皆様、こんにちは。税理士の菅原和望です。
このページは、エンジニア・デザイナー・ライター・動画編集者・コンサルタント・講師など、個人で業務委託の仕事を受けているフリーランスの方の税金と手続きについて、「確定申告のやり方」から、事業所得と雑所得の違い、開業届と青色申告(65万円控除)、パソコン・通信費・自宅家賃の経費と家事按分、業務委託の源泉徴収と請求書、消費税とインボイス(2割特例→3割特例→簡易課税)、国民健康保険・国民年金、小規模企業共済・iDeCoによる節税と老後資金、納税資金と資金繰り、税務調査、フリーランス新法、法人化の判断、廃業の手続きまで、当事務所のフリーランス・IT向けコラム全体を1枚にまとめた総合ガイドです。独立して初めての確定申告を迎える方は、まずこのページで全体像をつかみ、気になるテーマの詳細記事へ進んでください。
この記事の結論(先に3行で)
- フリーランスの確定申告は「売上 − 経費 = 事業所得」を翌年2月16日〜3月15日にe-Taxで申告するのが基本形。開業届+青色申告承認申請書(開業から2か月以内)+複式簿記+e-Taxで65万円(令和9年分以後は最大75万円)の控除が受けられ、クラウド会計を使えば個人でも十分に対応できます。
- フリーランス特有の論点は①源泉徴収(原稿料・デザイン料などは10.21%が天引きされ、申告で精算・還付)②経費の家事按分(自宅家賃・通信費・パソコン)③インボイス(取引先が法人なら登録を求められやすく、登録後の納税額は2割特例→3割特例→簡易課税 第5種で売上の消費税の2〜5割)の3つです。
- 会社員と違い、国民健康保険料は所得に比例して上がり、退職金も傷病手当金もありません。小規模企業共済(月7万円まで全額所得控除)・iDeCo(月6.8万円、令和8年12月から7.5万円)で節税しながら備え、所得が600〜800万円を超えて安定したら法人化を検討します。
フリーランスの確定申告|いつ・何を・どうやって
個人で仕事を受けて報酬を得ているフリーランスは、1月1日〜12月31日の1年間の所得を計算し、翌年2月16日〜3月15日に所得税の確定申告をします。会社員時代の年末調整に当たるものはなく、所得税・住民税・国民健康保険料・事業税はすべてこの申告をもとに決まります。流れは次の5ステップです。
- 売上を集計する:請求書ベースで「仕事が完了した日」の属する年の売上にします(入金日ではありません)。12月納品・1月入金の案件は12月の売上(売掛金)です。源泉徴収されている報酬は、天引き前の総額を売上にします。
- 経費を集計する:レシート・領収書・クレジットカード明細を会計ソフトに入力し、自宅家賃・通信費など私用と共用のものは事業割合で按分します。10万円以上のパソコンは固定資産として減価償却(青色申告なら40万円未満は一括経費)。
- 控除証明書を集める:国民年金・国民健康保険・小規模企業共済・iDeCoの支払証明、生命保険料控除証明書、医療費の明細、ふるさと納税の受領証、源泉徴収された報酬の支払調書(届いていれば)。
- 青色申告決算書(損益計算書・貸借対照表)と確定申告書を作る:会計ソフトで帳簿から自動作成されます。源泉徴収税額を申告書に記入すると、納め過ぎた分は還付されます。
- e-Taxで送信し、納付(または還付を受ける):マイナンバーカードとスマートフォンで送信できます。65万円控除にはe-Taxでの申告(または優良な電子帳簿の保存)が条件です。納付は振替納税・ダイレクト納付・クレジットカードなど。消費税の課税事業者は、別途3月31日までに消費税の申告・納付をします。
申告の結果、住民税(所得の約10%)が6月以降に通知され、年4回で納付します。国民健康保険料も前年所得をもとに6月頃に決まります。前年の所得税額が15万円以上だった人は、翌年7月と11月に予定納税(前年税額の3分の1ずつ)が発生するため、納税資金を分けておくことが大切です。
関連記事:フリーランスエンジニア・デザイナーの確定申告ガイド|経費・青色申告を税理士が解説/フリーランスの確定申告で使える所得控除まとめ
所得区分|事業所得か雑所得か、源泉徴収された報酬の精算
業務委託の報酬は、継続して仕事を受け、帳簿をつけて生計を立てている実態があれば事業所得です。会社員が片手間に受ける単発の仕事や、帳簿のない小規模なものは雑所得になります。国税庁の通達では、帳簿書類の保存があれば収入300万円以下でも原則として事業所得と扱われます(所得税基本通達35-2)。違いは次のとおりです。
| 事業所得 | 雑所得(業務) | |
|---|---|---|
| 青色申告特別控除(最大65万円) | 使える | 使えない |
| 赤字と給与所得などの損益通算 | できる | できない |
| 赤字の3年繰越(青色) | できる | できない |
| 家族への給与(青色事業専従者給与) | できる | できない |
| 30万円(令和8年4月1日以後取得は40万円)未満の資産の一括経費(青色) | できる | できない |
| 個人事業税 | 業種により課税(デザイン業・コンサルタント業は第3種5%、文筆業は非課税、プログラマー・エンジニアは契約内容により請負業として課税されることがある。事業主控除290万円) | 課税されない |
原稿料・デザイン料・講演料・ソフトウェア開発の一部など、所得税法204条に定められた報酬は、支払う側(法人・源泉徴収義務者)が10.21%(1回の支払いが100万円を超える部分は20.42%)を源泉徴収して国に納めています。これは所得税の前払いなので、確定申告で年間の税額と精算し、経費や控除を差し引いた結果、源泉徴収された額の方が多ければ還付されます。フリーランス1年目は還付になる人が多く、申告しないと戻ってきません。
開業届と青色申告|65万円控除を受ける条件
| 届出 | 提出先・期限 | ポイント |
|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書(開業届) | 税務署。開業した年分の確定申告期限まで(令和8年1月1日以後の開業。従来は1か月以内) | 屋号口座・小規模企業共済・創業融資で控えが必要になるため、開業時に青色申告承認申請書と一緒に提出 |
| 所得税の青色申告承認申請書 | 税務署。開業日から2か月以内(1月1日〜15日の開業はその年の3月15日まで) | 遅れるとその年は白色申告。フリーランスで最も重要な期限 |
| 適格請求書発行事業者の登録申請書 | 税務署(インボイス登録センター)。取引先の要請に応じて | 登録すると課税事業者になる。下のインボイスの章を確認してから |
青色申告特別控除は、複式簿記で記帳し、期限内にe-Taxで申告する(令和8年分までは優良な電子帳簿の保存でも可)と65万円、令和9年分以後は優良な電子帳簿の保存などの要件もあわせて満たすと75万円になります。複式簿記で記帳していても書面で申告すると、令和8年分までは55万円、令和9年分以後は10万円に下がります。簡易な帳簿なら10万円(令和9年分以後、前々年の事業収入が1,000万円を超える人は原則として控除不可)。クラウド会計を使えば、銀行・カードの明細を取り込んで仕訳を確認するだけで複式簿記の要件は満たせるため、白色申告を選ぶ理由はほとんどありません。
関連記事:フリーランス開業時の税務手続き|開業届・青色申告承認申請書を解説/フリーランスは白色申告と青色申告どちらが得か|65万円控除のメリットを解説
経費と家事按分|パソコン・通信費・自宅家賃はどこまで経費か
フリーランスの経費は「その収入を得るために直接必要な支出」です。自宅で仕事をする人は、私用と共用の支出を事業で使う割合(家事按分)で経費にします。按分の根拠(面積・時間・使用日数)をメモに残しておけば、税務調査でも説明できます。
| 支出 | 科目・処理 | 按分・ポイント |
|---|---|---|
| パソコン・モニター・タブレット | 10万円未満:消耗品費/10万円以上:器具備品(パソコンは耐用年数4年) | 青色申告なら30万円(令和8年4月1日以後取得は40万円)未満は購入年に全額経費(年300万円まで)。私用兼用なら按分 |
| ソフトウェア・サブスク(Adobe・Office・開発ツール・ChatGPT等) | 通信費・消耗品費(ソフトウェアの買切り10万円以上は無形固定資産5年) | 業務専用なら全額 |
| インターネット・スマートフォン | 通信費 | 使用時間や回線の用途で按分(50〜80%が多い) |
| 自宅の家賃・住宅ローン | 地代家賃(持ち家は減価償却費・固定資産税・ローン利息の按分。元本は不可) | 仕事部屋の面積割合で按分。ワンルームなら作業スペースの面積・時間で合理的に |
| 電気代 | 水道光熱費 | 使用時間や面積で按分 |
| コワーキングスペース・カフェ作業 | 地代家賃・会議費 | 作業目的なら経費。食事代は会議費として相手がいる場合に限るのが安全 |
| 書籍・オンライン講座・セミナー・資格 | 新聞図書費・研修費 | 業務に直結するものは経費。一身専属性の強い資格(運転免許など)は不可 |
| 取引先との打合せ・交通費 | 旅費交通費・接待交際費 | 交通系ICカードはチャージ時ではなく利用履歴で記録 |
| 国民健康保険・国民年金・小規模企業共済・iDeCo | 経費ではなく所得控除 | 事業の帳簿には入れず、確定申告書の控除欄で全額控除 |
| 自分への給料・生活費 | 経費にならない(事業主貸) | 個人事業に「自分の給与」はない |
関連記事:フリーランスの経費、パソコン・ソフトウェア・通信費の按分を税理士が解説/フリーランスの自宅仕事部屋、家事按分の考え方を税理士が解説
業務委託の源泉徴収と請求書|10.21%・支払調書・還付
原稿料、デザイン料、講演料、翻訳料、写真の報酬、士業の報酬などは源泉徴収の対象です。一方、プログラミング・システム開発の報酬、Webサイト制作(デザイン部分を除く)、コンサルティング(経営コンサルタントの一部は対象)、動画編集の多くは対象外で、支払側の判断が分かれやすい部分です。請求書には、報酬の本体・消費税・源泉徴収税額・差引請求額を分けて書くと、支払側が処理しやすく、自分の申告でも源泉徴収税額の集計が楽になります。
| 請求書の例(デザイン料 税抜10万円) | 金額 |
|---|---|
| デザイン料 | 100,000円 |
| 消費税(10%) | 10,000円 |
| 源泉徴収税額(100,000円 × 10.21%) | ▲10,210円 |
| 差引ご請求額 | 99,790円 |
消費税を明確に区分して請求していれば、源泉徴収は税抜金額に対して行って差し支えありません。支払側は翌年1月末までに「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を税務署に提出しますが、フリーランス本人への交付義務はありません(送ってくれる会社が多いだけです)。支払調書が届かなくても、自分の帳簿と入金記録で源泉徴収税額を集計して申告します。給与の「源泉徴収票」は業務委託では発行されません。
関連記事:業務委託の源泉徴収|対象になる報酬・請求書の書き方・支払調書と源泉徴収票の違い
消費税とインボイス|1,000万円・登録の判断・2割特例→3割特例→簡易課税
消費税は、前々年の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者になります(開業1年目・2年目は原則免税)。これとは別に、インボイス発行事業者に登録すると、売上1,000万円以下でも課税事業者になります。フリーランスの取引先はほとんどが法人(課税事業者)なので、インボイスを求められる場面が多いのが、飲食店など消費者相手の業種との大きな違いです。
| 取引先 | 登録の必要性 | 理由 |
|---|---|---|
| 法人・課税事業者の個人事業主から直接受注 | 高い | 相手が仕入税額控除を受けるためにインボイスが必要。未登録だと報酬の減額や取引の見直しを求められることがある |
| エージェント・クラウドソーシング経由 | プラットフォームの方針による | 登録を条件にする事業者、未登録者の報酬を調整する事業者がある。規約を確認 |
| 一般消費者(個人レッスン・個人向け制作・note販売など) | 低い | 消費者は仕入税額控除をしない |
| 取引先が簡易課税・2割特例・免税事業者 | 低い | 相手の納税額にあなたのインボイスは影響しない |
登録しない場合、取引先は支払った消費税相当額のうち、令和8年10月1日〜令和10年9月30日は70%、令和10年10月〜令和12年9月は50%、令和12年10月〜令和13年9月は30%を控除できる経過措置があります(令和8年度税制改正で2年延長・割合見直し)。登録した場合の納税額は次のとおりです。
| 計算方法 | 使える期間(個人) | 納税額 | 税抜売上600万円(売上の消費税60万円)の例 |
|---|---|---|---|
| 2割特例 | 令和8年分まで | 売上の消費税 × 20%(届出不要・申告書に付記) | 12万円 |
| 3割特例(令和8年度税制改正で新設) | 令和9年分・10年分(個人事業者・基準期間の課税売上高1,000万円以下) | 売上の消費税 × 30%(届出不要・申告書に付記) | 18万円 |
| 簡易課税 | 届出が必要(3割特例を使った年の翌年分は、その年の申告期限まで) | IT・デザイン・ライター・コンサル等のサービス業は第5種(みなし仕入率50%)→ 売上の消費税 × 50% | 30万円 |
| 原則課税 | いつでも | 売上の消費税 − 経費の消費税(インボイスの保存が必要) | 経費が少ないフリーランスでは最も高くなりやすい |
経費の大半が家賃・通信費・自分の労働であるフリーランスは、原則課税で控除できる消費税が少なく、2割特例・3割特例の期間が終わった後は簡易課税(第5種)が有利になるのが一般的です。1万円未満の仕入れは帳簿のみで控除できる少額特例(令和11年9月30日まで、基準期間の課税売上高1億円以下)もあります。
関連記事:フリーランスにインボイス制度は関係ある?免税事業者が知っておきたい対応ポイント/フリーランスの消費税申告、簡易課税と原則課税どちらが得か
社会保険|国民健康保険・国民年金と、会社員との違い
会社を辞めてフリーランスになると、健康保険は国民健康保険(または退職した会社の健康保険の任意継続を最長2年)、年金は国民年金(第1号被保険者)に切り替えます。退職から14日以内に市区町村で手続きします。配偶者を扶養に入れる仕組みはなく、配偶者も国民年金第1号として保険料を納めます。
| 会社員 | フリーランス | |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 給与の約10%を会社と折半 | 国民健康保険:前年の所得に比例(横浜市・令和8年度は所得500万円・40〜64歳単身で年約72万円、上限113万円) |
| 年金 | 厚生年金(給与の18.3%を折半)+国民年金 | 国民年金のみ(令和8年度 月17,920円)。上乗せは付加年金・国民年金基金・iDeCo |
| 病気で働けないとき | 傷病手当金(給与の約3分の2・最長1年6か月) | なし(国保には原則ない)。民間の所得補償保険や小規模企業共済の貸付で備える |
| 出産 | 出産手当金・育児休業給付 | 出産育児一時金(50万円)のみ。産前産後4か月の国民年金保険料免除あり |
| 退職金 | 会社による | なし。小規模企業共済・iDeCoで自分で用意 |
| 業種別の国保組合 | — | デザイナー・イラストレーター・ライターなどは、加盟団体を通じて文芸美術国民健康保険組合に入れる場合があり、保険料が所得に関係なく定額 |
国民健康保険料は所得に比例するため、所得が増えるほど負担が重くなります。所得が500万円を超えてくると、法人化(またはマイクロ法人)で社会保険に切り替えた方が総額で安くなることがあり、法人化を検討する一つの目安になります。
関連記事:フリーランスの国民健康保険・国民年金、社会保険の基本を税理士が解説/フリーランスが受け取る傷病手当・出産手当と税務上の取扱いを解説
節税と老後資金|小規模企業共済・iDeCo・経営セーフティ共済
フリーランスの節税は「経費を増やす」より、掛金が全額所得控除になる制度にお金を移す方が効果が大きく、手元にも残ります。効くのは所得税・住民税で、国民健康保険料には効きません(国保の所得割は所得控除前の所得で計算されるため)。この点は誤解が多いので注意してください。
| 制度 | 掛金の上限 | 税金の扱い | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 小規模企業共済(中小機構) | 月1,000〜70,000円(年84万円) | 掛金は全額所得控除。受取時は退職所得(一括)または公的年金等の雑所得(分割) | フリーランス全般。退職金代わりの基本。掛金の範囲で低利の貸付も受けられる |
| iDeCo(個人型確定拠出年金) | 第1号被保険者は月68,000円(国民年金基金・付加年金と合算)。令和8年12月から月75,000円に引き上げ | 掛金は全額所得控除。運用益非課税。受取時は退職所得・公的年金等控除 | 60歳まで引き出せなくてもよい長期資金 |
| 国民年金基金・付加年金 | iDeCoと合算で月68,000円(付加年金は月400円) | 全額所得控除。終身年金で受け取れる | 年金を増やしたい人。付加年金は2年で元が取れる |
| 経営セーフティ共済(倒産防止共済) | 月5,000〜200,000円(累計800万円まで) | 掛金は事業の経費。40か月以上で全額戻る。解約時は収入(売上)になる。令和6年10月以後に解約した場合、2年間は再加入しても経費にできない | 利益の出た年に経費を作り、将来の赤字の年に解約して相殺したい人 |
所得控除は他にも、国民年金・国民健康保険(社会保険料控除)、生命保険料・地震保険料控除、医療費控除、ふるさと納税(寄附金控除。フリーランスはワンストップ特例が使えないため確定申告で)、配偶者控除・扶養控除などがあります。
関連記事:フリーランスの退職金代わりに?小規模企業共済・iDeCoで節税しながら老後資金準備/フリーランスの確定申告で使える所得控除まとめ
資金繰りと納税資金|入金サイトと予定納税に備える
フリーランスの資金繰りが苦しくなる原因は、売上の波よりも「入金が遅い」「税金がまとめて来る」の2つです。業務委託の入金は月末締め翌月末〜翌々月末が多く、納品から入金まで2〜3か月の立替が生じます。税金は3月(所得税・消費税)、6月・8月・10月・1月(住民税)、7月・11月(予定納税)、8月・11月(個人事業税)とばらばらに来ます。
- 売上の30%を納税用口座に移す:売上が入金されたら、所得税・住民税・消費税・国保の分として25〜35%を別口座に分けておくと、3月に慌てません。
- 入金サイトを契約前に確認する:フリーランス新法により、発注者は原則として納品から60日以内に報酬を支払う義務があります。長いサイトを提示されたら交渉の根拠になります。
- 運転資金の借入れ:日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は、開業後おおむね7年以内のフリーランスも対象です。黒字で税金を払っている実績があると借りやすくなります。
- 小規模企業共済の契約者貸付:掛金の範囲内で低利・即日に近い貸付が受けられ、急な資金需要の保険になります。
税務調査|フリーランスが指摘されやすいポイント
フリーランスの税務調査で指摘が多いのは、①売上の計上漏れ(支払調書と申告の売上が一致しない、12月納品分の計上漏れ、個人口座への入金の記帳漏れ)②家事按分の根拠がない(家賃100%・スマホ100%)③私的な支出の経費計上(家族との食事、旅行、衣服)④外注費と給与の区分です。支払側が提出した支払調書は税務署が把握しているため、売上の漏れは特に見つかりやすい項目です。日頃から、請求書と入金を1件ずつ突き合わせ、按分割合の根拠をメモし、レシートに相手と目的を書く習慣をつければ、調査で困ることはほとんどありません。
関連記事:フリーランスの税務調査で気をつけたいポイントを解説
フリーランス新法・取適法|発注者に求められるルール
令和6年11月に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス新法)により、発注者(法人・従業員を使う事業者)は、業務委託をする際に取引条件の書面・メールでの明示、納品から60日以内の報酬支払い、一方的な報酬減額・受領拒否・買いたたきの禁止、6か月以上の継続委託を打ち切る場合の30日前予告などが義務づけられました。これは発注者側の義務ですが、受注するフリーランスが知っておくことで、契約条件の確認や支払遅延への対応がしやすくなります。発注者が法人で取適法(旧下請法)の対象になる場合は、さらに厳しいルールが重なります。
関連記事:フリーランスが法人と取引する際の取適法(旧下請法)・フリーランス新法の注意点を解説
法人化・マイクロ法人|検討するタイミングと判断基準
フリーランスの法人化は、課税所得が継続して600〜800万円を超えるあたりから検討します。法人化すると、所得税の累進税率(最高45%)から法人税率(所得800万円以下は15%)に変わり、役員報酬で所得を分散でき、給与所得控除も使えます。一方で、法人住民税の均等割(年7万円)、社会保険の強制加入(会社負担分が増える)、税理士費用、事務負担が増えます。取引先から「法人としか契約しない」と言われる、エージェントの単価が法人優遇になる、採用を始める、といった事情があれば所得が低くても法人化する理由になります。
| 状況 | 判断の目安 |
|---|---|
| 課税所得400万円以下 | 個人のまま。青色申告・小規模企業共済・iDeCoで十分 |
| 課税所得600〜800万円 | 法人化のシミュレーションを開始。社会保険料・均等割・税理士費用を含めて比較 |
| 課税所得800万円超が継続 | 多くの場合、法人化で手取りが増える。設立時期は消費税の免税期間と決算期を考えて決める |
| 個人事業と別の収入源(資産運用・物販・不動産など)がある | マイクロ法人で社会保険料を抑える選択肢も。実態のある別事業が条件 |
関連記事:フリーランスは法人化すべき?個人事業主との違いを税理士が比較/マイクロ法人とは|社会保険料はいくら下がる?向いている人・年収の目安/独立開業・会社設立の税務 完全ガイド
廃業・休業・会社員に戻るとき
フリーランスをやめて就職する、しばらく休む、という場合も税務の手続きがあります。個人事業の開業・廃業等届出書(廃業から1か月以内)、青色申告の取りやめ届出書(翌年3月15日まで)、消費税の事業廃止届出書(課税事業者の場合)を税務署に出し、廃業した年分は翌年に最後の確定申告をします。年の途中で就職した場合は、給与は会社の年末調整、事業所得は自分の確定申告で合算して申告します。廃業後に受け取った売掛金や、廃業後に払った経費(事務所の原状回復費など)の扱いにも特例があります。インボイス登録をしている人は「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」も必要です。
関連記事:フリーランスの廃業・休業の手続きと税務上の注意点を解説
会計ソフトと税理士|自分でやるか、任せるか
フリーランスの記帳は、クラウド会計に事業用の銀行口座・クレジットカードを連携し、請求書もクラウド会計で発行すれば、売上と入金の消込まで自動化できます。当事務所が記帳・申告で対応しているのはマネーフォワード クラウドで、他のソフトをお使いの方はマネーフォワード クラウドへ乗り換えていただく形で対応しています(データ移行もお手伝いします)。
税理士に依頼する目安は、「売上1,000万円を超えて消費税の申告が始まった」「源泉徴収・インボイス・按分の判断に毎年迷う」「法人化を考え始めた」のいずれかです。それまでは、初年度だけ確定申告を依頼して経理の型を作り、2年目以降は自分で申告する方法も合理的です。当事務所では、確定申告のみの単発契約(料金表)から顧問契約まで、代表税理士が直接担当しています。
関連記事:フリーランスにおすすめの会計ソフト|クラウド会計と記帳のポイントを解説/横浜市青葉区・都筑区のフリーランスが顧問税理士をつけるメリットと選び方
年間スケジュール|フリーランスの税務カレンダー
| 時期 | やること |
|---|---|
| 1月 | 前年の売上・経費の締め、12月納品分の売掛計上。支払調書が届き始める(届かなくても申告は可能)。住民税第4期(1月末) |
| 2月16日〜3月15日 | 所得税の確定申告・納付(振替納税は4月下旬)。消費税の申告・納付は3月31日まで |
| 4〜5月 | 新年度の家事按分割合・固定資産の見直し。インボイス登録の要否を取引先の状況で再確認 |
| 6月 | 住民税の通知(第1期 6月末)、国民健康保険料の通知。小規模企業共済・iDeCoの掛金見直し |
| 7月 | 所得税の予定納税 第1期(前年の税額15万円以上の人) |
| 8月 | 住民税第2期、個人事業税第1期(対象業種のみ) |
| 10〜11月 | 住民税第3期、個人事業税第2期、予定納税 第2期。年内の利益見込みを計算し、設備投資・共済の増額を検討。控除証明書が届き始める |
| 12月 | 翌年の消費税の計算方法(簡易課税の選択・取りやめ)の届出は12月31日まで。年内に経費にしたい支出は年内に支払い・納品。ふるさと納税の締切 |
よくあるご質問
副業のフリーランスから専業になりました。何が変わりますか
会社員時代の「20万円ルール」はなくなり、所得の大小にかかわらず確定申告が必要です。社会保険は国民健康保険・国民年金に切り替え(退職から14日以内)、所得が事業所得として扱われやすくなるため、開業届と青色申告承認申請書を退職後2か月以内に出してください。退職した年は、会社の給与(源泉徴収票)と事業所得を合算して申告します。
源泉徴収されているので、確定申告しなくてもよいですか
源泉徴収は前払いにすぎず、申告義務はなくなりません。むしろ経費と控除を差し引くと納め過ぎになっていることが多く、申告しないと還付を受けられません。
売上が1,000万円以下ならインボイスは関係ありませんか
売上規模ではなく取引先で決まります。法人からの受注が中心なら登録を求められる可能性が高く、登録すれば1,000万円以下でも消費税の申告が必要になります。登録した場合の納税額は、令和8年分までは売上の消費税の2割、令和9年分・10年分は3割、その後は簡易課税(第5種)で5割が目安です。
家賃を100%経費にしてもよいですか
仕事専用の事務所を別に借りている場合を除き、自宅の家賃は仕事部屋の面積割合などで按分します。ワンルームでも、作業スペースの面積と使用時間から合理的な割合(30〜50%程度が多い)を決めて、その根拠を残しておきます。
経費があまりありません。節税の方法はありますか
経費の少ないフリーランスは、小規模企業共済(年84万円まで)とiDeCo(年81.6万円、令和8年12月から90万円まで)の全額所得控除が最も効果的です。さらに所得が増えたら、法人化して役員報酬と法人の利益に分ける方法を検討します。
確定申告だけ依頼することはできますか
できます。初年度は源泉徴収の精算、開業費、家事按分、固定資産の登録など判断の多い年なので、1年目を一緒に整えて、2年目からご自身で申告する方も多くいらっしゃいます。料金は料金表をご覧ください。
まとめ 税理士からのアドバイス
フリーランスの税務は、「青色申告承認申請書の期限(開業から2か月)」「源泉徴収の精算(還付)」「経費の家事按分の根拠」「インボイス登録の判断と2割特例→3割特例→簡易課税の流れ」「小規模企業共済・iDeCoによる所得控除」の5点を押さえれば、毎年の申告で大きく迷うことはなくなります。会社員時代と違って、税金・保険・老後資金はすべて自分で設計するものです。独立1年目に型を作ってしまえば、2年目以降は本業に集中できます。
当事務所は横浜市青葉区・市が尾駅徒歩2分で、フリーランスの方の確定申告(単発)から記帳代行・顧問契約、インボイス・法人化のご相談まで、代表税理士が直接担当しています。オンライン面談にも対応しており、顧問契約をご検討の方の初回面談は無料です。お問い合わせフォームまたはLINEからお気軽にご連絡ください。
確定申告のサービス内容と料金は確定申告のページに、独立開業・会社設立は横浜で会社設立・独立開業のページにまとめています。業種別の総合ガイドもあわせてご覧ください:独立開業・会社設立/会社員の副業/建設業・一人親方/運送業・軽貨物/飲食店/美容室・サロン/大家さん・不動産オーナー
参考資料(一次情報)
- 国税庁 令和9年分から青色申告特別控除はどう変わる?
- 国税庁 No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは
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- 国税庁 令和8年度税制改正特集(インボイス制度の見直し:3割特例・経過措置)
- 国税庁 No.6505 簡易課税制度
- 国税庁 No.2040 予定納税
- 中小機構 小規模企業共済
- 厚生労働省 確定拠出年金制度の改正(iDeCo拠出限度額の引き上げ)
- 公正取引委員会 フリーランス・事業者間取引適正化等法
- 日本年金機構 国民年金保険料
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