皆様、こんにちは。税理士の菅原和望です。
法人化を検討する方から最も多くいただく質問が「社会保険料はいくらになるのか」です。この記事では、役員報酬の金額別に健康保険・厚生年金の保険料を令和8年度の料率(協会けんぽ神奈川県)で計算した早見表を示し、個人事業主時代の国民健康保険・国民年金(横浜市の令和8年度料率)と比較します。横浜市青葉区・都筑区で法人化のご相談を受けている税理士が解説します。
この記事の結論(先に3行で)
- 法人の社会保険料は役員報酬のおよそ28.5%(40〜64歳は約30%)。会社と本人で半分ずつ負担しますが、一人社長なら実質すべて自分の負担です。
- 役員報酬月30万円なら年間約102万〜108万円。個人事業で所得500万円の方の国保+国民年金(約79万〜93万円)より増えるのが普通です。
- それでも法人化が有利になるのは、会社負担分が損金になる・家族を扶養に入れられる・厚生年金で将来の年金が増えるから。保険料だけでなく税金と年金を合わせて判断します。
法人の社会保険料の計算方法|役員報酬×約30%
法人を設立して役員報酬を受け取ると、代表者1人の会社でも健康保険と厚生年金に加入します。保険料は役員報酬を等級に当てはめた「標準報酬月額」に料率を掛けて計算し、会社と本人が半分ずつ負担します。令和8年度(2026年度)の料率は次のとおりです。
| 保険の種類 | 料率(会社・本人合計) | 備考 |
|---|---|---|
| 健康保険(協会けんぽ・神奈川県) | 9.92%+子ども・子育て支援金0.23%=10.15% | 都道府県ごとに異なる。東京都は9.85%+0.23%。支援金は令和8年4月分から |
| 介護保険(40〜64歳のみ) | 1.62% | 全国一律 |
| 厚生年金 | 18.3% | 全国一律。標準報酬月額の上限は65万円 |
| 合計 | 40歳未満 28.45%/40〜64歳 30.07% | このうち半分が本人の給与から天引き |
このほか、労災保険(役員は原則対象外)と雇用保険(役員は原則加入しない)があるため、一人社長の場合は上の2〜3種類が社会保険料のすべてです。
役員報酬別 社会保険料の早見表【令和8年度・神奈川県】
月額の役員報酬ごとに、標準報酬月額と保険料(会社負担+本人負担の合計)をまとめました。賞与を支給しない前提の年額です。
| 役員報酬(月額) | 標準報酬月額 | 月額保険料(40歳未満) | うち本人負担 | 年額(40歳未満) | 年額(40〜64歳) |
|---|---|---|---|---|---|
| 20万円 | 20万円 | 56,900円 | 28,450円 | 約68万円 | 約72万円 |
| 25万円 | 26万円 | 73,970円 | 36,985円 | 約89万円 | 約94万円 |
| 30万円 | 30万円 | 85,350円 | 42,675円 | 約102万円 | 約108万円 |
| 40万円 | 41万円 | 116,645円 | 58,322円 | 約140万円 | 約148万円 |
| 50万円 | 50万円 | 142,250円 | 71,125円 | 約171万円 | 約180万円 |
| 60万円 | 59万円 | 167,855円 | 83,927円 | 約201万円 | 約213万円 |
※協会けんぽ神奈川支部の令和8年度料率(健康保険9.92%+支援金0.23%、介護1.62%、厚生年金18.3%)で当事務所が試算。端数処理や等級の境目で実際の金額とは数百円単位の差が出ます。健康保険組合に加入する場合や、本店が他県の場合は料率が異なります。
月額の役員報酬が63万5千円以上になると厚生年金の保険料は上限(標準報酬月額65万円)で頭打ちになり、健康保険は139万円まで上がり続けます。賞与を支給する場合は、賞与にも同じ料率(厚生年金は1回150万円、健康保険は年度累計573万円が上限)がかかります。
個人事業主の国民健康保険・国民年金はいくらか【横浜市・令和8年度】
比較のために、個人事業主が払う国民健康保険料と国民年金保険料を横浜市の令和8年度料率で試算します。国民健康保険料は前年の所得(収入−経費−43万円)に所得割率を掛け、均等割を足して計算し、上限(賦課限度額)があります。
| 事業所得(収入−経費) | 国民健康保険(40歳未満) | 国民健康保険(40〜64歳) | 国民年金(年額) | 合計(40〜64歳) |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 約35万円 | 約44万円 | 215,040円 | 約65万円 |
| 500万円 | 約57万円 | 約72万円 | 215,040円 | 約93万円 |
| 800万円 | 約91万円 | 約108万円 | 215,040円 | 約129万円 |
| 1,200万円以上 | 約96万円(上限) | 約113万円(上限) | 215,040円 | 約135万円 |
※横浜市の令和8年度料率(医療分 所得割8.33%・均等割40,870円・限度額67万円、支援分 2.62%・13,380円・26万円、介護分 2.84%・16,200円・17万円、令和8年度から新設された子ども・子育て支援納付金分 0.34%・1,770円・3万円)、国民年金は令和8年度の月額17,920円で試算。単身・他に所得なしの前提。家族が多いほど均等割が増えます。
法人化で社会保険料はいくら増えるか|比較の具体例
例:事業所得500万円の個人事業主(45歳・単身)が法人化し、役員報酬を月30万円(年360万円)にした場合
- 個人事業主時代:国民健康保険 約72万円+国民年金 約21.5万円=約93万円
- 法人化後:健康保険・介護・厚生年金 約108万円(会社負担54万円+本人負担54万円)
- 差額:年間約15万円の増加。ただし会社負担分54万円は法人の損金になり、本人負担分54万円は社会保険料控除で所得から引けます
役員報酬を月20万円に下げれば保険料は約72万円となり、個人事業主時代より減ります。一方で、役員報酬を下げた分は法人に利益として残り法人税がかかるため、社会保険料・所得税・住民税・法人税の合計で比較しないと正しい判断はできません。当事務所では、複数の役員報酬パターンでこの合計額を試算してからご提案しています。
保険料が増えても法人化が有利になる3つの理由
- 会社負担分は全額が損金:役員報酬30万円のケースなら年54万円が法人の経費になり、法人税等(実効税率約23〜30%)を減らします。
- 家族を被扶養者にできる:配偶者や子どもの年収が一定以下なら、追加の保険料なしで健康保険に入れ、配偶者は国民年金第3号被保険者として保険料負担なしで年金加入期間になります。国民健康保険には扶養の仕組みがなく、家族の人数分の均等割がかかります。
- 将来の年金が増える:国民年金だけなら老齢基礎年金(満額で年80万円台前半)のみですが、厚生年金に加入すれば加入期間と報酬に応じた老齢厚生年金が上乗せされます。役員報酬30万円で20年加入すると、年およそ40万円前後の上乗せが目安です。
シミュレーションで見落としやすいポイント
- 賞与:役員賞与は事前確定届出給与の届出をすれば損金にできますが、賞与にも社会保険料がかかります。年間の総支給額で計算します。
- 複数の会社の役員を兼務:それぞれの会社の報酬を合算して標準報酬を決め、保険料を按分します。会社員のまま副業で法人を作る場合も同じです。
- 料率は毎年変わる:協会けんぽの健康保険料率は都道府県ごとに毎年3月分から見直されます。数年前の料率で試算すると実際とずれます。
- 介護保険料(40〜64歳):代表者が40歳になった月から1.62%が加わります。
- 役員報酬は期中に変えられない:定期同額給与のルールにより、原則として事業年度の開始から3か月以内に決めた金額を1年間続けます。社会保険料もその金額で1年間固定されるため、設立時の設定が重要です。
よくあるご質問
Q. 法人化すると社会保険料は必ず増えますか?
A. 役員報酬をいくらにするかで決まります。個人事業の所得と同じ水準の役員報酬にすると多くの場合は増えますが、役員報酬を月20万円前後に抑えれば国保+国民年金より少なくなることもあります。ただし、極端に低い役員報酬は生活費の確保や融資審査に影響するため、税金とのバランスで決めます。
Q. 社会保険料の会社負担分は税金の負担を減らせますか?
A. はい。会社が負担する社会保険料は法人の経費(損金)になり、法人税等を減らします。本人負担分も社会保険料控除として所得税・住民税の計算で全額差し引けます。
Q. 家族を社会保険の扶養に入れることはできますか?
A. 年収などの条件を満たす家族は、保険料の追加負担なく健康保険の被扶養者になれます。配偶者は国民年金第3号被保険者にもなれます。国民健康保険には扶養の概念がないため、家族が多いほど法人化のメリットは大きくなります。
Q. 一人社長でも社会保険の加入は義務ですか?
A. 役員報酬を支払う法人は、代表者1人でも健康保険・厚生年金の強制適用事業所です。設立から5日以内に年金事務所へ新規適用届を提出します。役員報酬が0円の間は加入できません。
まとめ 税理士からのアドバイス
法人化後の社会保険料は「役員報酬×約30%」でおおよそ見積もれますが、損得は社会保険料だけでは決まりません。法人税・所得税・住民税・消費税と、将来の年金、家族の扶養まで含めた合計額で比較してはじめて、役員報酬の最適な金額が見えてきます。当事務所では、個人事業の申告書をもとに役員報酬3パターンの試算を無料面談で行っています。横浜市青葉区・市が尾駅徒歩2分、オンライン面談にも対応しています。お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
法人化と会社設立の全体像は独立開業・会社設立の税務 完全ガイド、サービス内容は会社設立支援のページをご覧ください。
参考資料(一次情報)
- 全国健康保険協会 令和8年度 都道府県単位保険料率
- 日本年金機構 国民年金保険料(令和8年度 月額17,920円)
- 横浜市 国民健康保険料の料率(令和8年度)
- 国税庁 No.5211 役員に対する給与(定期同額給与・事前確定届出給与)
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