皆様、こんにちは。税理士の菅原和望です。
法人化を検討する際に見落とされがちなのが、社会保険の変化です。今回は、法人化により社会保険がどのように変わるのか、個人事業主時代との違いを横浜市青葉区・都筑区の税理士が解説します。
個人事業主の社会保険、法人の社会保険の違い
個人事業主は原則として国民健康保険・国民年金に加入しますが、法人化すると代表者一人の会社でも原則として健康保険・厚生年金保険(社会保険)への加入が義務となります。社会保険は会社と本人が保険料を折半するため、会社の負担が新たに発生する点が個人事業主との大きな違いです。また従業員を一人でも雇用する場合は、代表者だけでなく従業員分の社会保険にも加入する義務が生じるため、雇用計画も踏まえて負担額を見積もっておく必要があります。
社会保険料はどのくらい変わるか
社会保険料は役員報酬の額に応じて決まり、健康保険・厚生年金を合わせた負担率はおおむね30%程度(会社と本人で折半、それぞれ15%程度)です。例えば役員報酬を月30万円に設定すると、会社負担・本人負担それぞれ月4万円台後半程度の保険料が発生する計算になります。国民健康保険・国民年金と比べて、法人の社会保険は将来受け取る年金額が増える一方、会社負担分のコストが増える点に注意が必要です。なお社会保険料は都道府県ごとに保険料率がわずかに異なるほか、40歳以上になると介護保険料も加わるため、代表者や役員の年齢によって負担額が変動する点もあわせて確認しておきたいポイントです。
社会保険加入によるメリット
- 厚生年金により将来の年金受給額が増える
- 健康保険の傷病手当金・出産手当金など給付が充実する
- 家族(被扶養者)の保険料負担がなくなる場合がある
- 従業員を雇う際、社会保険完備であることが採用面で有利になる
社会保険料の負担は増えますが、その分将来の保障が手厚くなる側面もあります。特に病気やケガで長期間働けなくなった場合の傷病手当金は国民健康保険にはない給付であるため、個人事業主から法人化する経営者にとって心理的な安心材料になることが多いです。
役員報酬と社会保険料のバランスの取り方
役員報酬を高く設定すると社会保険料の負担も比例して増えるため、法人の利益と役員個人の生活費、将来の年金額を踏まえたバランスの取れた設定が重要です。特に設立初年度は利益の見通しが立ちにくいため、低めの役員報酬でスタートし、翌事業年度以降に業績を見ながら見直すという進め方も選択肢の一つです。
社会保険の実務手続きの流れ
法人化後、役員報酬の支払いを開始する場合は、会社設立から5日以内を目安に年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険新規適用届」を提出する必要があります。あわせて「被保険者資格取得届」も提出し、役員本人の保険証が発行されます。これらの手続きが遅れると、保険証が使えない期間が生じる可能性があるため、設立後すぐに対応することが重要です。
健康保険の給付内容の違いも確認しておく
国民健康保険には出産手当金や傷病手当金といった給付制度がありませんが、法人の健康保険(協会けんぽ等)にはこれらの給付が用意されています。病気やケガで働けなくなった場合の生活保障としても、法人の社会保険は個人事業主時代より手厚くなる点は、負担増を検討する際の重要な材料になります。
年金事務所への相談も活用する
社会保険の加入手続きに不安がある場合は、管轄の年金事務所へ直接相談することも可能です。当事務所では、社会保険労務士と連携しながら加入手続きをサポートする体制も整えています。届出が遅れると遡って保険料の徴収が発生する場合もあるため、会社設立と同時に加入手続きのスケジュールを組んでおくことをおすすめします。
法人化前後で年金額はどう変わるか
個人事業主が加入する国民年金は、原則65歳から受け取れる年金額が一律で決まっているのに対し、法人化後に加入する厚生年金は、支払った保険料の額(役員報酬の水準)に応じて将来の年金額が増える仕組みになっています。そのため、役員報酬を一定額以上に設定して厚生年金に長く加入することで、老後に受け取れる年金額を国民年金だけの場合より手厚くすることができます。一方で、目先の保険料負担が重くなる点も踏まえ、小規模企業共済やiDeCoなど他の老後資金準備の手段と組み合わせて検討することをおすすめします。
家族を役員・従業員にする場合の社会保険の注意点
法人化後、配偶者や家族を役員や従業員として登用する場合、その家族にも社会保険への加入義務が生じる可能性があります。特に配偶者を役員にして役員報酬を支払う場合、一定額以上になると配偶者自身が社会保険の被保険者となり、それまで代表者の被扶養者として保険料負担がなかった状態から、新たに保険料が発生する状態に変わることがあります。家族を役員・従業員にする際は、役員報酬の金額設定によって世帯全体の社会保険料負担がどう変化するかを事前にシミュレーションしておくことが大切です。
よくあるご質問
Q. 代表者一人の会社でも社会保険に加入する必要がありますか?
A. はい。代表者一人だけの会社でも、役員報酬を受け取っている場合は原則として社会保険への加入が義務となります。役員報酬が0円の場合は加入義務が生じないこともありますが、実務上は例外的な扱いとなるため事前に確認が必要です。役員報酬を0円に設定するケースでは、金融機関からの融資審査や取引先への説明で不利になることもあるため、慎重に検討することをおすすめします。
Q. 社会保険料はいつから発生しますか?
A. 会社設立後、役員報酬の支払いを開始した時点から社会保険への加入手続きが必要になります。設立日からできるだけ早く年金事務所への届出を行う必要があるため、設立時に合わせて準備しておくことをおすすめします。届出に必要な書類は年金事務所のウェブサイトで確認できますが、記入内容に不安がある場合は社会保険労務士に相談すると手続きがスムーズです。
Q. 社会保険料を抑える方法はありますか?
A. 役員報酬の設定額によって社会保険料は変動します。ただし、役員報酬を極端に低く設定すると生活費の確保や融資審査に影響することもあるため、税負担と社会保険料の両方を踏まえたバランスの良い設定が重要です。当事務所では、複数の役員報酬パターンで社会保険料と法人税・所得税をシミュレーションし、総合的に最も有利な設定をご提案しています。
法人化後に社会保険料の負担を抑える工夫
社会保険料は役員報酬の額に比例して増えるため、負担を抑えたい場合は役員報酬の設定を工夫することが考えられます。例えば役員報酬を一定額に抑え、法人の利益として残した部分を将来の退職金として積み立てる方法や、生命保険や小規模企業共済を活用して法人・個人それぞれで税負担と将来の備えを両立させる方法があります。ただし役員報酬を過度に低く抑えると、金融機関からの融資審査や本人の生活費確保に影響することもあるため、税負担・社会保険料・生活資金のバランスを踏まえた設定が重要です。
まとめ 税理士からのアドバイス
法人化により社会保険は個人事業主時代と大きく変わり、会社負担分のコストが新たに発生します。
社会保険や税金に関する詳しい情報は、国税庁の公式サイトでもご確認いただけます。
会社設立・法人化に関する関連記事
会社設立・法人化に関するテーマ別の解説記事もあわせてご覧ください。
- 個人事業主の法人化タイミング完全ガイド|年収の目安を税理士が解説
- 法人化のメリット・デメリット|個人事業主との違いを税理士が比較
- 会社設立の流れと必要な手続き|株式会社・合同会社の違いを解説
- 会社設立にかかる費用|定款作成から登記までの内訳を解説
- 法人化で消費税はどう変わる?インボイス制度との関係を解説
- 役員報酬の決め方|法人化後の税金対策を税理士が解説
- 資本金はいくらにすべき?会社設立時の資本金の考え方を解説
- 会社設立後に必要な税務署への届出書類まとめ
- 法人化のタイミングで失敗しないためのチェックリスト
- 一人社長(マイクロ法人)のメリット・デメリットを税理士が解説
- 法人化すると社会保険料はいくら変わる?シミュレーションで解説
- 会社設立時の決算期はいつにすべきか|税理士が選び方を解説
- 個人事業と法人の税率の違い|法人化で得する年収ラインを解説
- 法人化後の会計・経理はどう変わる?個人事業主との違いを解説
- 会社設立で顧問税理士は必要?依頼するメリットとタイミングを解説
- 法人化のデメリット、事務負担・コストの増加を税理士が解説
- 会社設立時の許認可・許可はどう確認する?業種別の注意点を解説
- 法人化後の退職金・小規模企業共済の活用法を税理士が解説
- 個人事業主から法人化した後の屋号・取引先への案内方法を解説
免責事項
本記事は、掲載時点の法令等に基づく一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する税務上の判断や助言を行うものではありません。制度は改正されることがありますので、実際の手続きの際は最新の情報をご確認ください。記事の内容に関するご質問や、記事の内容についてのスポットでのご相談はお受けしておりません。顧問契約をご検討の方には、初回無料の面談を行っています。本記事の内容を利用したことにより生じた損害について、当事務所は一切の責任を負いません。
