令和8年度税制改正では、研究開発税制をはじめとする投資促進税制の見直しが行われます。これらの制度は法人税額から直接控除できる税額控除型が中心であり、研究開発や設備投資に積極的な企業ほど税負担軽減の効果を実感しやすい設計となっています。特に研究開発税制は、基礎研究から製品化に向けた試験研究まで幅広い活動が対象となり得るため、自社の取り組みが対象になるかどうかを一度整理してみる価値があります。本記事では、横浜市青葉区の菅原和望税理士事務所が、研究開発税制の見直しの内容と実務上のポイントをわかりやすく解説します。複数の投資促進税制が並行して見直されているため、自社の事業内容にどの制度が当てはまるかを整理して理解することが大切です。日々の研究開発活動や設備投資が、実は税制優遇の対象になっているというケースも少なくないため、まずは自社の活動内容を棚卸ししてみることをお勧めします。特に研究開発部門を持つ企業だけでなく、製造現場での改善活動や新サービスの企画といった、通常業務の延長で行われる取り組みも対象になり得るため、幅広い企業にとって確認する価値のある制度です。
研究開発税制の見直しの概要と関連する投資促進税制
研究開発税制は、法人が試験研究費を支出した場合に、その一定割合を法人税額から控除できる制度で、控除率は試験研究費の増減割合に応じて変動する仕組みになっています。新製品・新技術の開発だけでなく、既存製品の改良や新たな生産方式の開発に関する費用も対象になり得るため、製造業に限らず幅広い業種で活用の余地がある制度です。ソフトウェア開発やサービス業における新たな提供方法の開発なども対象となり得るため、自社の業種にかかわらず一度制度の対象範囲を確認してみる価値があります。特定生産性向上設備等投資促進税制(大胆な投資促進税制)は、青色申告書を提出する法人が、経済社会情勢の変化を踏まえた企業の事業活動の持続的な発展を図るための産業競争力強化法等に基づき経済産業大臣の確認を受けた生産性向上設備等を取得した場合に、即時償却または特別税額控除の適用を受けられる制度として新たに創設されました。即時償却を選択すれば取得価額を早期に全額経費化できる一方、特別税額控除を選択すれば法人税額から直接控除を受けられるため、その年の業績や税負担の状況に応じてどちらが有利かを検討することになります。あわせて、産業競争力基盤強化商品生産用資産を取得した場合の特別税額控除制度(戦略分野国内生産促進税制)、オープンイノベーション促進税制など、成長投資を後押しする各種税制について延長・拡充が行われています。これらの制度はいずれも法人税額からの控除を基本とする設計であるため、対象となる支出や取得する資産によって適用できる制度が異なる点を踏まえ、自社の投資内容にあわせて最適な制度を選択することが重要です。
研究開発税制の見直しが投資計画の実務に与える影響
研究開発投資や設備投資を計画している法人は、適用要件や控除上限を確認したうえで投資計画を検討することが重要です。特に特定生産性向上設備等投資促進税制は新設された制度であるため、対象となる設備の範囲や経済産業大臣の確認手続きなど、これまでの制度にはなかった手順を踏む必要がある点に注意が必要です。確認手続きには一定の時間を要することが想定されるため、大型の設備投資を計画している場合は、投資の実行前から準備を始めることをお勧めします。行政手続きを伴う新設制度は、申請から確認完了までのスケジュールを見誤ると投資のタイミングに間に合わなくなることもあるため、余裕を持ったスケジュール管理が欠かせません。研究開発税制と大胆な投資促進税制は、対象となる支出や資産の種類が異なるため、同一の投資であっても両方の制度の要件を同時に満たすとは限らず、どちらの制度がより有利かを個別に見極める必要があります。研究開発税制は「費用」としての試験研究費を対象とするのに対し、大胆な投資促進税制は「資産」としての設備投資を対象とする点が、両制度を区別するうえでの基本的な違いです。この違いを理解しておくことで、自社の投資が費用の増加を伴うものか、資産の取得を伴うものかに応じて、どちらの制度を優先的に検討すべきかを判断しやすくなります。あわせて賃上げ促進税制の見直し・延長もご確認ください。特に複数の投資促進税制を検討している場合は、それぞれの制度の申請・確認手続きに必要な期間も異なるため、投資の実行スケジュールとあわせて手続きのスケジュールも管理しておくことが望ましいでしょう。
研究開発税制の見直しに関するよくある質問
Q. 研究開発税制はどのような企業が対象になりますか?
A. 試験研究費を支出した法人・個人事業主が対象となる制度で、業種を問わず幅広く利用されています。ただし控除上限や控除率は法人の規模や研究開発費の増減状況によって異なるため、事前の確認が重要です。試験研究費が増加している企業ほど控除率が高くなる仕組みのため、研究開発投資を継続的に拡大している企業ほど、制度のメリットを大きく受けられる設計になっています。なお、試験研究費には人件費や原材料費、外部への委託費などが含まれる場合があるため、対象となる費用の範囲を正確に把握しておくことが、控除額を正しく計算するための第一歩となります。
Q. オープンイノベーション促進税制とはどのような制度ですか?
A. スタートアップ企業への一定の出資を行った際に、その出資額の一部を所得控除できる制度です。新規性の高い事業への投資を後押しする目的で設けられており、要件の詳細は今後の公表情報もあわせてご確認ください。出資後一定期間内に株式を売却するなど一定の要件に反する行為を行った場合は、控除を受けた金額を取り戻される(取崩し)場合があるため、長期的な視点での出資判断が求められます。自社の本業とは異なる分野のスタートアップへの出資を検討する場合は、事業上のシナジーだけでなく、税制優遇の適用可否もあわせて確認しておくとよいでしょう。出資先の選定にあたっては、税制優遇の適用要件だけでなく、出資先企業の事業計画や将来性についても十分に検討したうえで判断することが大切です。
まとめ
研究開発税制の見直しは、成長投資を行う法人にとって重要な改正です。研究開発税制をはじめとする各種投資促進税制は、国が特に重視する分野への投資を後押しする政策的な意図を持って設計されているため、今後も社会情勢に応じて見直しが続くことが予想されます。研究開発費や設備投資額は年度によって変動が大きい法人も多いため、単年度の判断だけでなく、複数年の投資計画を見据えて各制度の利用可否を検討することをお勧めします。特にどの制度を組み合わせて活用するかによって法人税負担が大きく変わることもあるため、投資の実行前に税理士へ相談し、シミュレーションを行っておくと安心です。複数の税制優遇を組み合わせて活用できるかどうかも制度ごとに異なるため、投資計画の段階でまとめて確認しておくことをおすすめします。特に研究開発活動や設備投資は事業の将来を左右する重要な意思決定であるため、税制優遇はあくまで投資判断を後押しする一つの要素として捉え、本来の事業目的を軸に検討を進めることが望ましいといえます。令和8年度税制改正の全体像は令和8年度税制改正まとめのページでご覧いただけます。改正の詳細は国税庁の公式サイトでも随時公表されますので、あわせてご確認ください。
横浜市青葉区・都筑区・緑区の個人事業主の確定申告・顧問契約はぜひ菅原和望税理士事務所へ!
令和8年度税制改正に関する関連記事
令和8年度税制改正の他の改正項目についての解説記事もあわせてご覧ください。
- NISAつみたて投資枠の拡充|令和8年度税制改正のポイントを税理士が解説
- その他消費税関係の見直し|令和8年度税制改正のポイントを税理士が解説
- ひとり親控除の見直し|令和8年度税制改正のポイントを税理士が解説
- インボイス制度の経過措置見直し|令和8年度税制改正のポイントを税理士が解説
- 事業承継税制の見直し|令和8年度税制改正のポイントを税理士が解説
- 令和8年度税制改正まとめ|所得税・法人税・相続税・消費税・地方税・国際課税のポイントを税理士が解説
- 住宅ローン控除の延長・拡充|令和8年度税制改正のポイントを税理士が解説
- 個人住民税・固定資産税の改正|令和8年度税制改正のポイントを税理士が解説
- 国際課税関係の改正|令和8年度税制改正のポイントを税理士が解説
- 地方拠点強化税制等の延長|令和8年度税制改正のポイントを税理士が解説
- 基礎控除の引き上げ|令和8年度税制改正のポイントを税理士が解説
- 少額減価償却資産の特例の見直し|令和8年度税制改正のポイントを税理士が解説
- 教育資金の一括贈与の非課税措置見直し|令和8年度税制改正のポイントを税理士が解説
- 相続時精算課税の見直し|令和8年度税制改正のポイントを税理士が解説
- 給与所得控除の見直し|令和8年度税制改正のポイントを税理士が解説
- 賃上げ促進税制の見直し・延長|令和8年度税制改正のポイントを税理士が解説
- 防衛特別所得税の創設|令和8年度税制改正のポイントを税理士が解説
- 青色申告特別控除の見直し|令和8年度税制改正のポイントを税理士が解説

免責事項
本記事は、掲載時点の法令等に基づく一般的な情報提供を目的としたものであり、その内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。法令の改正や個別のご事情により取扱いが異なる場合がございますので、実際のご判断にあたっては必ず専門家にご確認くださいますようお願いいたします。
また、本記事の内容および記事で取り上げたテーマに関するご質問・ご相談・ご意見・お問い合わせ等はお受けしておりません。本記事のご利用により生じたいかなる損害につきましても、当事務所は一切の責任を負いかねます。何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。
