皆様、こんにちは。税理士の菅原和望です。
このページは、飲食店(個人経営のレストラン・カフェ・居酒屋・テイクアウト専門店など)の税務について、開業手続きから確定申告・経費・軽減税率と消費税・インボイス・人件費と社会保険・税務調査・法人化・閉店まで、当事務所の飲食店向けコラム全体を1枚にまとめた総合ガイドです。はじめて税理士に相談する方は、まずこのページで全体像をつかみ、気になるテーマの詳細記事へ進んでください。
この記事の結論(先に3行で)
- 飲食店の税務は「現金」「税率」「人」の3つで差がつきます。レジ締めと売上記録を毎日残す仕組みが、税務調査対策にも資金繰りにも効きます。
- 消費税は軽減税率の判定(店内10%・持ち帰り8%)× 簡易課税の事業区分(店内飲食は第4種60%、持ち帰りの製造販売は第3種70%)× インボイス(2割特例・3割特例・経過措置)を1つの表で押さえると迷いません。
- アルバイトを使うなら、社会保険・雇用保険の加入基準と「年収の壁」を採用前に説明し、法人化の判断も社会保険料込みで試算します。
飲食店の税務が他業種と違う3つの点
- 現金商売である。売上の一部が現金で入り、仕入も現金払いが混ざります。税務署は飲食店を「売上除外が起きやすい業種」として見ており、レジ記録・予約台帳・仕入と売上の整合性が調査の中心になります。
- 1つの店で税率が2つある。店内飲食は10%、持ち帰り・出前は8%です。同じ商品でも注文時点の意思表示で税率が変わり、簡易課税の事業区分まで変わります。
- 人件費の比率が高く、短時間労働者が多い。アルバイト・パートの社会保険・雇用保険の適用、扶養の範囲、賄いの扱い、深夜割増など、労務と税務が重なる論点が日常的に発生します。
開業時の手続き|営業許可・開業届・青色申告承認申請
保健所の飲食店営業許可(食品衛生責任者の設置を含む)と並行して、税務署への届出を進めます。
| 届出 | 提出期限 | ポイント |
|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書(開業届) | 開業した年分の所得税の確定申告期限まで(令和8年1月1日以後の開業から。従来は開業日から1か月以内) | 屋号口座の開設・融資・補助金で控えを求められる |
| 所得税の青色申告承認申請書 | 開業日から2か月以内(1月1日〜15日の開業はその年の3月15日まで) | 遅れるとその年は白色申告。開業届と同時に提出するのが確実 |
| 青色事業専従者給与に関する届出書 | その年の3月15日まで(1月16日以後の開業は2か月以内) | 配偶者・家族に給与を払う場合 |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 開設から1か月以内 | アルバイトを1人でも雇えば必要 |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 随時 | 常時10人未満なら源泉税の納付を年2回(7月10日・1月20日)にできる |
開業前に支払った内装の打ち合わせ費用、チラシ、研修費などは開業費(繰延資産)として、開業後に任意のタイミングで経費にできます。領収書は開業前からすべて保管してください。
関連記事:飲食店開業時の税務手続きまとめ|開業届・青色申告承認申請書を解説/飲食店の資金繰り対策|赤字を防ぐポイントと資金調達方法を解説
確定申告|白色申告と青色申告、個人事業税
専業で飲食店を営む方には青色申告をおすすめします。複式簿記で記帳し、e-Taxで申告すれば最大65万円の青色申告特別控除が受けられ、開業初年度の赤字は翌年以後3年間繰り越せます。令和9年分(2027年分)以後は、優良な電子帳簿を保存すると最大75万円になる一方、書面申告の控除は10万円が上限になり、前々年の収入が1,000万円を超える方が簡易な記帳のままだと10万円控除も受けられません(国税庁「令和9年分から青色申告特別控除はどう変わる?」)。
飲食店業は個人事業税の第1種事業にあたり、事業所得から事業主控除290万円を差し引いた額に5%の個人事業税がかかります(8月に納税通知)。所得税・住民税とは別に資金を用意しておきましょう。
関連記事:飲食店の確定申告ガイド|個人事業主が知っておきたい税務手続きを税理士が解説/飲食店は白色申告と青色申告どちらが得か|65万円控除のメリットを解説
経費と設備投資|食材費・水道光熱費・厨房機器・内装
| 経費の種類 | 主な科目 | 注意点 |
|---|---|---|
| 食材・飲料の仕入 | 仕入高 | 月末の在庫は棚卸して翌月へ。廃棄ロスは記録を残す |
| 家賃・共益費 | 地代家賃 | 礼金・更新料は繰延資産、敷金・保証金は資産(返還されない部分は償却) |
| 水道光熱費・通信費 | 水道光熱費・通信費 | 自宅兼店舗は床面積・使用時間で按分 |
| 厨房機器(冷蔵庫・製氷機・オーブン) | 器具備品(減価償却) | 10万円以上は原則減価償却。青色申告なら40万円未満(令和8年4月1日以後取得。それ以前は30万円未満)を年300万円まで一括経費 |
| 内装工事 | 建物附属設備・建物(減価償却) | 修繕費か資本的支出かの判断が必要。賃借店舗の内装は耐用年数の見積りに注意 |
| グルメサイト掲載料・SNS広告 | 広告宣伝費 | 年払いは期間按分 |
| 従業員の賄い | 福利厚生費/給与 | 従業員が食材費の半分以上を負担し、店の負担が月3,500円(税抜)以下なら給与課税なし。要件外は給与扱い |
| デリバリーアプリ・キャッシュレス決済の手数料 | 支払手数料 | 売上は手数料控除前の総額で計上し、手数料を別に経費にする |
少額減価償却資産の特例は中小企業庁のパンフレットをご参照ください。
関連記事:飲食店の経費と設備投資|食材費・水道光熱費・厨房機器の減価償却を解説/飲食店におすすめの会計ソフト|POSレジ連携と記帳のポイントを解説
消費税|軽減税率・簡易課税の事業区分・インボイスを1つの表で
飲食店の消費税は、次の3つの制度が同時に絡みます。まず全体像を表で整理します。
| 販売形態 | 適用税率 | 簡易課税の事業区分(みなし仕入率) |
|---|---|---|
| 店内飲食(テーブル・椅子など飲食設備で提供) | 10% | 第4種事業(60%) |
| 持ち帰り(テイクアウト)・出前(宅配)で、自店で調理したもの | 8% | 第3種事業(製造小売、70%) |
| 仕入れた飲料・菓子などをそのまま販売 | 8%(酒類は10%) | 第2種事業(小売、80%) |
| ケータリング・出張料理(調理・配膳を伴う) | 10% | 第4種事業(60%) |
軽減税率の判定は「注文時点」
店内飲食か持ち帰りかは、注文時にお客様が選んだ内容で判定します。持ち帰りで会計した後に店内で食べ始めても、原則として税率は変わりません。レジの税率区分の設定、レシートへの税率ごとの記載、税率別の売上集計が、申告の正確さとインボイス対応の両方の土台になります(国税庁 軽減税率制度)。
簡易課税か原則課税か
基準期間(個人は前々年)の課税売上高が5,000万円以下なら、届出により簡易課税を選べます。店内飲食が中心なら第4種(60%)ですが、持ち帰り販売を併営している場合は事業区分ごとに売上を分けて記帳する必要があります(国税庁 No.6509)。原価率の高い業態(焼肉・寿司など)や、厨房機器・内装の大きな投資をする年は原則課税が有利になることがあります。簡易課税は選択後2年間は原則変更できず、届出は適用したい年の前年末までです(国税庁 No.6505)。
インボイス|飲食店は「簡易インボイス」でよい
お客様が個人消費者中心ならインボイス登録は必須ではありませんが、法人の宴会・接待利用、仕出し・弁当の法人納品がある店では、取引先が仕入税額控除を受けるために登録を求められます。飲食店業は宛名を省略した適格簡易請求書(簡易インボイス)で足り、記載事項は①発行者の氏名・名称と登録番号、②取引年月日、③取引内容(軽減税率対象の旨)、④税率ごとに区分した対価の額、⑤税率ごとの消費税額等または適用税率です。
免税事業者から登録した個人事業者は、納税額を売上税額の2割にできる2割特例が令和8年分まで、令和8年度税制改正で設けられた3割特例が令和9年分・令和10年分に使えます(基準期間の課税売上高1,000万円以下の個人事業者が対象)。また、登録していない仕入先(個人の生産者など)からの仕入は、経過措置で令和8年10月〜令和10年9月は70%、その後50%・30%と段階的に控除割合が下がります(国税庁 令和8年度税制改正特集)。
関連記事:飲食店の軽減税率|店内飲食とテイクアウトの税率区分を解説/飲食店の消費税申告|簡易課税と原則課税どちらが得かを解説/飲食店とインボイス制度|仕入税額控除と対応のポイントを解説
人件費と社会保険|アルバイト・パートの加入基準と年収の壁
アルバイトを1人でも雇えば労災保険に加入し、週の所定労働時間20時間以上などの要件を満たせば雇用保険(昼間学生は原則対象外)の手続きが必要です。健康保険・厚生年金は、法人なら要件を満たすパートも対象ですが、個人経営の飲食店は現在は常時5人以上でも強制適用ではありません(任意適用は可能)。ただし年金制度改正により、令和11年(2029年)10月から常時5人以上の個人事業所は業種にかかわらず適用対象になります(既存の事業所には経過措置があります)。法人化を考えるときは、この社会保険料の事業主負担(給与の15%前後)を必ず織り込んでください。
扶養の範囲で働きたい従業員には、採用時に「年収の壁」を説明しておくと後のトラブルを防げます。令和8年度税制改正で基礎控除と給与所得控除が引き上げられ、令和8年分・令和9年分は、配偶者控除・扶養控除の対象になる給与収入の目安が136万円以下、本人に所得税がかかり始める目安が178万円です(財務省 令和8年度税制改正の大綱)。社会保険の扶養は年収130万円(19歳以上23歳未満は150万円)が目安で、税の壁とは別に判定します。
深夜(22時〜翌5時)の勤務には25%以上の割増賃金が必要です。シフト表と実際の勤務記録、給与計算が一致しているかは税務調査でも労働基準監督署の調査でも確認されます。
関連記事:飲食店の人件費と社会保険|アルバイト・パート雇用の注意点を解説
税務調査|現金商売で見られるポイント
飲食店の税務調査では、レジ記録と現金・キャッシュレス入金額の一致、予約台帳・伝票と売上計上時期、仕入量と売上の整合性(原価率の異常)、棚卸と廃棄ロス、家族への給与、賄い、タイムカードと給与の照合が中心に確認されます。無予告で来店して現況を確認する調査もあります。
対策は特別なことではなく、毎日のレジ締めで現金過不足を記録する、POSレジとクラウド会計を連携して売上を自動で取り込む、レシート・納品書・廃棄記録を7年間保存する、の3つです。申告漏れが見つかった場合は過少申告加算税(10%・15%)、無申告なら無申告加算税(15%〜30%)、意図的な隠ぺいと認定されれば重加算税(35%・40%)と延滞税がかかります。
関連記事:飲食店の税務調査で気をつけたいポイント|現金商売の注意点を解説
法人化のタイミング|所得800万円の目安と営業許可の取り直し
課税所得がおおむね800万円前後を継続して超えるようになると、所得税(最高45%の累進課税)と法人税(中小法人は所得800万円以下の部分15%、超える部分23.2%)の差から法人化を検討する場面が出てきます。ただし法人化すると役員本人の社会保険加入が必須になり、赤字でも法人住民税の均等割(年7万円程度から)がかかります。資本金1,000万円未満で設立すれば原則として最長2事業年度は消費税が免税ですが、インボイス登録をすると免税にはなりません。
飲食店特有の注意点として、飲食店営業許可は個人から法人へ引き継げません。法人名義で保健所に新規申請し、食品衛生責任者を選任し直す必要があるため、営業に空白が出ないよう法人設立のスケジュールと合わせて計画します。
関連記事:飲食店は法人化すべき?個人事業主との違いを税理士が比較/会社設立支援
閉店・廃業|届出と在庫・設備の処理
閉店するときは、税務署へ廃業届・青色申告の取りやめ届出書、従業員がいれば給与支払事務所等の廃止届出書(1か月以内)、課税事業者なら消費税の事業廃止届出書を提出し、都道府県税事務所にも事業廃止の申告をします。残った食材・酒類を自家消費したり無償で譲ると通常の販売価格相当額を売上に計上し、厨房設備を売却すれば譲渡所得(年間50万円の特別控除あり)、廃棄すれば未償却残高を除却損にします。廃業後に入金した売掛金も廃業年の所得です。帳簿は廃業後も7年間保存してください。
年間スケジュール|飲食店の税務カレンダー
| 時期 | やること |
|---|---|
| 1月 | 前年分の帳簿を締める。法定調書・給与支払報告書・償却資産申告(1月31日まで)。源泉税の納期の特例分の納付(1月20日まで) |
| 2月16日〜3月15日 | 所得税の確定申告・納付。青色申告承認申請の期限 |
| 3月31日 | 個人事業者の消費税の申告・納付 |
| 6月 | 住民税の通知。労働保険の年度更新(6月1日〜7月10日) |
| 7月 | 源泉税の納期の特例分の納付(7月10日まで)。所得税の予定納税(第1期) |
| 8月 | 個人事業税の通知(第1期) |
| 11月 | 所得税の予定納税(第2期)。個人事業税(第2期) |
| 12月 | 年末調整。翌年の消費税の課税方式(簡易課税の選択・不適用)の届出は12月31日まで。年末の棚卸の準備 |
よくあるご質問
テイクアウトと店内飲食の両方があります。レジはどう設定すればよいですか
商品ごとではなく「提供方法」で税率が決まるため、同じ商品に8%と10%の両方を設定できるレジ(POS)が必要です。会計時に店内か持ち帰りかを選んでから金額を確定し、レシートに税率ごとの合計額を印字する設定にしてください。簡易課税を選んでいる場合は、この区分がそのまま事業区分(第3種・第4種)の集計になります。
個人のお客様が中心です。インボイス登録は必要ですか
必須ではありません。ただし、法人の宴会や接待、弁当・仕出しの法人納品があると、取引先から登録を求められることがあります。登録する場合は2割特例・3割特例で納税額を抑えられますので、取引先の構成を見て判断してください。
アルバイトが「扶養内で働きたい」と言っています。いくらまでですか
令和8年分・令和9年分の税の目安は、親や配偶者の扶養に入れる給与収入136万円以下、本人に所得税がかかり始めるのが178万円です。社会保険の扶養は年収130万円(19〜22歳は150万円)が目安で、こちらは交通費も含めて判定するなど基準が異なります。本人の希望を聞いたうえで、シフトの上限を月単位で管理すると管理しやすくなります。
現金売上を少なく申告している店があると聞きます。調査ではどうやってわかるのですか
仕入量(食材・酒類・割り箸・おしぼりなど)から推計した売上と申告額の差、予約台帳や口コミサイトの来店数、キャッシュレス比率の不自然な高さなどから把握されます。売上除外は重加算税の対象です。毎日のレジ締めと記録を続けることが、結果として一番の防御になります。
顧問契約をしなくても、確定申告だけ依頼できますか
可能です。料金表に確定申告のみの料金を掲載しています。ご自身で記帳される場合と、領収書をお預かりして記帳からお任せいただく場合で料金が異なります。
まとめ 税理士からのアドバイス
飲食店の税務は、「毎日のレジ締めと記録」「税率と事業区分の設定」「人を雇うときの保険と年収の壁」の3つを開業時に正しく設計すれば、申告も調査も資金繰りも大きく楽になります。逆に、後から直そうとすると、過去にさかのぼった修正や追加の納税が必要になります。
当事務所は横浜市青葉区・市が尾駅徒歩2分で、飲食店の開業時の届出からクラウド会計とPOSレジの連携、確定申告、消費税の課税方式の選択、法人化の判断まで、代表税理士が直接担当しています。顧問契約をご検討の方の初回面談は無料です。お問い合わせフォームまたはLINEからお気軽にご連絡ください。
飲食店向けのサービス内容と料金は、飲食店の税務顧問・確定申告のページにまとめています。
関連記事:横浜市青葉区・都筑区の飲食店が顧問税理士をつけるメリットと選び方を解説
参考資料(一次情報)
- 国税庁 消費税の軽減税率制度
- 国税庁 No.6509 簡易課税制度の事業区分
- 国税庁 No.6505 簡易課税制度
- 国税庁 令和8年度税制改正特集(インボイス制度の見直し)
- 国税庁 令和9年分から青色申告特別控除はどう変わる?
- 国税庁 個人で事業を始めたとき(届出の提出期限)
- 財務省 令和8年度税制改正の大綱(基礎控除・給与所得控除・扶養の所得要件)
- 中小企業庁 少額減価償却資産の特例を拡充しました
免責事項
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