすくなり、後継者の資金負担を大きく軽減できる可能性があります。非上場株式は相続税評価額が高額になるケースも多く、納税資金の確保が承継のハードルとなりやすいため、納税猶予の特例は後継者の負担を大きく左右する重要な選択肢のひとつです。個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例(個人版事業承継税制)は、個人事業者の後継者が事業用の土地・建物・機械等を相続・贈与により取得した場合の納税を猶予する制度で、法人化していない個人事業主の事業承継においても、株式ではなく事業用資産そのものを対象として同様の納税猶予を受けられる点が特徴です。こちらについても同様に個人事業承継計画の提出期限が延長される見直しが行われました。なお、法人版と個人版のいずれについても、特例承継計画(個人事業承継計画)の提出自体は無料で行える手続きであるため、承継の実施時期が未定であっても、まずは提出しておくことで将来の選択肢を確保できます。
事業承継税制の見直しが承継計画の実務に与える影響
事業承継を検討されているオーナー経営者の方は、計画の提出期限を踏まえたスケジュール管理が欠かせません。特例承継計画は提出後に内容の変更が認められている一方、提出自体を怠ると特例の適用を受けられなくなるため、後継者が決まっていない段階であっても、まずは計画を提出しておくという進め方も検討に値します。実際に、計画提出時点では後継者候補が複数名記載されているケースもあり、その後の状況変化にあわせて記載内容を見直すことも可能です。「まだ承継の時期ではない」と先送りにしているうちに提出期限を過ぎてしまうケースも見られるため、実際の承継時期が未定であっても早めに計画だけは提出しておくという考え方も有効です。また、特例承継計画に記載した後継者が実際に承継しなかった場合でも、計画自体が無効になるわけではなく、記載内容の変更手続きを行うことで対応できるため、状況の変化を過度に心配する必要はありません。
事業承継税制の見直しに関するよくある質問
Q. 特例承継計画とは何ですか?
A. 事業承継税制(特例措置)の適用を受けるために、認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けて作成し、都道府県知事に提出する計画のことです。会社の後継者や承継時までの経営見通しなどを記載します。認定経営革新等支援機関には、税理士や商工会、金融機関などが登録されており、計画の作成にあたっては早い段階から相談しておくことでスムーズに進められます。日頃から関与している顧問税理士が認定経営革新等支援機関である場合は、会社の状況を把握したうえで計画作成のサポートを受けられるため、比較的スムーズに手続きを進めやすいというメリットがあります。計画には後継者の氏名や事業承継の予定時期、承継後5年間の事業計画の概要などを記載する必要があるため、事前に会社の将来像を整理しておくと作成がしやすくなります。後継者候補が複数いる場合や、まだ最終的な決定に至っていない場合でも、その時点での見通しをもとに計画を作成し、状況の変化に応じて後日変更届出書を提出することが可能です。特例承継計画の提出はあくまで準備段階の手続きであり、この時点で相続税や贈与税が発生するわけではないため、税負担を心配して提出を先延ばしにする必要はありません。
Q. 提出期限が延長されると何が変わりますか?
A. 特例承継計画の提出期限が延長されることで、事業承継の準備期間に余裕を持てるようになります。ただし、納税猶予の特例そのものの適用期限とは別のスケジュールとなるため、両方の期限を混同しないよう注意が必要です。特例承継計画はあくまで「入口」の手続きであり、実際に相続や贈与が発生した際には、別途、都道府県知事の認定を受けたうえで税務署への申告を行う必要があります。また、納税猶予を受けた後も、一定期間は都道府県や税務署への継続的な報告が必要になるため、承継後の事務負担についても事前に理解しておくことが大切です。報告を怠ると猶予されていた税額を一括で納付しなければならなくなることもあるため、承継後も継続的な管理体制を整えておくことが重要です。報告の頻度や必要書類は法人版・個人版で若干異なる場合があるため、納税猶予の適用を受けた後は、顧問税理士と連携しながら報告スケジュールを管理していくことをお勧めします。
まとめ
事業承継税制の見直しは、事業承継を検討するオーナー経営者にとって重要な改正です。特例承継計画の提出期限が延長されたとはいえ、後継者の選定や会社の磨き上げ、資産の整理などの承継準備そのものには相応の時間がかかります。制度の期限に関わらず、早めに顧問税理士とともに事業承継の全体像を検討しておくことが望ましいでしょう。事業承継は税務だけでなく、経営権の移譲や取引先との関係維持など多岐にわたる課題を含むため、早期の着手が円滑な承継の鍵となります。特に後継者の育成には数年単位の時間がかかることも多いため、制度の期限にかかわらず、できるだけ早い段階から後継者候補との対話を始めておくことが、円滑な事業承継の実現につながります。令和8年度税制改正の全体像は令和8年度税制改正まとめのページでご覧いただけます。改正の詳細は国税庁の公式サイトでも随時公表されますので、あわせてご確認ください。
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